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087 宝島~ブレドウィナー⑪~

「で、策とはなんじゃ?」

 

「そうだね。レールガン……いや、リニア式……、多段ロケットとでも言えばいいのかな。」

 

「あー。なるほど。」

 

 それだけで俊也は察しが付く。

 

「ベタな方法だけどね。」

 

「鉄砲玉は誰が?」

 

「今回はペインかな。スキル的にもペインがいいと思う。」

 

「スキル的にもって?」

 

 自分のスキルを全て明かすという事はなかなかない。有名なスキルであれば習得しているであろうことは想像できるし、実践の中で使用しているスキルであれば察しはつく。しかし『多段ロケット』に有効なスキルというのは想像がつかない。

 そんな中ペインが口を開く。

 

「一蓮托生。」

 

「そう、それが欲しい。」

 

「一蓮托生? どんなスキルなんだ?」

 

 珍しくペインが解説を始める。

 

「元々『基礎騎士』は回復術師とのパーティを必須とするものだ。その中で『一蓮托生』というスキルがある。これは回復術師のHPを1だけ残して自分のHPとすることができる。例えば俺のHPが100、ルカのHPが50だとすると、一蓮托生を使用することで俺のHPは149になりルカのHPが1になる。」

 

「危ないスキルだな……。」

 

「騎士は回復術師を守ることが絶対だからね。絶対的な盾にならなきゃならない。」

 

「今回のポセイドンは倒せる相手とは思っていない。多分、あの鉄壁の防御を破ることが条件だと想定した。そこで多段ロケットの様にみんなの全力攻撃スキルをペインの背中にぶち込んでもらう。」

 

「それ、どうやって耐えるの? 回復が追い付くとは思えない。」

 

「そこで、ルナを玄武にしてペインの背中に張り付ける。ルカは衝撃ダメージの入るペインの回復を担当、ステファはルナの回復を担当。あとは素早くない順に全力攻撃を仕掛けてペインを吹っ飛ばす。」

 

 ペインはそこでこれから行われることを想像してため息をつく。

 一蓮托生のスキルの使いどころは本当に難しく、例えば壁や崖を背にして絶対にルカを守れる条件下でなければ使えない。

 平原のような開けた場所で使えば、モンスターに囲まれた場合ルカを守り切れるとは限らない。

 逆に森の中のような視界の悪い場所では、隠れたモンスターに気づかなければ守り切れない。

 タウントのスキルでいくらターゲットを自分自身に集めても、数限りがある。このスキルレベルを上げるのに、何度ルカを死なせてしまったかわからない。

 それほどこのスキルのレベルを上げることには苦労したし、手持ちのスキルの中でも最も使用を躊躇するスキルである。

 騎士としての矜持、守るべき者を守れなかった焦燥感と後悔がいつもついて回る。いくらゲームといえど、自分の責任を感じてしまう。

 それはペインが元々リアルでは医者だったことも起因しているのかもしれない。

 外科医師として、トップクラスの技術をもってしても救えない命はあったし、命の重さというのは痛感して生きてきた。 

 老人、子供、少年少女、青年。どんな年代であっても命を扱う身として全力を尽くす。誰もを平等に。

 しかし、ペインにも睡眠は必須だし、プライベートも存在する。休暇もとれば、旅行に行って羽根を伸ばすことだってあった。

 国内でも、国外でも旅行は楽しいものだった。しかしふと、思う。明日、病院に出勤した時に担当患者は全員生きているのだろうかと。

 その悪夢のような予想は、当たることもあれば外れることもあった。

 心はどんどん命の重さに対して麻痺していくのに対して、手術の技術だけは上がっていった。

 

 ペインはそんなことを思い出している間に、仲間たちの配置場所は決まってしまったようである。

 一番手前にいるのがシゲ、その前に誠、そしてハナと続いて澄狐、最後が俊也。

 その並びの右側にルカ、左側にはステファが陣取る。

 ここまで来るとペインはシゲの策を信じる以外に方法はない。

 カチャカチャと全身鎧の音を響かせて、シゲの前に立つ。

 

