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二度目の闘い

エラントへと続く小道を進む。


「うーん、やっぱ宿代と食事代は稼いでおきたいよなあ。ギルドに報告行く前にモンスター倒してクォーツゲットしとくかな」


エラントへの小道から逸れて、水神の森の方角へと歩みを変える。


「ただこの世界ってモンスター自体あんましいなさそうな感じがする。まあうじゃうじゃいても困るんだけど」


ゲームでは当然ながらレベル上げのために街から出るとすぐに視界に入る程度にはモンスターが設置されていたのに対し、森で目覚めてからエラントまでの道中に出会ったのはウルフ2頭のみだったことから、この世界ではそもそもモンスターが少ない可能性が考えられた。


「こういうとき猟士のサーチがあればすぐ見つけられたりするのかな」


あえて街道から外れた平野を進んでみてはいるもののモンスターが現れる気配はない。


時刻は夕暮れ手前といったところだろうか。


「ギルドに報告もしないといけないし早めに戻りたいところだけど‥」


周囲を見渡してみると、かなり遠くに動くものが見える。


「お、なんかいそう。またウルフかな?」


特に隠れる場所もなく、見つからないように進む事も難しいためまっすぐに目標へと向かっていく。


「ウルフだね」

目視で茶色い毛並みの姿が確認出来る程度まで近づいたところで、向こうも気づいたらしく、こちらへ向かって走り出していた。


「おーおー、早い早い」

みるみるうちに 姿がはっきりと見えるほどの距離。


「残念ながらこっちには魔法があるんだよなあ」


もともと戦闘に関してはほとんど動揺しないという謎の精神力に加えて、二度目ともなれば落ちつき払っていると言っていいほどに平常心のままだった。


魔力の流れを一点に収束させるイメージを固める。


「『ストーン』」


手のひらから放たれた石飛礫は向かってくるウルフへと瞬く間に着弾し、その頭へ直撃した。


低い鳴き声とともにその場に倒れ込むウルフ。


「‥やったかな」


倒れたウルフへと近づく。

側にはクォーツが落ちている。

どうやら倒せたようだ。拾い上げ、皮袋にしまう。


「一撃か。まああの威力だし、頭に当たればそうなるよね」


遠距離から一方的に攻撃出来るというのはかなりのアドバンテージといえた。


ウルフの死体を見つめる。戦闘時の気持ちとは反対に死体を見ることにはまだ慣れないようだった。


「見た目は犬っぽいからなあ。気持ちいいもんではないね‥。でもこれで食事代はオーケーと。あとは宿代分も稼ぎたいところだけど‥」


MP減によるだるさを感じながらもウルフの死体を後にして、さらに森の方へと歩みを進めることにする。


「ウルフしかいないのかな。この辺ならウサギとか鳥とかもいたのに」


エラント周辺では主に獣系のモンスターが多く配置されていたことを思い出す。


かなり森の方へと近づいてきていたものの、モンスターの姿は見当たらなかった。


「うーんいないか。しょうがない、戻ろう」


これ以上進むと街へ戻るのが遅くなってしまうため、来た道を戻ることにする。


「あれ?」


来た道を戻ってきたつもりだったが、ウルフの死体が消えていた。


「自然消滅するのかな」


以前倒したウルフもそのままにしておいたが、同じように消えたのだろうか?


などと考えていると、背後から妙な気配を感じた。


(なんだ‥?)


振り向き、周囲を見渡す。


開けた平野のため視界を遮るものはない。


視界が捉えたものはこちらへと向かってきているウルフだった。


3頭。

そのうち2頭は通常のウルフ。


もう1頭はー


「なんかでかいな‥。それに角もあるし、レアのやつかも」


1頭はかなり大きく、小型の馬ほどの大きさに見える。

大きさは違っても毛色や見た目は他のウルフ同様だったが、額に小ぶりな1本の角が生えていた。


ゲームでは強力な個体であるレアモンスターが稀に出現するようになっており、貴重な装備品や素材を落とすため、プレイヤー達から狙われる存在だった。


(そういや、調べるスキルが使えるかもしれないな)


角有り個体に向けて念じると、ステータス画面のようなものが表示された。


名前 ホーンウルフ

種族 ウルフ族

強さ 調べる事が出来ない


(ゲームと同じか。大した情報見れないんだな)


ゲームでは調べるスキルでプレイヤーやモンスターの強さを見ることが出来るようになっていた。

例外として、NPC、そしてレアモンスターとボスモンスターはステータスを見ることはできなかったため、どうやら同じということらしい。


「まあともかくこれで宿代もオーケーと」


モンスター3頭であることに加えて、通常個体より大きなレアモンスターを前にしてもほとんど動揺しない自分自身に逆に不安を覚える。


「おお‥、近くで見るとかなりデカい」


気づけば3頭とも一足飛びの間合いにまで近づいてきていた。


(MPは残り10だし、ストーンはホーンに使おうかな)


相変わらず冷静に思考を行う自分に内心少し笑ってしまう。


腰の短剣を右手で引き抜き、軽く握る。


低く、身体に響くような鳴き声でホーンウルフが咆哮すると同時に取り巻きの2頭が飛びかかってきた。


2頭同時ではなく僅かにタイミングをずらしている。

ホーンウルフの方は様子見しているようだった。


(様子見か。助かる)


