106『続・中野Cダンジョン』
西新宿ギルドのメンバー全員と雪奈がオフィスに集合していた日に、ルーシェルの強すぎる魔力数値について話した。
当然だが「信じられない」「ありえない」「計測ミスだろ」という反応になり、真希が再度ルーシェルのステータス診断を行った。
結果は俺が診断したときと一緒だ。
「本当に魔力が324ってなってるわ……レベルは4しかないのに」
「わあ! ルーシェルちゃん、すごーい!」
「おいおい久留里、そんなすごーい!とかで済む話じゃねえぞ。俺は探窟家歴がなげぇけど、こんな数値は噂ですら聞いたこともねぇ」
さらに俺はルーシェルは魔素量がわかるという話をして、魔素量が多いのが判明した中野Cダンジョンに潜って魔法の“ひらめき”をルーシェルと一緒に得ないか? という提案をした。
五郎は今回はパスした。
魔法にはまったく興味がないらしく、もし覚えられたとしても残り使用回数とかを計算するのがストレスになるそうだ。
わかる。よくわかるぞ。
俺もRPGをやっていて脳筋戦士を使う時の気楽さは知っている。
意外だったのは真希も五郎と同じ脳筋タイプで、しかもお金にならないダンジョンには興味がないと思っていたのに、参加表明したことだ。
「魔法を覚えたいから行くわ。いつも使えないの悔しいと思っていたから」
「悔しかったのか、それは知らなかった……」
久留里はうちでは一番多くの種類の魔法が使えるが「こんなんなんぼあってもええですからね」の精神で、ひとつでも多く覚えたいようだ。
「転移魔法よりもっとヤバいの覚えちゃったらどうしよ! 人気を超えて崇められちゃう? 神とか言われちゃう?」
「じゃあ真希と久留里は参加で。雪奈はどうする? 火球以外も使えたら便利じゃないか?」
「……う〜ん」
「どうした?」
ルーシェルの前に移動した雪奈は、まるで“この世の者ではない者”に接するかのような脳が理解できないという顔をしている。
「ねえ、ルーシェルさん。未公開のダンジョンXの水晶に閉じ込められていたり、魔素量がわかったり、異常な魔力値だったり……あなたは何者なの?」
「ええと……あの……わからない……です」
雪奈は腕を組んでジトーっとした疑いの眼差しでルーシェルを見続けたのち、顔を俺の方に向けた。
「勇人くん、私も一緒に行く。でも新しく魔法を覚えることにはそこまで興味ないの。私はルーシェルさんに興味がある」
まあ、あやしいよね。
まさか異世界のお姫様だとは思ってもないだろうけど。
そんなわけで明日は早朝から中野Cダンジョンに潜ることになった。
────中野Cダンジョン。
東京の中心・新宿の西隣にある区であり、アニメやオタク文化で有名なエリアがある街──中野。
世界中にダンジョンが突如出現した20年前に、その中野区内の神社の境内に現れた迷宮タイプの小規模なダンジョンが中野Cダンジョンだ。
俺がはじめて入ったダンジョンで、こっちの世界にやってきたルーシェルが日本語を学習したり、魔素を浴びに行ったりと何かと縁がある場所だった。
10年以上前に攻略されている最下層の10階層には、ボスモンスターのようなのもいなかったらしい。
だから今回は戦いに行くという感じではない。
じゃあ……行って何をすればいいのかな?。
はっきり言ってノープランだ。
雑魚モンスターと戦いながらウォーキングでもするしかないのか?
それとも坐禅でもすればいいのか?
目が合ったルーシェルは嬉しそうな目で微笑んできた。
きっと、明日が楽しみで仕方ないのだろう。