「盾はどうしたらいい?」

 

「盾は背中に背負えるならその方がいい。」

 

「オーケー。後は宜しく頼む。『一蓮托生!』」

 

 ペインはランスを掲げてスキルを使用すると背中に盾を背負い、右腕でしっかりとランスを抱え腰を落として構えをとる。

 ブーンという羽音が背中で止まる。

 シゲは懐から札を出してルナの背中へと張り付けると五芒星を描く。

 

「元柱固具、八隅八気、五陽五神、陽動二衝厳神、害気を攘払し、四柱神を鎮護し、五神開衢、悪鬼を逐い、奇動霊光四隅に衝徹し、元柱固具、安鎮を得んことを、慎みて五陽霊神に願い奉る 玄武!」

 

 ルナはペインの背中に収まる大きさの小さな玄武となり、その甲羅はきらりと光る。

 シゲは全員に目配せをすると、ペイン以外が頷く。

 

「言葉を紡ぎ、呪となりて、魔法となる。ウィンドストーム!」

 

 シゲは玄武の甲羅にぴたりと杖の先を当てて魔法を唱える。

 その加速度に、ペインは一瞬首が持っていかれそうになるがぐっとこらえる。

 続けざまに誠が玄武の甲羅をめがけて剣技を放つ。

 

「巻き打ち!」

 

 誠は全身のばねを使ってぐるりと一回転しながら剣の腹で玄武を撃ち抜く。

 続いてハナは左手に白虎の力を乗せて玄武を撃ち抜く。

 

「白虎電雷!」

 

 ペインの身体は一層の加速を受けてポセイドンへと向かう。

 されに澄狐が青龍の力の乗った掌底で追い打ちをかける。

 

「青龍掌!」

 

 ペインは身体を丸め、出来る限りの空気抵抗を減らしながら最後の攻撃を待つ。

 俊也は武器を鞭へと持ち替えており、ペインの背中にある玄武に向かって的確な、強力な一打を加える。

 

「強打!」

 

 そしてルカとステファは唱えられるだけ高速に、且つ途切れなくとにかく回復に努める。

 

「ヒール!」「基礎ヒール!」「ヒール!」「基礎ヒール!」「ヒール!」「基礎ヒール!」「ヒール!」「基礎ヒール!」

 

 そうしてペインはポセイドンへと最高速のままランスを突きたてる。

 

「貫け!」

 

 ペインの持つランスがポセイドンのバリアに触れても吹き飛ばされるようなことはなく、バチバチと音をたてながら拮抗する。

 どちらも全く譲らない。ただ、ペインの加速力は徐々に減衰するのに対してポセイドンのバリアはまだまだ健在である。

 そう思った刹那、ピシッピシッとポセイドンのバリアにランスの先端を中心に細やかなヒビが入る。

 

 最初に動いたのは俊也である。

 玄武の甲羅めがけて武器を槍に持ち替えて連続で突きを放つ。

 続いて澄狐も再度掌底を繰り出す。ハナは何度も玄武の甲羅へと連続で切りつける。

 誠は剣を構えて横一文字に払い抜ける。

 

 ポセイドンのバリアのヒビはだんだんと広がっていく。

 シゲは再び超近距離からウィンドストームを放つ。回復役のステファとルカも限界が近い。

 だが、もう少し。あと少しが足りない。

 

 そんな中、ルカはドラゴンへと姿を変える。

 ステファは慌てて基礎ヒールからワイドヒールへと切り替える。

 スキルのクールタイムは伸びるものの致し方ないと判断した結果だった。

 

 ルカは上空へと一度飛び立ち急降下をすると、地面すれすれの高さでちょうど首がペインの股下に入るように滑空する。

 ルカの首がペインの股下に入り、ペインに最後の勢いがつけられる。

 

「なんで来た!」

 

 バリアとペインのランスが激しく衝突して光を放つ中、ペインは叫ぶように問う。

 

「だって一蓮托生だもの。」

 

 ルカはそう短く答えた。

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