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ギルドへの報告

「う‥」


気づくと空が暗い。

眠っていたというより、気を失っていたような感覚。


「いってえ‥」


右肩と左手が痛む。

痛む左手を伸ばして右肩に触れると血が手についた。

まだ出血が続いているようだ。


「MPは‥助かった。10ある」


倒れている間にわずかにMPが回復していた。


全身を覆う光の流れをイメージし、その魔力をヒーリングの魔法力へと変換させる。


「『ヒーリング』」


全身を淡い光が包みこむ。

心地よい暖かさを感じると同時に痛みが引いていく。


「うーわ、やっぱ魔法すごすぎ。出血止まったし」


痛みはまだあるが、出血が止まる程度には傷口が回復したようだ。


「よっ、いしょ」


右膝に右手をかけて何とか立ち上がる。

血を失ったせいか、軽くふらついた。

MP低下によるだるさには慣れてきたのか、歩く分には問題なさそうだ。


「っとそうだった」


ところどころ乾いた血のついている外套を羽織り、放り投げていた荷物袋を背負う。


「シャツとマントは買い替えだな」


ホーンウルフの死体へと近づく。

そばにはいくつかのクォーツが落ちていた。


「おおー、これだけあれば結構な儲けになりそう」


濁った色のクォーツが8つ、透明度の高いクォーツが1つ。

そして、


「装備の素材になるんだっけ」

ホーンウルフの額の角に目をやると、根元に亀裂が見えた。


「もらっとくよ」

力を込めると角が根本から折れた。

角の表面は少しざらざらしていた。


角とクォーツをそれぞれ荷物袋と革袋へとしまう。


「2頭目はどのへんだっけ」


あたりを見回すが、2頭目の死体が見当たらない。

代わりに月明かりをわずかに反射している短剣を見つけた。


「ホーンが残ってるのはよくわからないけど、やっぱり死体は自然消滅するのかも」


短剣を拾い上げ、腰の鞘へと戻す。

側には濁った色のクォーツが1つ。

こちらも拾い上げ、革袋にしまう。


「さてと、戻って報告しないと」


その場にとどまってMPを回復させてから戻ろうかとも考えたが、途中モンスターが現れないとも限らず、さらに夜間は夜間限定のモンスターが出現する可能性もあるため、比較的安全だと思われるエラントへと続く街道の方へと向かうことにした。


(何時くらいだろう)


空を見上げる。

満月に近い形の月は明るいものの、辺りはかなり暗い。

当然ながら街灯のようなものもなく、月明かりのみを頼りに歩みを進めていく。


「街道に出たっぽいかな」


舗装されているとまではいかないが、それなりに整えられた道をエラント方面へ向かって歩き出す。


しばらく歩くと、門に灯されているクォーツの明かりが見えてきた。


門は閉じられているようだ。


「げ‥閉まってるし」


(そういえば初めてきた時も夜は閉めるとか言ってたもんな)


門の前に到着する。

押してみるが、当然ながら開くことはなかった。


「はぁ」


荷物を下ろし、門を背もたれにして座り込んだ。


「朝まで待つかあ」


ーーーーーーーー


朝日を瞼に感じる。

眠ってしまっていたようだ。


(朝か)


扉が開く軋んだ音が聞こえてくる。


「うおっ」


背もたれにしていた扉が内側に開いたためバランスを崩してそのまま倒れこんでしまった。


「む、なんだ?」


ヒューマンの門番の1人が開きかけの扉の横から顔を出した。


年齢は30手前といったところだろうか。茶色の長髪。筋肉質で鍛えられた体躯をしていた。

年季の入った革鎧に鉢金、腰には長剣を帯びている。


「お前は‥確か一昨年あたりに見かけたな。冒険者か」


「あ、どうも」

挨拶しつつ、起き上がる。


「おいどうした?」

両開きの門の片方の扉を開き終えたもう1人の、こちらもヒューマンの門番が小走りでやってきた。


「どうも門の前で寝てたらしい」

「はあ?何でまた」

「さあな。おっと、扉が途中だったわ」


長髪の門番はもう片方の開きかけの扉を開けにもどっていった。


「というかお前、顔色悪いな。大丈夫かよ?」


2人目の門番が心配するような声で話しかけてきた。

茶色い短髪に、少しふくよかな体型。装備は最初の門番とほぼ同じだが、年齢はいくらか若いように見えた。


「ええ、ちょっとモンスターとの戦闘でケガを」


「そうか。あんまり無理しないようにな」


「はい。ありがとうございます」


開く途中だった扉を開き終えて、長髪の門番が戻ってきた。


「門閉まってて寝てたんだろうが、横に小さい扉あるだろ?門を閉じてる間は夜番がいるから扉ごしに声かけてくれれば夜中でも通れるぞ」


長髪の門番が指差す先、確かに門の横、街の外壁に小さい扉がある。


「気づきませんでした‥次からそうします」


荷物袋を背負いつつ、2人の門番に軽く手をあげて門をくぐり、ギルドへと向かう。


早朝のためか、ギルドに到着するまでにあまり人は見かけなかった。


「そういやギルドって24時間営業なのかな」  


扉に手をかける。

どうやら閉まってはいないらしい。


(誰かいるかな)


ギルド内を見渡す。

数名の冒険者がクエスト掲示板前に並んでいるのが見える。


受付カウンターにはエリザ、エリン、サンディ3名の女性の姿はない。


代わりに1名のヒューマンの男性が立っていた。


男性のいる正面のカウンターへと歩みを進める。


(おーイケメン)


