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107『魔法しか効かない』

翌朝、俺と真希と久留里とルーシェルはオフィスでダンジョン装備に着替えた。

ルーシェルには小悪魔系になる前の久留里が着ていた金や青の装飾がついた聖女っぽい白いローブを着てもらった。



「わあ! ルーシェルちゃん、すっごい似合ってる! かわいい! それもう着ないからルーシェルちゃんにあげるー!」


「よろしいのですか? ありがとうございます! マキ様から頂いた首飾りもこのローブととても調和しています」



たしかによく似合っている。

ルーシェルは表情や仕草がおしとやかだし、彼女の美しい銀色の髪には派手さがないから、まるで慎ましい本物の聖女様のようだ。


全員の着替えが終わり、社用車で中野Cダンジョンに向かった。

中野Cダンジョンのすぐそばに住んでいる雪奈とは現地で合流だ。


ルーシェルと並んで後部座席に座っていた久留里が窓の外を見て「あれれ?」と言った。



「空に太陽が3つある? なにこれ? 世界の終わり?」



なんのこっちゃ? と思って助手席に座っていた俺もサイドの窓から見ると、たしかに薄い雲が広がる空に太陽が3個あった。


運転席の真希がこの不思議な現象の説明をしてくれた。



幻日げんじつよ。空気中の氷の粒で、太陽が二つ三つあるように見えることがある大気光学現象」


「わー! さっすがマキペディア! 詳しいー!」


幻日げんじつは、大きな転機のタイミングを知らせる吉兆と言われることも多いわ」



おお! なんかそれはいい感じだな。

全員が魔法を新しく覚えたら、大きな転機にはなるはずだ。



そして中野Cダンジョンに到着して、すでに先に待っていた雪奈と共にダンジョンの中に入った。


雪奈はニューヨークダンジョンに挑戦したときに一時的に西新宿ギルドに入っただけで別のギルドの人間だ。


なので今回は、ルーシェルも加えた西新宿ギルドが4名+雪奈のギルドが1名となっているので「ダンジョンに入れるのは1ギルド4人まで」というルールは一応守ってはいる。


ちなみにルール上は別ギルドとの合同潜行は禁止されていない。

ただし到達実績の評価ポイントは大幅に減算されるため、ランキングを狙うギルドほど普通は避けている感じだ。



何もないだだっ広い中野Cダンジョンの地下1階層フロア内を歩いている途中で、床に書かれている異世界文字が目に入った。



──月が姿を隠す夜、深淵は六面の石を振る。目が出ぬならば、ただの通過。目が出たなら、力無き者より血は流れん。



なつかしいな。

俺の初戦相手となった「魔鋼蜘蛛」の出現条件について書かれている文字だ。

ダンジョンに入った日がたまたま新月で、しかもランダム出現の「アタリ」を引いてしまったんだ。いや、「ハズレ」かも。


地下2階層から9階層は簡単な迷宮だった、途中にアイテムボックスがいくつかあったが当然すべて空だった。


ついに辿りついた最下層の地下10階層は1階層とよく似た広い空間だった。


ここでダンジョンはおしまいだが、誰も新しい魔法の“ひらめき”は得ていなかった。


このフロアでヨガでもしてれば口から火でも吐けるようになるのかな? とくだらないことを考えながらフロアの中央まで進んだ──その時。



ゴゴゴと地響きのような音が聞こえ、階段が鉄の扉で塞がれた。



「《境界感知(ボーダーセンス)》に大きな反応!」と雪奈が叫ぶ。



フロアの奥の方の空間が一瞬歪んだように感じた。


何もないはずの空間にまず輪郭だけがうっすらと滲んだ。

その曖昧な影はじわじわと濃さを増して、やがて八本の脚が浮かび上がる。



────それは体が透き通った、半透明の巨大な蜘蛛だった。



「魔鋼蜘蛛」と同じでこいつを倒さないとフロアから出られないってわけか。

だけど、過去のギルドはここにはボスモンスターはいなかったと報告していたのにこれはどういうわけなんだ?



俺と雪奈は剣を抜いて、蜘蛛の脚を斬りつけた。

しかしまるで豆腐を切る際のようなごくわずかな感触を手に伝えただけで剣は蜘蛛の脚を切断することはできなかった。


後方から真希が矢を射る。

しかし魔素で出来た矢は蜘蛛の体に当たると吸収されてしまった。



「勇人君、この「透過蜘蛛」は剣じゃダメージを与えられないみたいね。魔素が多いダンジョンだし魔法じゃないと駄目ってことかも」


「かもな……面倒くさいやつだな、これ」



床に地下1階と同じように異世界文字が書かれていることに気がついた俺は、その文字を読んだ。



──空に三つの陽が並ぶ日、運命の賽は深淵の主を呼ぶ。力ある者の刃は眠り、魔の火のみが道を拓く。



ええと……。


“空に三つの陽が並ぶ日”ってのは、「幻日」が現れる日のことだな。

“運命の賽は深淵の主を呼ぶ”は、ランダムでボスとエンカウントするってことか。


そして“力ある者の刃は眠り、魔の火のみが道を拓く”ってことは、やはり物理攻撃は効果がなくて魔法でしか戦えないらしい。


「新月」といい「幻日」といい、なんで毎回そういうタイミングと重なるんだよ。

しかも「六面の石」とか「賽」とかランダムですよーみたいに書いてあるけど……今のところ100%じゃないか!


絶対に振ってるのイカサマサイコロだろ!

Tボーンステーキの骨を削って作ったやつだろ!



「透過蜘蛛」は跳ねるように移動して我々と距離を作り、口を開けた。



口の奥で、白い閃光が脈打った──────来るぞ。





(※次回から4話は、四人の女性の各視点からのエピソードになります。)

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