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105『ルールを作る側』

ニューヨークダンジョンに向かう直前にオフィスには応接セットが導入されていた。

そのソファーで一番最初に向かい合って座るのが国内ランキング1位ギルド「神威連合」の代表・東宮華山になるとは思いもつかなかった。


東宮華山の部下たちはオフィスの入り口付近に直立不動のままで、真希は東宮には興味ない感じでPCに向かったままだ。



「……それで東宮さん、西新宿ギルドを神威連合に加えたいというのは、どういうことですか?」


「私は合理的な人間です。その方が双方にメリットがあると考えているのです」


「メリット……俺たちにどんなメリットが?」


「あなた方はすでに“小規模ギルドの限界”に達しています。ここからは規模を拡大していったとしても、Kドライブ106という新兵器と世界中のダンジョンのデータを持っている我々には追いつけませんがね」


「ずいぶんハッキリと言ってくれるね」


「そして我々は現在、世界ダンジョン機構に対して“安全・公平・秩序”のための新制度の制定を働きかけています。これが決定した場合、日本国内の高難度ダンジョンは認可制になり、その審査はランク1位の神威連合が行うことになります」



要するに、神威連合は管理する側になるということか。

“完全独占”ではないけれど“実質独占”に近い状態になるという話だ。



「俺たちを入れて、神威連合にはどんなメリットが?」


「もちろん西新宿ギルドの戦力は高く評価しています。しかしそれ以上に価値があるのは……あなた個人のスキルです。おそらくあなたは装備品を作ることができる特別なスキルを持っていますね? それを神威連合のために使っていただきたいのです」



Kドライブ106はダンジョンで手に入れた装備品を加工して作られている。しかしどうしても一点物ワンオフにしかならない。


俺がスキルで装備品を大量に作れば、それを「素材」にすることで量産ができ、さらにもっとコストパフォーマンスに優れた兵器に改良もできるだろうと東宮華山は説明した。



「あなた方のチームはそのまま存続してもらって構いません、いかがですか? 共にダンジョンを支配しましょう」


「断ると……俺たちに高難度ダンジョンの挑戦をさせないってわけか」


「新制度への移行はまだ先です。しかし、そう遠くない未来にそうなるかもしれませんね。無秩序な挑戦は損失を生むだけです。最下層に辿りつけるのは……管理された戦力であるべきでしょう」



サングラスで目元が隠されているので表情は完全には読み取れなかったが、その口調から彼が自信に満ち溢れていることはよくわかった。。


けれど、それよりもさらに自信のあるような声が後ろからした。



「勇人くんは、あなたみたいな男の話には乗らないわよ」



振り返るとピシっとしたスーツ姿の雪奈が応接セットに向かって歩いていた。


彼女がついさっきまでテレビ出演していたのだろうというのは、雪奈がこのオフィスを使用するようになってから髪型やメイクを見ればわかるようになっていた。



「三法師雪奈さん……おひさしぶりですね。しかし、あなたみたいな男とは酷い言われ様だ」


「あなたのいう合理的って、結局は支配と服従の関係でなりたってるのね」


「“ダンジョンの向こう側”はどこかの最下層にあるのではないですか? 神威連合に戻らなければそこに辿り着けなくなりますよ」


「戻らないけど大丈夫よ。私には勇人くんがいるから」



……なんかすっごい期待されてるぞ。


だけど雪奈のいうとおりだ、この男のどんな甘言と脅しにも俺は乗らない。

俺は自分の西新宿ギルドを、世界一のギルドにしたいんだから。



「東宮さん、西新宿ギルドは……神威連合には吸収されない。俺たちが1位を取ればいい。神威連合が1位でなくなれば新制度を仕切る説得力を失うはずだ」



東宮華山はしばらく無言になってから、ゆっくりとソファーから立ち上がった。



「そうですか……残念ですね」



何か捨て台詞でも吐くのかと思っていたが、彼は無言で部下の男たちと共に去っていった。そのあっさりした去り方が逆に不気味だった。



「くだらない話は終わった?」



真希はさっきまでの会話など最初から存在しなかったかのように、弁当箱が入った巾着袋の紐を指でつまんでいる。



「もうお昼よ、お弁当食べましょ」

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