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128『ずっと黙ってたけど元魔王でした』

「私のスキルの《霧中歩行(ミストウォーク)》は気配を消せる。それを盗み聞きに使うのは良くないとは思ったけど……」



目の前まで来ていた雪奈は、半歩下がって視界に俺とルーシェルを入れた。



「勇人くん、ルーシェルさん、どういうことなの……どうしてのあのアイテムの文字が読めるの? さっき話していた言葉はなに? 何を……隠しているの?」


「ええと……雪奈……」



異世界についてのことは、ルーシェルとは異世界語で会話していたと思うから雪奈に内容は知られてはいないが……。


俺はルーシェルをちらっと見た。

目を合わせたルーシェルからはしっかりとした決意が感じられた。



「ユウト様、全部お伝えする方が良いかと思います……私は大丈夫ですので、お気になさらず」


「…………そうか」



俺は隠し続けるのが苦しかったがルーシェルもそれは一緒だろう。

いつかは言わないといけないかもしれないとは思っていた。だけどそのタイミングがわからなかった。


たしかに俺は異世界で魔王として1000年生きた。

しかしそれは過去の……しかも前世のような出来事だ。

元魔王だなんて知れば、これまで通りの仲間として接してくれる保証はどこにもないし過去を持ち込んで今を壊したくなかった。

元魔王なんて肩書きはいらない。俺は、ただの奥野勇人でいたかった。


さらにルーシェルのことも気になっていた。

彼女は異世界の人間がそのままこちらに来てしまったという「超重要人物」で、科学、歴史、宗教……さまざまなものを根底から揺さぶりかねない存在だ。

知られないままでいた方がルーシェルにとっても……みんなにとっても幸せなのかもしれない。ずっとそう思っていた。


しかもルーシェルが異世界には帰らないことを俺は認めた。

彼女にはこっちの世界で、ただのルーシェルでいて貰いたかった。



全部話してしまうのが「正しい」のか、「間違い」なのかはわからない。

だけど考え方を変えればいいのかもしれない。最終的に「正しかった」にしていけばいいのかもしれない。


今後、ダンジョン内に異世界文字が出てきたときにもその情報を共有できるのは大きいし。それ以外にもきっとメリットは多いはずだ。


だけどなによりも仲間に隠し事がなくなるのは、やっぱり良いことだ。



「雪奈……みんなが起きてから、ちゃんと全員の前で話したい。俺たちももう少し寝ておこう」


「いろいろ想像しちゃって寝れるかわからないけど……わかったわ、勇人くん」



そしてまた少しだけ寝て、起きてパンとコーヒーの軽い朝食をとったあとに全員は座ったままで俺だけ立ち上がった。

ギルドメンバーは俺がこれから伝えることは想像もしていないだろう。



「聞いて欲しいんだ……ずっと隠していたことをこれから話す」



最初こそ「おう、どうした?」「なになにー?」というような呑気な反応だったが、深刻な話がはじまると感じたみんなは黙り、俺の次の言葉を待った。

目の下に少しクマができている雪奈は朝食前からずっと無言だ。



「信じられないような話になるかもしれないけど、嘘はない」



俺は深呼吸のように深く息を吐き、そして言葉を発するために軽く吸った。







「俺は“ダンジョンの向こう側”にある異世界で────魔王と呼ばれていた」



とうとう言ってしまった。


少しの間のあとに、ハチ公の隣にいるルーシェルを見る。

ルーシェルは小さく頷いた。



「そしてルーシェルはその世界では、敵対する人間族のお姫様だった」

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