第9話:火の海に消えたお客様感謝デー
銃口を向け合った三機の量産型MSは、俺のハッキングによって引き金を引かされた。
至近距離からの容赦のない一斉射撃。重機関砲の火線が交錯し、カイゼル・シェルの誇る鉄塊どもは、自らの火力によって互いの装甲を無惨に引き裂き、爆発炎上した。
吹き荒れる爆風。しかし、俺が展開した不可視の防壁により、俺とJUSCOには爆煙の煤一筋すら届かない。
「すごいいい……! ゼロ、本当に強いんだね……!」
JUSCOが歓声をあげる。だが、俺の高性能センサーは、さらなる絶望の質量を感知していた。
上空を見上げる。崩落した天井の向こう、地下街の遥か天井(上層世界の底辺)に、これまでの量産機とは次元の違う巨大な魔力反応が蠢いていた。カイゼル・シェルの本隊――その空母級の超大型浮遊要塞が、ついにこの真上に達したのだ。
要塞の底面から、無数の光の粒子が放たれる。広域焦土化兵器による、無差別絨毯爆撃だ。
「チッ……徹底しているな」
降り注ぐ光の雨が、地下街を、そして俺たちの家である『JUSCO』の建物を容赦なく蹂躙していく。2階のフードコートが崩れ、1階の試食コーナーが炎に包まれる。
「あ、ああ……私のおうちが、JUSCOが燃えちゃう……!」
涙を流すJUSCO。俺は悔念に歯噛みした。いかに俺のスペックが規格外だろうと、この初期型の出力では、街全体に降り注ぐすべての熱量を相殺することは叶わない。
激しい炎と煙が視界を遮る。その一瞬の混沌を、上層世界は見逃さなかった。
炎を切り裂いて突入してきた漆黒の強襲MSが、俺の死角から高速で接近し、その巨大なマニピュレーターでJUSCOの身体を掠め取るように捕らえたのだ。
「ゼロッーーー!!」
「JUSCOッ!!」
火の海と化したフードコートに、彼女の悲鳴が虚しく響き渡る。俺のブリキの手は、あと数センチメートルのところで、彼女の衣服に届かなかった。




