100 特別回~女だけの昔話~
「今日は何もしない~。」
そういっていつものゴシックロリータでだらけるのはハナである。
「ワシも今日は休日じゃ。昼から酒を飲ませてもらう。」
そういって徳利からお猪口へ日本酒を注ぐのは澄狐である。
「うちの店に来る限り、ボクは休みにならないのだけど?」
「AI店員を使えばよかろう。ケチケチするでない。」
「そうなんだけどさ。なんかボクの店で他人が働くのがなんだかなって。」
そう言いながらもステファはコンソールを開いてAI店員を呼び出し、エプロンを外してハナ、澄狐と同じテーブルにつく。
「そういう日があってもいいじゃない~?」
「完全にだらけきっとるな。」
「だって忙しすぎだよね。土曜も日曜もないじゃん。」
「元々MMOやってた時代だって土曜も日曜もなかったじゃろ。」
「でもさ、ほら。男共が絶対に見る番組あったじゃん? なんちゃらプロデュースだっけ。」
「あー。必ず手を止める時間があったのう。」
「あれ? 笑う犬のなんちゃらじゃなかった?」
「なんか、シゲと俊也が熱心に見てた記憶はあるのう。」
「あとなんだっけ。シゲが他に見てた番組。」
「野球中継と、どうでしょうは見てるって言ってた気がするのう。」
「あの時代にちゃんと『どうでしょう』を見てるのが道民だよね。全国放送されるようになってから見たけどあれは笑うもん。」
「思えばあの頃はテレビも面白かったな。」
「沖縄はなんかテレビの放送局少なかったから、そんなにテレビって感じじゃないのよね。」
「確かに沖縄はそうじゃな。」
「じゃあファイル共有ソフトとか?」
「あの頃は違法じゃなかったからね。合法でもなかったが。」
「音楽データはどうかなとはさすがに思ったけど、テレビ番組が少ない沖縄にとっては娯楽だったよ。」
「ボク、あの頃AIR-EDGE使ってラップトップパソコンだったから、ファイル共有ソフト使ってないのだよね。」
「あの頃のラップトップじゃグラボも搭載できんじゃろて。それはすごいな。ワシはADSLじゃったぞ。」
「沖縄はISDNが限界だったなぁ。ADSLは羨ましかったもん。ってか、ラップトップって久々に聞いた。」
「薄く、軽く、高性能になっていったがパソコンが楽しかった時代はあそこじゃな。」
「何でもできる人は何でもできたしね。一般人との技術差、知識差みたいなものがあったよね。」
「2ちゃんねるも面白かったしのう。うちら全員『偉人廃人スレ』で名前が出とった時は笑い転げたわ。」
「そういえばさ、あのMMOって『二つ名』がつけれたじゃん?」
「シゲの二つ名は意味わからんかったな。」
「あれは声優さんの楽曲の名前らしいよ。ボクも詳しくは知らないけど。」
「でも『愛と勇気の健忘症』ってつける? アンパンに喧嘩売りすぎでしょ。」
「そういえば、アンパンはそれだけが友達じゃったな。」
「そういう澄ちゃんだって『愛の拳』ってつけてたじゃん。」
「若かれし頃の失態じゃ……。」
「ボクは面倒だったからあえてつけなかった。」
「そうやって常識人のふりする~。」
「そういうハナの二つ名も『花満開』じゃったじゃろうて。あれは……いや、いうまい。やめておこう。」
「なになに? 花満開ってなんか別の意味があるの?」
「いや……うん。パチンコ台に同じ名前の台がな……。」
「足の悪い私に、パチンコ台の名前なんて知るわけないじゃん。」
「そう思ったのだがな。最初はそんなこと知らんかったじゃろ。てっきり『やる子』なのかなと。」
「第一印象最悪じゃん。」
「しかしそう考えるとシゲは異常じゃな。野球にパソコンにゲームに声優にアニメ、漫画、小説じゃろ。」
「パチンコ、パチスロ、競馬に競輪、競艇まで話してたよね。」
「時間の使い方をどうしているのか全く想像つかん。同じ24時間しかない筈なんじゃが。」
「シゲに面白い小説何って聞いたら死ぬほどタイトル言われて笑った。」
「あやつ、エロゲもやっとったじゃろ。」
「自称『エロゲソムリエ』だったね。」
「でも、本当にエロゲでも面白いものがあるんだなって。やってみてわかった。」
「お主もやったのか?」
「澄ちゃんもやったの?」
「シュミクラムのでてくるやつじゃろ? あまりに薦めてくるからやってやったわい。あれは確かに面白い。」
「ね、エロいらないくらいストーリーもゲーム性も作り込まれててびっくりした。」
「なんだっけ、エロゲの有効活用ですごい馬鹿な提案したんだよね。」
「へ?」
「なんじゃそれ?」
「ボクしか聞いてないのかな。次世代の液晶画面で液晶のタッチって1か所とかが最初限界だったんだよね。」
「タッチパネルの話か。」
「うん。それでなんかシゲの会社に20か所同時タッチ可能な次世代液晶の有効活用方法の相談が来たって。」
「ほう。それがエロゲとどうつながるのじゃ?」
「だから、画面に向かって右手、左手、そして顔面。」
ステファが右手、左手、そして最後に顔を突き出して見せる。
その姿をシゲがやっていたかと思うと、可笑しくてハナも澄狐も笑い転げる。
「ばっかじゃないの。頭悪すぎるでしょ。」
「20か所の同時タッチの次世代液晶を作ったはいいが使い道がないという方も馬鹿じゃな。」
「あー。くっだらない。面白過ぎる。」
「ってか液晶にいくらタッチで来たところで、立体にならないんだから静電気でバチバチするだけでしょ。」
「異性に対してのヌクモリティは皆無じゃな。」
「ヌクモリティ……ダメだ。久々に聞きすぎてお腹痛い。」
「ぬるぽ」
「ガッ」
そういって三人は笑い転げる。
「あーだめだ。世の中バカばっかりだ。」
「スマホの時代ってそう考えると、どこかつまらなかったね。」
「正確にはAIからかな。知識……いや違うな。雑学が楽しくなくなった。」
「使わざるを得ないんだけどさ。使うんだけどさ。なんか違うなってずっと思ってた。」
「あれじゃろ、鉄腕アトムを作りたくて工学を学んだ者と、ガンダムを作りたくて工学を学んだ者、初音ミクを作りたくて工学を学んだ者。これらの意見が一致するわけないんじゃ。世代が変われば考え方も生活様式も変わる。」
「LAOも変わるのかな。」
「地球の長い寿命の中では一瞬の出来事じゃろう。」
「残るものも……きっとあるさ。」
「ワシらが歴史の教科書に残ることはなかろう。人生なんてそんなもんじゃ。だからハナはさっさとシゲにアダルトMODを入れさせるんじゃな。」
「何その余裕。」
「アダルトMODは悩ましいよね。」
「既成事実は大事じゃぞ。」
「ところで今日、男共はどこいったの?」
「釣りじゃと聞いとる。」
「一体何を釣りに行ったんだか。」
「目がダイアモンドのレア魚がいるんだと噂を聞いて、鼻を膨らまして語っておった。」
「ダイアなんて何するの?」
「シゲは錬金がどうのこうのと。」
「アダルトMODは遠そう……。」
ハナは再びテーブルにぺたんと上半身を投げ出す。
そんな話をしながら女三人はいつまでもゴシックロリータで語り続けるのだった。




