第8話:共鳴(シンクロ)――たまごの回路が、冷たい鉄をハッキングする
ドゴォォォン!!
激しい爆鳴とともに、JUSCOの正面玄関が吹き飛んだ。
侵入してきたのは三機の量産型MS。その鉄の巨躯から放たれた実弾兵器が、かつての化粧品売り場やサービスカウンターを無慈悲に粉砕していく。
「見つけたぞ、遺物のたまご。大人しく鹵獲されろ」
外部スピーカーから響く、カイゼル・シェル兵士の傲慢な声。彼らは一斉に重機関砲の銃口を俺へと向けた。
「ゼロ、後ろにっ……!」
JUSCOが俺を庇おうと前に出ようとする。だが、その細い肩を俺の短いブリキの手が優しく制した。
「下がっていろと言ったはずだ、JUSCO。ここから先は、少々不快な電波が飛ぶのでな」
俺は一歩前へ踏み出し、己の殻に刻まれた旧文明の回路へ、ダイレクトに全電力を流し込んだ。
パキパキと青白いスパークがたまごの表面を走り、俺の網膜に、敵三機のOSのソースコードが文字通り「丸裸」で展開される。
ふむ。カイゼル・シェルの最新鋭OSとやらは、随分と杜撰なセキュリティだな。俺の旧式回路からすれば、鍵の開いた裏口のようなものだ。
「共鳴を開始する」
ピポパポパパパパパッ!!
俺の口から、凄まじい速度の変調電子音が放たれた。それはJUSCOの空間を満たす不可視の電波となり、押し寄せる鉄塊たちのシステムへ侵入する。
『な、なんだ!? モニターがバグる……! 操縦桿が効かない、全システムが強制書き換え(ハッキング)されていく……!?』
兵士たちの悲鳴。
完全にコントロールを奪われた三機の量産型MSは、ピタリと動きを止め、ガガガと不自然にモノアイを明滅させた。そして次の瞬間、主である兵士たちの意思を無視し、その銃口を互いの頭部へと向け合ったのである。




