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090 宝島~終わりと始まり~

「終わった……の……?」

 

 腰をぺたんと床に落としてハナが誰にでもなくそう問いかける。

 

「これで終わってなければ困る。」

 

 そういうのは誠である。

 各々は疲れ切って床に座り込む。

 そんな中、シゲだけが難しい顔をして考え込んでいる。

 

 そんな中、世界中に鐘の音が鳴り響く。

 宝島クエストを開始した時は存在しなかったのに、今になって鳴り響く。

 

 ゴーン、ゴーン、ゴーン。

 

『世界に変革が訪れました。繰り返します、世界に変革が訪れました。この世界に住む者すべてに新たなステータスが付与されます。』

 

「はいはい。もう何が追加されても驚かないよ。」

 

 ステファは投げやりに答える。

 

『新ステータスは善や悪といった単純なステータスではありません。これは世界の根源となる、私達7女神に従うか否かというステータスです。COSMOS(秩序)は女神の信奉者として世界に祝福されます、一方で私たち女神に対して弓引くような方々はCHAOS(混沌)のパラメータが上がります。使用する魔法、武器、防具、街での人々の交流、買い物。全てにおいて制限が設けられます。具体的な例をあげましょう。COSMOSの回復術師がヒールをCOSMOSの戦士にかけた場合、100回復するとします。それがCHAOSの戦士にかけた場合50まで回復量が減衰します。COSMOSの街で1個100円のポーションをCOSMOSの人が購入すると70円、どちらかに傾いていないNOMALな人は100円、CHAOSの人は150円でしか買えません。』

 

「こりゃ……まずいんでないか……。」

 

 俊也が呟く。

 

『また、このステータスは自分自身でしか確認できません。他人が鑑定スキルを用いても確認することはできません。それでは皆さん、私達女神への変わらぬ信仰を心がけてください。私達7女神はいつでもあなたの傍におります。』

 

 その場にいた全員が、急いで自分のステータスを開いて確認する。

 そしてそれぞれの顔色で、誰がどこに所属しているのかがわかる。

 

「俺はNOMALだ。」

 

 堰を切って自分のステータスを開かしたのは誠である。

 

「俺もだ。」

 

 俊也が続いて答える。

 

「ボクはCOSMOS。」

 

 ステファは愛の女神の加護を受けているので妥当な話である。

 

「ワシはCHAOSに寄ってるな。少しだけだが。」

 

 澄狐は完全ではないがCHAOSに寄っているという。

 

「私はダメだね、完全にCHAOS。白虎を使いすぎたかな。」

 

 ハナは完全にCHAOSとなっているようである。白虎は四神と呼ばれるだけあって神である。

 7女神以外の神の力を用いるという事は、女神の意向に従わないと判断されているのであろう。

 

「俺はポセイドンからランスを下賜されたからな。当然CHAOSだ。」

 

 ペインは事も無げにそう言い放つ。

 

「私は意外とNOMALだったね。」

 

 ルカは特別なことはしていないため、NOMALだったようである。

 

「わかってはいたが、CHAOSだ。」

 

 最後に口を開くのはシゲである。

 普通の基礎魔法や一般魔法であれば問題はなかったのであろうが、陰陽師スキルが原因なのは明らかだった。

 

「これってあれだよね? LAWとCHAOSであの有名な……。」

 

「まぁそうだろうな。パソコンゲームといえば避けて通ることは出来ん。」

 

「それよりも、これはどういう目的なんだ? 現在の推測でいいから話してくれよ。」

 

 耐えかねた誠がシゲに問いかける。

 

「うん……。そうだね。あくまでも推察だ。これが全てだとは思わないでくれ。」

 

「それで構わない。訳が分からないまま巻き込まれるのはまっぴらだ。俺達はこの先100年はこの世界で生きるんだぞ。」

 

「まず、各街についてだが、今後『COSMOS』『NOMAL』『CHAOS』の三種類に分けられると想定される。そこにいるNPCも含めてそういう街になっていると思われる。先日導入された秋葉原なんかは典型的に『CHAOS』の街だろうな。」

 

「それはなんとなくわかる。」

 

「その上で、だ。日本古来の神々、所謂『八百万の神』と西洋における神々と7女神の『神々の戦争《ラグナロク》』でもやろうとしてるんじゃないのかな。」

 

「ラグナロクとくるのか……。」

 

「7女神と対になる存在が存在するってこと?」

 

「神々の世界は広い。八百万の神だけでもすごい数がいる。そこに北欧神話、ヒンドゥー教の神々なんかを合わせるとすごい数になる。選択が必要になるだろうな。」

 

「ポセイドンの強さとしてはどのくらいなんだ?」

 

「ランクで言うとほぼ最上位。クロノスとレアの子で、ゼウス(天空)やハデス(冥界)の兄弟といえばわかるかな。」

 

「ポセイドンって結構な優良血統なんだね。」

 

「海の様に感情の起伏が激しいと言われているが、実力は折り紙付きた。」

 

「強かったもんなぁ」

 

 誠のその一言で、一同はつい先ほどまでの激闘を思い出す。

 紙一重。本当ならばポセイドンに触れることすらできずに終わった可能性すらある。

 ポセイドンが各個撃破を目論んでいれば、それはあっさりと達成できたことも容易に想像がつく。

 それらすべてを潜り抜けて今がある。しかしその先に待っていたのは仲間割れをも引き起こしかねない新ステータスの実装なのである。

 

「どのくらいの割合でCHAOSは存在すると思う?」

 

「CHAOS所属のプレイヤーはほとんどいないだろうな。普通にLAOで生きていくには、女神の加護の方がどうしても強い。」

 

「じゃあNOMALは?」

 

「職人系はNOMALの可能性が高い、鍛冶屋、薬師、錬金術師……。このあたりは7女神の範囲から外れる。」

 

「あー。確かに。でもなんか、この7女神って変よね。」

 

 ハナが唐突に7女神を否定し始める。

 

「何が変なんだ?」

 

 誠がハナに問いかける。

 

「普通はさ、火、土、水、風、金、光、闇といった7属性に女神がいて、例えば鍛冶師なんて火の女神の加護とか受けてるべきじゃない? それに対してLAOの世界の女神って、なんか偏ってるんだよね。スキルに特化というか、基礎スキルにべったりというか。このシナリオを描いている人の正体がどうにも見えない。私がライターだったらこんな変なシナリオにはしない。もっと王道というか、ありきたりだけど最大公約数の人間が楽しめるようなシナリオにする。」

 

 誠はハナの説明を聞き、うんうんと頷いて納得すると口を開く。

 

「一人のシナリオライターが一つのイベントを描いているとするなれば矛盾は生まれる。しかしこうもまぁ、俺達だけLAOという世界のシステムに翻弄されるのはなんでなんだろうな。」

 

「これは……仮定だが。俺の想定の範囲を出ない。その上で聴いてくれ。」

 

 シゲが改まって皆に伝える。

 

「このシナリオ、このLAOという世界を作った張本人は多分『神様』が大嫌いなんだと思う。」

 

 その言葉を聞いてなぜか一同納得するのだった。

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