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100『富と名声とプライバシー』


自宅である洋館に帰ってテレビをつけると、昼の情報番組でちょうど西新宿ギルドの快挙が特集されていた。


ニューヨークダンジョン攻略の歴史を紹介する映像や、ダンジョン前での凱旋イベントの様子が流れ……そして話題は西新宿ギルドの代表である「魔王」に移った。


番組アシスタントの女性アナウンサーは俺の名前を普通に出している。



「謎や噂の多い“自称魔王”こと奥野勇人氏ですが、彼は東京都出身で現在34歳だと判明しています」



俺の卒業アルバムの写真が画面に表示されている。

誰だよ……提供したやつは。

フードかぶって顔を隠した意味ないじゃん!

まあ15年くらい前の写真だから、今よりはかなり若い姿だけどさ。


さらに中学時代に不登校の引き篭もりだったことまで報道されてる……お願いだから、やめてくれ。



「心理学がご専門の河田先生は、奥野勇人氏はなぜ“自称魔王”となったのだとお考えですか?」


「おそらく彼を引き篭もりに導いた社会への憎悪が、魔王という恐ろしい姿で世の中に恐怖を撒き散らしたいという思想に発展したのだと思います」


「なるほど、社会への憎しみが魔王という人格を作り出したと。そして“すべてを破壊する支配者になりたい”や“人類に絶望を与えたい”という奥野氏の歪んだ野望につながっていったわけですね」



ちょっと待て! なんだよ、その凶悪犯罪者みたいな扱いは!


憎悪とか破壊とか野望とか勝手に間違ったプロファイリングするなよ! 


テレビを消すと、実家から着信があった。

母親からは「いい年して魔王とか……お母さん恥ずかしくて外を歩けないわよ!」というようなことを早口で捲し立てられた。



翌朝、Bチームからオフィスビル前のマスコミの人数を報告してもらい、そこまで多くはなかったのでAチームのメンバーはオフィスに集まり現状を報告しあった。


久留里だけテンションが高い。



魔王や魔王軍に関しては有る事無い事言われてはいるが、この快挙によって西新宿ギルドの存在はかなり世間に知られるものとなった。


龍洞様からは「魔王様♡ファンクラブ」で販売している公認グッズに世界中から注文があって生産が追いついていないと連絡があった。


しかも、しれっとグッズの値上げをしているし……抜け目ない。


グッズのロイヤリティによる収入は大きいけれど、なにより今回は巨大魔石の売却による利益が大きい。

巨大魔石は世界ダンジョン機構が現在保管をしていて、このサイズだとオークションでの取引になるらしく、落札予想価格は真希の読み通り日本円で8億円だそうだ。


今日は装備品をロッカーに戻すのが一番の用事だったので、これでおしまいだった。


俺はルーシェルを東京の街が一望できる、このオフィスの大きな窓の近くに呼んだ。



「今日はもう予定ないし、無事に帰ってきたから出かけるか? ルーシェルはどこか行きたい場所はある?」


「デートのお約束覚えていてくださったのですね。ずっとこのような人の多い都市にいて……その……あまり空気も良くないのでどこか自然がある場所に行きたいです」



自然か……新宿からだと京王線で高尾山がいいのかな?

あそこなら中腹でルーシェルは好物の蕎麦が食べられるし。


よし、高尾山に行こう。


俺とルーシェルがコートを羽織ってオフィスビルから出ると、朝よりもマスコミの数が増えていて、それがどっと押し寄せてきた。



「奥野さんですね! そちらの外国人女性はどなたですか?」


「恋人でしょうか? まさか生贄的な……」


「魔王が三法師雪奈さんを闇堕ちさせたとネットでは話題になっていますが、美しい女性たちを支配して何かを計画されているのですか?」


「おふたりは、これからどちらに?」




富と名声は手に入った。


だけど──平穏だった日常を、失った。

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