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99『成田空港から脱出』

西新宿ギルドメンバーを乗せた飛行機が成田空港に到着してすぐ、久留里が「わあ! 見て!」と声を出してスマホの画面を見せてきた。


それはSNSに投稿されている、我々を撮ろうと待ち構えている新聞社やテレビ局関係者の姿を写したものだった。



「税関通過したあとの到着ゲート出口に集まってるんだってー! すごいね!」


「えええ? いつ帰国するとか、どうやってマスコミにバレたんだ……?」


「それはたぶんねー、私が「これから日本に帰りまーす!」ってコメントつけて飛行機のチケットをアップしたからだよー!」


「犯人は君か! 君のせいか!」



まいったな。

有名人になりたい久留里とすでに有名人の雪奈は別に気にしないのかもしれないが……俺。五郎、真希、鯨山さんは別に有名になりたいわけじゃない。

しかも魔王軍は世間的に怖がられているので、普段の生活に影響が出てしまう。


俺の悩みを察した雪奈が提案をしてきた。



「勇人くん。もし顔バレがいやだったら着替えちゃえば? ケルベロスのローブのフードをかぶれば顔はよく見えないし」


「そうか! それだ!」



“魔王軍装備”はとにかく不気味で禍々しく、インパクトがある。だから印象を顔よりも装備に集中させることができる。

それはニューヨークダンジョン攻略の翌日に、私服で騒がれることなく観光できていたことで実証済みだった。


現在の私服姿で報道されてしまうより魔王軍の姿で報道される方がずっとマシだ。



我々は手荷物受取所のトイレで手早くキャリーケースに入れてあった魔王軍装備に身を包み、税関を通過した。



自動ドアが開く。


先頭は派手な白いキャリーケースを引いて手を振っている小悪魔姿の久留里だ。

その後を魔王軍装備の西新宿ギルドのメンバーと白い鎧の雪奈が歩く。


報道陣のシャッター音と、我々の姿に驚く声が爆発した。

フラッシュの閃光が止まらない。


報道が集まっていることで野次馬的に空港利用者も集まってきていた。


到着ゲートの外には空港職員によってロープが貼られていて、俺たちの通路は確保されている。

オリンピック閉幕後に首から金メダルをぶらさげた選手が空港を歩いている映像があるが、あれと同じ感じだ。



「お帰りなさい! 魔王様、一言お願いします!」


「ティアマット撃破の決め手は何だったんですか!」


「魔王軍の次なる侵攻先はどこですか!」



テレビのレポーターからの声が飛んでくる。

マスコミを敵に回したくはないのでそれなりの対応はした方が良かったが俺は質問には答えず、目立ちたがりの久留里とテレビ慣れしている雪奈に対応してもらった。


その後は空港職員に誘導されて、黒塗りの大型バンに全員が乗り込んで成田空港を脱出した。


西新宿にあるオフィスビルに戻って装備品などをロッカーにしまいたかったけれど、ビルの前にはマスコミが待機しているかもしれないので、途中でバンから降りて、人通りの多い場所で一般客に紛れるようにしてタクシーを拾い、別々に帰宅した。


なんでこんな風にこそこそしないといけないんだ。


────人の噂も七十五日……七十五日って長いな。

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