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123『多数決』

階段をあがって上層2階に行くか、いったんダンジョンから出るか、全員の意見を聞くことにした。

半々くらいに割れそうだというのが俺の予想だ。



五郎は「当然行くだろ、まだまだやれるぜ」と指の骨を鳴らした。


真希は「換金価値のあるアイテムがもっと欲しいわ」と天井の穴を見た。


久留里は「いざとなったら転移魔法で帰れるしー」とくるりと回った。


ルーシェルは「もう少しこの子と一緒にいたいです」とハチ公を撫でた。


雪奈は「……行きましょう」とすでに階段に片足をかけている。



そうですか……全員行きたいのですね。

そんなわけでダンジョン攻略の継続は民主的に決定した。




階段を上がって着いた上層2階は上層1階と似た神殿タイプだった。




カン……カン……カン……という金属音。


槍の柄の下端にある石突きを床に打ち付けていた3体の青銅の衛兵像が、槍を構えて俺たちに向かってくる。

下にいたときに聞こえた音は、コイツらだったのか。


俺と五郎と雪奈が、各1体づつ相手をした。

こうやって“剣を交えて戦う”というのは、麻薬でドーピングしていた探窟家シーカーとの戦いを除けば、全員はじめての経験だった。


青銅の衛兵像との戦いは、こちらの勝利で終わった。

さすがにひとりで3体に囲まれたらシンドイけれど、1対1ならば我々の方が圧倒的に力も素早さも格上だった。


上層2階はこの衛兵像と同じように「無生物」「無機物」という感じのモンスターが多かった。こいつらには当然ながらハチ公の“睨み”は効かない。



柱廊をしばらく進むと、通路は十字路になっていた。

左右へ延びる柱廊が交差しているが、俺たちはそのまま正面へ進むことにした。

するとほどなく行き止まりにぶつかり、その先には大きな扉がそびえていた。



「扉っていうのは下層階も含めてはじめてだな……中に何かあるのか?」


「社長、かなり重い扉だぜ、ひとりじゃ無理だ」


「ユウト様、ゴロウ様、ハチ公にも押してもらいます」



俺と五郎とハチ公で扉を押した。

重い……少しづつしか動かない。扉をあけるというよりは石板を無理やり移動させるような感じだ。


なんとか扉がひらいて入ったそこはこれまでの小広間よりもひと回り――いや、ふた回りは広い大広間だった。



天井は高く、等間隔に並ぶ白い石柱が奥まで続いている。

床には複雑な幾何学模様のタイルが敷き詰められていて、中央には円形の紋様が刻まれていた。


そして、その紋様のど真ん中に。


ぽつん――――と、ひとつだけ。

石の台座の上にアイテムボックスが置かれていた。




黒檀のように黒い箱に、金の装飾が縁取られている。

いかにも「開けてください」と言わんばかりの存在感だ。



「……あからさますぎないか?」


「勇人君……たぶん何か来ると思う」



雪奈が剣を鞘から抜きながら小さく言う。

だよな。

俺だってそう思う。


これまでのアイテムボックスは、迷宮の行き止まりや通路の端にひっそり置かれていることが多かった。

こんなふうに広間の中央に堂々と置かれているということは、よほどのレアアイテムが入っているだろうと期待できるが、どう見ても罠っぽくもある。



広間中央の円形紋様へ一歩踏み込んだ――――その瞬間だった。



ゴゴゴ……と、石が擦れ合う低い音が広間に響いた。



「っ!?」



音のした方を見る。

左手の石柱の陰から、白い人影が不気味に滑り出てきた。



人の形をしている。

だが、それは人間ではない。



鎧は着ているが胸当ても、肩当ても、兜も、すべて一つの石塊から彫り出された彫像そのものだった。ただし片手のロングソードと、もう片方に構えた縦長の盾だけは金属製だ。


顔に当たる部分には鼻口がなく、目の部分だけが青白くぼうっと光っていた。



ギギ……と首がこちらへ向く。



その動きには生き物のしなやかさがなく、石の関節を無理やり動かしているような異様さがあった。

まあ、どう見てもあのアイテムボックスの番人だ。



「秘宝の守護兵……トレジャーガーディアンってところか」



俺が呟くと、まるでそれを合図にしたかのように石の騎士はロングソードの切っ先を床へ叩きつけた。



ガァンッ!! 



神殿の大広間に重い金属音が響き渡る。



「そんなに大事なものが入ってるってこと?」



トレジャーガーディアンは言葉を発しない。

無機質な青い光だけが、侵入者である俺たちを正確に捉えていた。



この大広間には通路も階段もないから、こいつは無視して引き返せる。

だけど――――あの箱の中身を拝みたいなら



こいつを倒すしかない。

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