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122『さらに上への階段』

ルーシェルとハチ公はいつの間にか仲良くなっていた。

彼女の話では、俺はケルベロス族のボスで西新宿ギルドメンバーは同じリーダーに従う群れの仲間というのがハチ公の認識だそうだ。



「なのでこのように背にも乗れるのです」


「おっ、じゃあ俺も乗れるってわけだな。ちょっとだけ乗せてくれよ」



五郎がハチ公に触れようとすると、ハチ公は3つの口を大きくあけ、牙を見せて「ガルルルル」と五郎を威嚇した。



「な、なんだよっ! 話が違うじゃねえか!」


「おかしいですね……ハチ公、ゴロウ様も私たちの仲間なのですよ」



ハチ公は仲間が欲しかったのにずっとひとりで寂しかったのだとルーシェルは言っている。ケルベロスの気持ちがわかるのか?

パーティーの最後尾でハチ公に乗って移動しているルーシェルを、雪奈は何度も振り返って見ていた。



「なんか気になるのか? 雪奈も乗ってみたいとか?」


「ルーシェルさん、ケルベロスを乗りこなしているけどそんなに簡単にできるものなのかな? 乗馬の心得とかないと無理そうだけど……」



心得はたぶんあるんでしょうね。毛並みの良い白馬とかに優雅に乗っていた経験が。



その後はアイテムを回収しつつ、出現してくるモンスターとの戦闘が繰り返された。

獣タイプのモンスターなどはハチ公が睨むだけで(文字通り)尻尾を巻いて逃げていくことも多く、さすがケルベロスという感じだ。



「でもールーシェルちゃん。せっかくハチ公とお友達になれてもハチ公をダンジョンから出すわけにはいかないしー、中野Cダンジョン限定だねー」


「そうですねクルリ様……残念ですが……」



モンスターはダンジョンの外には出られない。

過去に連れ出そうとした事例もあったが、倒されたときと同じように霧になって消えてしまっていた。

モンスターはこの亜空間でのみ存在できるのだ。



「俺の《幻界収蔵(アストラルホールド)》はなんでも入れられるスキルだけど同じダンジョンでしか出し入れできないからなぁ」


「ハチ公……ごめんね。また必ず会いに来ますから。待っていてくださいね」



ケルベロスが人間の言葉を理解できるとは思えないが、ルーシェルの様子から察したのか3つの首とも寂しそうな顔をしているように見えた。

俺たちがこのダンジョンを出たら、ハチ公はルーシェルが帰ってくるのをけなげにずっと待っているのだろうか? ハチ公だし。



そして我々はついに次への階層────上層2階へとつながる階段を見つけた。


下層では壁の横穴の中に階段があった。

フロア内に階段はなく、ビルの非常階段を使って次の階層に行く感じだった。



しかし俺たちが今回上層で見つけたその階段は、大広間の奥に姿を現していた。


古い神殿にふさわしく、白とも灰ともつかない石で組まれた幅広の階段だ。


一段一段は低めに作られているが、そのぶん横幅が広く、翼を広げた人型の神を思わせる浮き彫りが刻まれている。



「マヤ文明とかアステカ文明のピラミッドの階段っぽいというか……いかにも神殿って感じだな」


「先へ進む資格があるなら登ってこいって言ってるみたいね」



真希が言うように、ただ上へあがるためだけの実用的な階段というより、登らせることそのものに意味を持たせたような、どこか儀式めいた造りだった。



さて、これからどうするか?

階段の位置はわかったから一度ダンジョンを出て手に入れたアイテムの鑑定でもするか?

中野Cダンジョン以外にも上層階が存在するのか調べたいという気持ちもあるし。



だけど、上がどうなってるのか気にもなるよなぁ。



そのとき、階段の上――――四角い穴の向こうから、かすかに金属が擦れるような音が聞こえた。

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