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108『Side:三法師雪奈』

私たちから少し離れた位置に後退した透過蜘蛛が、大きく口を開けた。

勇人君は全員に聞こえるよう、声を張り上げた。



「攻撃してくるぞ! 蜘蛛の口に気をつけろ!」



蜘蛛は口から電撃の魔法を放った。私と勇人君は横に飛び跳ねて、一直線に走る稲妻を間一髪避けた。

その電撃攻撃を何回かしてから、蜘蛛は右へ左へと動き回る。


私は火球を蜘蛛に投げつけた。

蜘蛛はその巨体のわりには俊敏な動きで火球を避け続け、なんとか1発だけ当てることができたけれど、そこまでダメージを与えられたようには見えなかった。


やっぱりこのクラスのボスだと私の火炎魔法じゃ、ほとんど効果がない。

そして現在のパーティーで攻撃魔法が使えるのは私と……勇人くんだけ。



「勇人君のあの闇魔法だったら倒せる?」


「《天蝕む虚無の柱(イクリプス・ヴォイド)》は闇を落とす場所を決めてから魔力を練らないといけない。せわしなく動かれると闇を落とす位置とズレる可能性があるんだ。一回しか使えないから……できれば動きを止めてからやりたい」


勇人君はそう言ったあと「まてよ……ケルベロスを倒したときと同じようにすればいいのか」と呟いた。



「よし、動きを止めちゃおう! 《闇築因子(アンダービルド)》!」



透過蜘蛛を囲むように土の壁が現れた。

そっか! こうすれば動きを止められる!


けれど透過蜘蛛は壁をすり抜けてしまった。物理的な攻撃が効かないように物理的な障害物も無視してしまうみたい。


勇人君は作った壁を地面に戻した。



最近はさすがに見慣れてはきたけれど、勇人君のスキルってやっぱり普通じゃない。

しかもそんな彼にしか使えない4つものスキルを、目が覚めたときに手に入れてたと言ってた。


たぶん勇人君は……何かを隠していると私は思ってる。

でも深くは追求できない。きっと理由があるのだろうから。



私は今居さんのとなりにいるルーシェルさんをチラっと見た。


彼女がいつも勇人君に寄り添おうとしているのは、水晶体の中から救出されたときに一番最初に目に入ったのが勇人君だったからヒヨコの“刷り込み”みたいな状態になってるのだと最初は思ってた。


でも……魔素量を測れたり、異常な魔力値だったり、勇人君と同じようにどう考えても彼女も普通じゃない。


それと、彼女の勇人君を見ているときの目。

あれは長い間、勇人君のことを想っていた目。


それはわかる。



だって私は────20年近く想い続けてきたから。


もしかしたら勇人君とルーシェルさんはダンジョンXではじめて出会ったわけじゃないのかも。

普通じゃないふたりは……私が知らない特別な関係なのかな……。




やだな、私……嫉妬してる。


こんなときに仲間に対してそんな感情はよくないのに。

この嫉妬の炎が、仲間に向かうんじゃなくて敵に向かう炎になればいいのに。



胸の奥で、熱が弾けた。


────その瞬間、私は新しい魔法の“ひらめき”を得た。



過去に火球を覚えたときの感覚と同じだった。

それは、その魔法はまるで昔から知っていたかのような感じ。



「勇人君……新しい魔法を覚えたよ」


「え? いま? マジか?」


「うん。使ってみるね」



私は右手の人差し指を透過蜘蛛に向けた。



爆炎球フレアバースト!!」



私の指先から出た大きな炎の球は、透過蜘蛛の脚に当たって爆裂した。

これまでの火球は熱だけでダメージを与えるものだったけど、この新魔法には熱に加えて爆発のダメージもある。


透過蜘蛛の八本の脚のうちの1本が吹き飛んだ。



「すごいな、火球とは全然威力が違う。なんか“ひらめき”のキッカケでもあったのか? 他のみんなにも教えてあげてくれよ」


「な……なんとなくだから……無理!」



勇人君は隠し事をしているのかもしれないけど、私にもひとつ隠し事ができた。


恥ずかしいから絶対に言えない。



この魔法の“ひらめき”のきっかけが

あまりにも強すぎた嫉妬の炎だなんて────絶対に言えない。

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