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091 世界の揺らぎ

 イスブルクの街に戻ってきた一同は結局ゴシックロリータに集まって話を始める。

 

「神ってどう探せばいいんだ?」

 

 誠はシゲに向けて質問をする。

 

「自分で探すしかないだろうな。北欧神話、ギリシア・ローマ神話、エジプト神話、インド神話と様々だ。自分で合うものを見つけるしかない。」

 

「でも私はもうCHAOSになってるわよ?」

 

 既にCHAOS属性になってしまっているのがペイン、ハナ、シゲの三人である。

 

「これは信仰の問題じゃないんだろうな。多分行動の結果が反映されている。」

 

「女神じゃなく別の神である白虎に頼ったからってこと?」

 

「そう考えるのが妥当だろうな。」

 

「じゃあ私も守護してくれる神を見つけなきゃダメってこと?」

 

「そう思う。」

 

「シゲが見繕ってよ。私はその神様で異存ないから。」

 

「そういう問題ではない。やはりきちんと信頼できる神でなければならない。」

 

「俺は別にポセイドンを信仰した覚えはないぞ?」

 

「まぁそう言うな。ポセイドンの方がペインに惚れたといった方が今回の件は正解だろう。」

 

 ペインはそれを聞いて肩をすくめる。

 神とはいえ男に惚れられて嬉しいことはない。

 そんな中、じっと考え込んでいた澄狐が口を開く。

 

「ワシは……ワシがもし神として崇めることができるならば、刃牙の渋川剛気とか、北斗の拳のトキとか、そういう人物であれば尊敬に値するし信仰できる。ワシは神話について何も知らんしわからん。そんなものの加護を得るというのは性に合わん。それならいっそシステムとして用意されている『格闘の女神』とやらの方が素直に従える。LAOのゲームシステムじゃからな。」

 

「二次元の神か……。そうなると俺はやはりベルセルクのガッツだな。」

 

 そう答えるのは誠である。

 

「神ってなんなのだろうね。概念ともいえるし、今回のようなケースでは実態もある。まぁデータなんだけどさ。ボクも神話には疎いからな……。過去の偉人とかは? シゲの安倍晴明なんかはその類でしょ?」

 

「偉人は色々と難しいんだ。安倍晴明は神としてちゃんと神社に奉られている。一方で……そうだな、例えばクレオパトラ。彼女は自分自身をイシス神の生まれ変わりと称して『ネオ・イシス』として自身を信仰の対象とした。当時はね。しかしその後エジプト文明が衰退し、いわゆる西暦が始まってキリスト教というものが世の中に出てくるとクレオパトラを信仰する者は誰もいなくなった。神の強さとは『格』と『信者の数』というがどうしても関わってくる。新興宗教が信者の数を増やそうとするのは決して利益の為じゃない。神としての『格』を『信者の数』で上げようというのだね。そういう意味では神と妖怪はよく似ている。昭和の時代はトイレの花子さんが信じられていたのも和式の汲み取り式トイレだったからこそ、トイレの下に空間があってそこから手が出てくるとか人が引き込まれるという話になるのだね。洋式のトイレになったらもう無理さ、下水なんて細い場所に人がいることは論理的にあり得ないし、何より学校のトイレも清潔になった。こんな状態じゃトイレの花子さんの信者は集まらない。学校の七不思議から除外される。そうやって二宮金次郎の像が動くなんてのも消えた。そもそも学校に銅像を置くこと自体無くなってしまったからね。そうやって世の中に合わせて神も妖怪も姿を現しては消えていく。諸行無常だね。」

 

「とはいえ、これからどうするの? 少なくともペインちゃんはもうポセイドンと契約しちゃってるし。」

 

 ルカはこれからの心配をする。結局この先の行動指針が何も決定していないためである。

 

「またみんなバラバラになるのは嫌だなぁ。」

 

 ハナはそんな感想を漏らす。

 その言葉を受けてシゲは少し考える。神々との契約を個々人に任せても良いものか。

 ポセイドンとの戦いでさえ、全員の全力を投入せねば認められることはなかった。

 澄狐は心配することなく個人でも神との契約を行えそうな気はする。それこそ、勝利の女神であるニケや力の神クラトス。はたまた天手力男神(アメノタヂカラヲ)との契約もできそうな気はする。

 そういう意味では俊也も心配はしていない。知恵と戦略の女神であるアテナ、学問と事業・障害除去の神であるガネーシャなんかには好かれる気がする。

 ステファはどうであろうか、愛の女神を蹴飛ばして他スキルに今から移行することが可能だろうか。

 回復役というのはなかなか因果なもので、スキルセットを変更しろというのは難しい。

 だが一方で、新スキルさえ手に入ってしまえば成長が一番早いのも回復役である。回復役が不必要とされるMMORPGは存在しないためである。

 誠はどうであろうか、一番に思いつくのは武神の建御雷之男神《タケミカヅチ》である。草薙剣で有名な須佐之男命《スサノオノミコト》も思いつく。

 ここまで考えてシゲはふと気づく。自分の知識は偏っていると。

 日本神話であればある程度の知識はある。インド神話についても一時期三つ目の漫画の影響でハマっていたため、少なくとも神々の名前は知っている。

 一方でギリシャ神話は星座の関係しか知識がないし、北欧神話については知識がほとんどない。

 

「シゲ? シゲ?」

 

「ん? あぁ……。そうだな。いや、そうでもないか。」

 

「まてまてまてまて、おいおいおいおい。シゲ、何か思うところがあるんじゃないのか?」

 

 シゲの変化を目ざとく見つけるのは誠である。

 シゲはふうと一息ついて、話を始める。

 

「まず、正直に言って俺は別に天才じゃない。俺なんかより俊也の方が天才に近い。」

 

「いや、そんなことは……。」

 

 俊也が話を止めようとするが、シゲはそれを手で制して続ける。

 

「要は脳のリソースの使い方だ。俺は基本的に知識に偏っている。それはひとえにただ、本を読むことが好きだからだ。本は知識を蓄えるのに最適だし、本の中を疑似体験できるからだ。脳生ができてから本よりもリアリティのある追体験が出来るようになったが、やはり活字を読み頭の中で想像し、脳を活性化することでしか知識というのは得られないと思っている。だから俺はあくまでも知識を持つ者でしかない。天才ではないんだよ。」

 

「まぁ、知識に偏ってるっていうか……INTに人生全振りしているってのは昔から知ってる。」

 

「まぁ今更だな。」

 

「その上で言うと、知識が足りない。ギリシャ神話と北欧神話の。マイナーな神々についての知識が足りない。このままではどの神を選択していいのかがわからない。」

 

「日本神話で統一しちゃえば?」

 

「そうもいかんだろう。少なくともポセイドンがいたのだからハーデスやゼウスは存在しているものと考えられる。神の『格』としては日本神話の神々より上だ。」

 

 そんな中、カランと音を立ててゴシックロリータの扉が開かれる。

 

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