132『マジュモン、ゲットだぜ』
セーフルームを出た俺たちは上層2階の攻略を続けた。
マッピングしながら柱廊を進み、出現するモンスターと戦闘をし、部屋があれば一応全部入ってみる。
それを繰り返す。
下層階と比べて上層階は1つの階層がバカみたいに広かった。
もしこんなのが100階層まで続いたら……最上階到達に半年とか掛かるんじゃないのか?
突き当たりにあった小部屋内のアイテムボックスを開けた。
中に入っていた細身の剣を取り出して俺に渡す久留里の顔には、わかりやすく疲労の色が浮かんでいた。
「うー、イマイグループのショッピングモールの何倍もあるよぉ、疲れたー!」
「モンスターが強いから体力の消耗も激しいしな。階段が見つからないからまたセーフルームに戻って休むしかないか」
小部屋を出て柱廊が交差している場所に戻ってくると、マッピングを担当している雪奈が手帳を見ながら言った。
「勇人くん。上層2階はすべて踏破しちゃったかも」
「え? でもどこにも上に行ける階段はなかったけど……じゃあ中野Cダンジョンの上層は2階で終わりなのか?」
「ユッピー、羅針盤の針が動いてないよ」
「あ、羅針盤の存在、完全に忘れてた……」
上層1階で羅針盤を使ったときに階段の方向を針が刺したのだが、羅針盤は壁を無視して目指す「方向」だけを指し示すので、あまりにも使い物にならないので放っておいていた。
だけど、上に行ける階段があるかないかの確認には使えるわけか。
「よし、撤収だ。ハチ公をボールに入れてダンジョンから出よう」
ルーシェルはハチ公を伏せさせ、背からおりた。
ボールに閉じ込めるのはルーシェルにやってもらおう。ハチ公もそれが一番安心できるだろうし。
「勇人、その魔獣を閉じ込めるアイテムは異世界にもあったの?」
俺が懐から出したボールを覗き込みながら真希が言った。
「俺は知らないなぁ。そもそもダンジョンは人間族の神様が作ってるものだしね。ルーシェルは知ってた?」
「王宮の宝物庫にも、このような品はありませんでした」
「そっか。じゃあ増殖バグが原因で生成されたのかもしれないし、時間の歪みで未来のアイテムが手に入ったのかもしれないし……ま、考えても答えはでないか」
「ユッピー、そのボールって名前とかあるのー?」
「名前? あ〜なんか底側に彫ってあるな。ええと、日本語に訳すと“魔獣の門”でいいのかな?」
ルーシェルはハチ公の3つの頭をひとつづつ順番に撫でていく。
ハチ公は地獄の番犬とは思えないような甘えっぷりの表情だ。
「ハチ公……すぐに他のダンジョンで出してあげますからね」
「くぅぅん」
そして俺から“魔獣の門”を手渡されたルーシェルはハチ公に投げつけ、彫られていた呪文を叫んだ。
「ネル・オルハ!」
ハチ公の体が光って消え、ボールだけが地面に落ちる。
そして「カチッ」という音が聞こえた。
久留里はシュタタッと走って“魔獣の門”を拾い、高く掲げた。
「マジュモン、ゲットだぜ!!」
「……それ絶対言うと思った」
全員の視線が久留里に集まった。
ルーシェルはよくわかっていない。