噛みつこうと飛びかかってきた先頭のウルフの牙を横向きに構えた短剣で受け止める。

ほぼ間を置かずに2頭目はこちらの左肩を目掛けて飛びかかってきた。


咄嗟に左手で外套の裾を掴んで殴りつけるように振り回し、2頭目の攻撃をいなす。

そして同時に1頭目が牙で受け止めていた短剣を捻るようにして牙の拘束から逃しつつ、そのまま口の中を横凪ぎに切り裂いた。


狙ったわけではなかったが、2頭目は目に外套の裾が入ったのだろう、目を瞑り、頭を振っているのが見えた。

すかさず2頭目へ向けて、短剣を投げつける。

額へと突き刺さる短剣。


1頭目は戦意が薄れたのか、口元から血を流しながら少しづつ後退していた。

2頭目は倒れたままピクリとも動かない。

短剣の一撃ですでに絶命しているようだ。


自然と身体が動くこの戦闘能力も今となっては驚く事もなくなっていた。


様子見していたホーンウルフは、不甲斐ない部下?に苛立っているかのように、唸り口元を震わせ、姿勢を低くしながら少しづつ近づいてくる。


ホーンウルフが戦闘態勢に入ったためか、1頭目も覚悟を決めたかのように後退をやめてジリジリとにじりよってきていた。


(MP0になった時どうなるかわからないけど、ストーンでホーンを先にやるか‥)


その瞬間、ホーンウルフが通常のウルフとは比較にならないスピードで飛びかかってきた。


「っつ!」


咄嗟に身を屈めて躱す。

突進の勢いでそのままこちらの背後に着地したホーンウルフは振り返り、こちらを中心にした、周りこむような動きを見せはじめる。


(はっや。さすが、レアモンス。たしかレベル15以上くらいないとソロじゃきつかったんだよな)


ホーンウルフを邪魔しないようにしているのか、1頭目は少し遠目から隙を窺っているようだ。


(というかさっきから魔力のイメージが上手くいかない気がする。動きながらとかだと魔法使えないのかも)


魔力を収束させるイメージが途中で霧散するかのように定まらない。


ゲームでは移動すると魔法詠唱が中断される仕様だったため、魔法を使うには立ち止まる必要があった。


(困ったな)


2頭目に突き刺ささったままの短剣を見やる。


視線に気づいたのか、ホーンウルフが1頭目に目配せするような動きを見せた。


(まじか。賢いね)


1頭目が2頭目の側に移動した。

どうやら短剣を回収させないつもりのようだ。


(まあストーンが当たれば倒せるでしょ)


初期魔法であるストーンは幸い、イメージを魔法力へと変換させるための時間は短い。


(よし)


ホーンウルフが、1頭目の視界をその体躯で遮る位置に来た瞬間、背を向けて反対側へと走り出す。


(さあどうする?)


走りながら振り返るが、ホーンウルフはあっという間に眼前に迫っていた。


(そりゃ無理か)


また様子見してくれるかもしれないと淡い期待で、走って魔法を使うための距離を稼げるか試したものの、そう甘くはないようだ。


振り向きざま、背負っていた荷物を放り投げ、外套を脱いで左手に巻き付ける。


左手をわざと噛ませて、その隙にストーンを撃ち込む作戦でいくことにした。


(左手を噛みちぎられる可能性もあるけど)


1頭目はその場から動いていないため、ホーンウルフと1対1の構図となった。


外套を巻いた左手を前手にして腰を落とし、攻撃に備えようとした矢先、ホーンウルフの前足の鋭い爪が襲いかかってきた。


「あぶっ!」


横に飛び、地面を1回転しながら回避してすぐに態勢を立て直し向き直ったものの、すぐさまそこに追撃の爪の攻撃が飛んでくる。


スピードで敵うはずもなく爪の連続攻撃になす術もないまま回避に専念する。


(くぅー、これじゃ魔法使うのは厳しすぎる。仕方ない)


爪の攻撃が続く中、タイミングを測る。


「ーここ!」


ホーンウルフが左前足を振り上げた瞬間を見計らい、前に一気に飛び出した。


右肩口に爪が食い込む感触と同時に焼け付くような痛みが走る。


「ーいっった」


魔力を収束させるためのイメージを固めていく。

今度はイメージが霧散することもなく、魔力の流れを感じとれる。

どうやら魔力をイメージすることに痛みによる影響は無いらしい。


ホーンウルフは食い込ませた爪に体重をかけるようにしつつ、こちらの頭に噛みつき攻撃をしてくる。


「ーーありがとさん!」


外套を巻いた左手をホーンウルフの大きく空いた口腔へと突き出す。

外套はほとんど意味も無さず、左手に牙が食い込んでいく感触。


イメージが形をなし、魔力が魔法力へと変換される。


「『ストーン!』」


突き出した左手から石飛礫が口腔内へと発射され、低い唸り声と共にホーンウルフの頭が揺れた。


こちらへともたれかかるようにホーンウルフが倒れ込んできたが、もう動くことはなかった。

どうやらストーンの一撃で倒せたようだ。


右手で口元を少し広げて左手を引き抜き、両手でホーンウルフの体躯を押し除けて地面に倒す。


「いてえ‥」

右肩口と左腕から出血しているのに加え、MPが0になった影響もあるのだろう、かろうじて立っているものの身体がいうことを効かない。


(あと1頭いるんだよな‥)

1頭目の方へと視線を向ける。


「ー助かった」


1頭目が森の方角へと走り去っていくのが見える。

ホーンウルフが倒れた事で、勝ち目が無いと感じたのだろうか。


「きっつー」


その場に仰向けに倒れ込む。


空はもうかなり暗くなってきていた。

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