180センチほどの身長。

年齢は20代前半に見えた。

少し暗めの金髪を耳が隠れる程度に無造作に伸ばしており、オーバルフレームの眼鏡、白いシャツに紺のベストといった格好。

色が白く華奢な雰囲気も相まって、中性的な印象を与えていた。


「おはようございます。わたくし、キールと申します。もしかして、クライム様ですか?」


こちらに気づいたのか、柔らかな声でキールの方から話しかけてきた。


「あ、おはようございます。そうです」


「やっぱり。昨日、職業適性確認クエスト完了の報告に来られていないという事を聞いておりまして、背格好からそうではないかと」


「すみません。報告遅れてしまって」

軽く頭を下げる。


「無事戻られて何よりです」

にこりと笑う笑顔が眩しい。


(うーん。爽やか。こりゃモテるだろうな)


「ところで、顔色が悪いようですが大丈夫ですか?」


門番からも指摘されたが、血を失っているせいだろう。


「大丈夫です。なんとか」


笑って答えたあと、改めて自分の体を見てみると、薄汚れた衣服、血のついた外套、指摘された顔は見えないが、おそらくあまり大丈夫といえる見た目ではなさそうだった。


「とりあえずクエストの報告させていただきますね」


「かしこまりました」


サンドラ達の指導の元、最終的に回復魔法士と攻撃魔法士の二つの職業をコアソウルに刻み、無事に職業についたことを報告する。


「この場合、私の職業はどちらになるんでしょう?」


メイン職業とサブ職業について疑問に思った事を尋ねてみる。


「クライム様のように複数の職業をコアソウルに刻んだ方は、基本的には後からついた職業で冒険者登録されることになります。ですが、冒険者登録証にはこのように二つの職業が記載されるようになっています」


報告の途中でキールに渡していた冒険者登録証が返される。

空白だった職業の欄には攻撃魔法士、その下に少し小さい文字で回復魔法士とも刻まれていた。


「登録上このような形となりますが、複数の職業につかれた方はレベルの高い方の職業で名乗られる事も多いかもしれません」


(複数職についてたリーグさん見るに低レベルをメイン職にしたからといってサブ職になった元の職業のレベルが下がるとかもなくて能力的には関係なさそうだったもんな)


「わかりました。ありがとうございます。それと‥」


革袋からクォーツ、荷物袋から角を取り出してカウンターへ並べる。


「これの買取、お願いできます?」


「かしこまりました。土のクォーツが‥11個に、これはもしかしてホーンウルフの角ですか?」


「そうですね」


「えと、倒されたのですか?」

少し驚いたような表情でキールが尋ねてくる。


「結構あぶなかったですが、まあ何とか」

後頭部を掻きながら笑って答える。


「先輩達からクライム様は新人冒険者とは思えないほどの腕前だと噂を聞いていたのですが、すごいですね‥。ソロでホーンウルフを倒せるのはアイアンランク以上の方くらいですよ?」

キールは本当に驚いているようだった。


「あはは、まあ運がよかったというか」


(まあレベル差による補正もないから、魔法で先制攻撃出来さえすれば誰でも勝てそうな気もするけど)


「本当にすごいです。あ、すみません、買い取りでしたね。査定しますので少しお待ちいただけますか?」


「はい」


キールが何やらカウンターの下から分厚い本のようなものを取り出して、ページを捲り出した。


キールを横目にクエスト掲示板近くのテーブル席に移動し、椅子に腰掛ける。


「ふぅ」

体が重い。思った以上に疲労しているようだ。


キールの様子を伺いながらしばらく待つと、キールが本をカウンター下へ戻し、こちらへ向けて手を上げるのが見えた。


査定が終わったようだ。

重い体を起こし、カウンターへと向かう。


「クライム様、お待たせしました」


カウンターには硬貨が並べられていた。


「クォーツ11個のうち、モース1が7つ。モース2が3つ。モース4が1つ。そして、ホーンウルフの角が1つ。合わせて25万6500ジールになります」


「25万!?まじすか!?」

(まじで?高すぎない?)


「えと、あの、はい。少なかったでしょうか‥?」

キールが少し申し訳なさそうな声で答える。


「いえそのすみません。そんなに高く買い取ってもらえると思ってなかったので」


「そ、そうでしたか。よかった。ではこちらを」

100ジール硬貨が5枚。

1000ジール硬貨が6枚。

10000ジール硬貨が25枚。


10000ジール効果は少し黒ずんだものが混じっている。どうやら銀製のようだ。


「ありがとうございます」

革袋へと硬貨をしまう。 


(25万とか最高すぎ!)

内心うはうはだった。


「では失礼しますね。ちょっと休んで回復したらまた来ます」

(こりゃホーンウルフで金策するのも悪くないなー。その前に腹も減ったし食堂いくか)


などと思いながらキールに背を向けて食堂の方に向かおうとしたところ、背中から声をかけられた。


「あの、クライム様。食堂に行かれる前にその、失礼ですが、その‥少し臭いますので公衆浴場に行かれてはいかがでしょう。そのままだとシェフから出禁扱いにされかねません」


「えっ」


先ほど確認した通り、薄汚れた全身、血まみれのシャツと外套。これでは確かに食堂に入る格好ではないと言われても仕方がない。


そして気づいていなかったが、ホーンウルフの口腔へと突っ込んだ外套からは獣臭も漂っている。


(たしかにこれは‥まずい。先に着替えとかした方がいいな)


「そ、そうします。ところで公衆浴場ってどの辺りにありますか?」


「ギルドを出て広場に向かっていただいて、港側と反対側の道の方へ向かった先の住民街区にあります。広場中央付近に案内の看板がありますので、もし分からなければそちらをご覧になってみてください」


「分かりました。キールさん、ありがとう」

キールに手を上げて、ギルドの扉へと向かう。


「行ってらっしゃいませ」

キールは笑顔で見送った。

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