127『聞かれてしまった』
『とても嬉しいです……これからもハチ公と一緒にいられるなんて……』
言語というのは不思議なもので、異世界の言葉で話しているルーシェルには姫としての気高さが戻ってきてるように思えた。
『あ……私もユウト様も日本語を話しておりませんね……』
『あはは、今頃気がついたのか? 最近、魔王時代の記憶もあいまいになってきているんだけど、言葉もかなり忘れかけてるんだよ……発音とかおかしくない?』
『いいえ、まったく。ユウト様の日本語もお好きですが、やはり私は、自分の母語でユウト様のお声を聞くほうが好きかもしれません』
『魔族側の訛りがあると思うけどね』
そこで俺は日本語に切り替えた。
「……で、君とこっそり相談をしたかった理由なんだけどさ……」
「承知しております。魔獣を閉じ込めるボールに刻まれた文字が読めることについてですね」
「ああ、あのボールにハチ公を入れて別なダンジョンへ連れていくことは可能になった。だけどボールに刻まれている文字が読めなきゃそういうアイテムだとは絶対に気がつかないと思うんだ」
「それと使用するときの「ネル・オルハ」という呪文ですね。その言葉を知っている理由もみなさんに説明できません」
「だよなぁ……困ったな」
「ユウト様……私は思うのですが……」
そのときだった。
柱の向こうで、かすかに石床を踏む音がした。
「勇人君……これってどういうこと?」
その背後からの聞き慣れた声に、俺の心臓がどくりと跳ねた。
振り返ると柱の影から雪奈が出てくる。いつからそこにいたのかわからない。
「どうしてその聞いたこともない外国語でルーシェルさんと会話できるの? どうしてアイテムの文字が読めたの?」
雪奈は俺の目の前にきた。
「……説明してくれる?」




