089 宝島~ブレドウィナー⑫~
ロケットの様に多段に仲間達の技を受けて加速したペイン。
更にポセイドンのバリアに対してランスを突き立ててからも、連続で仲間達からのスキルで一点突破の超加速を得る。
こうなると耐えきれないのはペインではなく、背中にとりついた玄武のルナである。
パァンと弾けるような音と共にルナは玄武の姿を解き、そのまま地面へと倒れ込む。
これ以上の加速は望めない。そう判断したペインはじりっ、じりっと右腕で抱えたランスを前に出していく。
本当にたった一点、ペインのランスの先にあるポセイドンのバリアがじわじわとひび割れ広がっていく。
「いけっ!」「行くのじゃ!」「いっけー!」「行って!」「行けよ!」「いけるかっ?」
仲間たちの声に背中を押される様に、ペインはランスを突き出す。
そして龍化しているルカが大きく一鳴きすると、ポセイドンのバリアは音もなく崩れた。
そしてその勢いのままペインのランスはポセイドンへと向かう。
しかしポセイドンは俯いたまま、ペインのランスの先に右の人差し指一本を当てるだけでその勢いを全て殺す。
人差し指を少し動かしただけで、ルカとペインは吹っ飛ばされる。
ポセイドンは少しだけ顔御上げると、指先を見てふっと息を吹きかける。
「ふむ……虫けらにしてはやるものだな。」
そしてポセイドンはようやく8人の姿を視界に入れる。
それまではただ俯いたまま、まるで床に向かってしゃべっているかのようでもあった。
それが一転し、神が初めて人を認めた瞬間である。
「どうした虫けら。もう終わりか?」
そう言われても、誰一人ポセイドンへの攻撃を行おうとしない。
皆待っている、GOかNOGOか。全ての判断をシゲに委ねて待っている。
シゲがGOといえば、誰が相手でも怯まずに突っ込む覚悟はできている。
逆にシゲは探っている。西洋の神は殺せない。認められるか否か、それがあるだけだからである。
「もう一度聞く、もう終わりか?」
その声を聞いた瞬間、シゲは判断を下す。
「GOだ!」
その声と共に一斉に誠、俊也、澄狐、ハナの4人は武器を構えて突っ込む。
ステファは補助魔法を唱えて攻撃陣4人へのバフをかける。ペインとルカは少し遅れるも、ルカに騎乗しなおしてポセイドンへとランスを携えて突っ込む。
「ウィンドアロー!」
誰よりも最速で敵へと攻撃を当てられるシゲは基礎魔法で先制攻撃を行う。
それに続いて澄狐は全力の掌底をポセイドンの顎めがけて打ち抜く。
ポセイドンの顎が上がり、俊也は短刀で何度もポセイドンの腹部めがけて刃を突く。
そこにハナは何度も両手に持ったシャムシールで切りつける。
誠も大剣を振り上げて、全力の一刀を袈裟切りに浴びせる。
最後に、ルカに騎乗したペインがランスを持ってポセイドンへと突っ込む。
ポセイドンはペインのランスの先端を握ると、少し力を加えてランスの先端をいともたやすく折ってしまう。
折られたランスは武器の破壊と判定され、ペインの腕の中で光の粒となって消滅する。
「ふむ。この程度か。」
ポセイドンはポイと折ったランスの先端を捨てる。
「お前たちは|まだ女神の加護を受けていない《・・・・・・・・・・・・・・》のか。」
「まだ、だと……?」
ペインがポセイドンへと問いかける。
「ふむ。どうやらお前たちは何も知らないらしいな。つまらん。やはり殺すか。」
ポセイドンは左の手のひらをかざすだけで、衝撃波が広がり全員を吹っ飛ばす。
シゲは衝撃波を受けると即死するため、ルナに蘇生薬を持たせて空中高い位置でホバリングさせていた。
吹っ飛ばされるとほぼ同時にルナは上空から蘇生薬を落としてシゲを蘇生させる。
ステファは防御魔法で耐えながらも、仲間たちの状況を見ている。
特にフォローしなければならないのはシゲ、ルカ、ハナの3名である。
シゲはレベルが低いためHP自体が多くなく、ルカは一蓮托生のスキルによりHPが1しかない。
そしてハナは攻撃も補助もできるという微妙な立ち位置のせいで回避を上手く使えねば即死の危険性がある。
ハナも流石にその辺は自覚があるようで、防御姿勢をすることで耐え抜く。
ステファはルカに対してリザレクションをかけて蘇生させる。
「弱い。弱すぎる。女神の使者ではないようだ。なぜこんな脆弱な者たちがここまで来れたのだ。」
ポセイドンは誰に問うでもなく、そう呟く。
「女神について……教えてくれ……。」
そういってシゲは右手に持っていた杖を離し、両手を挙げて降参するようなポーズをとる。
「何も知らずにここに来たのか?」
「俺達は、古本屋で見つけた地図に従ってここに来ただけだ。宝の地図と聞いてな。」
「盗掘者の類か。脆弱な者にしては頭はキレるようだ。」
「否定はしない。貴方に認められれば良いかと思っていた。」
するとポセイドンは高笑いをする。
「ハハハハハハハハハッ。我のバリアを破る程度で認められるとでも思っていたのか。愚かだな。」
シゲは肩をすくめて、おどけて見せる。
「見所があったのは、唯一そこの騎士だけだな。それ以外はダメだ。」
「俺を認めると?」
そういって立ち上がり、ポセイドンへとペインは一人歩き出す。
「盗掘者の中でも悪くない。お前だけは認めてやろう。」
「そりゃどーも。で、なんの恩恵が?」
「女神の殺し方だ。」
その一言を聞き、一同に戦慄が走る。
「この世界には『神』と称される者が何人もいる。そしてその一方で人間はなぜか『女神』からの寵愛を受け。世界は女神が作った物だと思っている。」
「その認識が間違いだと?」
シゲの話を事前に聞いていたペインは、その認識そのものが間違いだというポセイドンに対し聞き返す。
「大いなる間違いだ。この世界は我々『神』が作った。しかし後から来た『女神』は『人間』を作り刺客として『神』へと送り込んでくる。愚かな人間は『女神の力』があれば『神』に勝てると思っているのだ。」
「どうすればいい?」
「『神』を称えよ。力を示せ。」
「他の『神』はどこに?」
「それは自分で探すことだな。さて、お喋りも飽きてきたところだ。お前には我の力を少しだけ貸そう。」
そういうとポセイドンは右手に構えていた槍をランスへと変形させ、ペインの眼前へと出す。
ペインは跪き、畏まった形でランスを受け取る。
「初めからそのように従っていればいいものを。」
ペインはポセイドンから距離を取り、ランスを掲げて眺める。
「これが……神の武器……。」
ペインがランスを掲げた姿を認めると、ポセイドンは姿を消し声だけが響く。
「暫くぶりに起きてしまった。また力試しに来い。ここは暇なのでな。」
こうして、謎は謎を呼び、一連の宝島探索は失敗とも成功ともどちらにもつかない結果となり幕を閉じた。




