第10話:JUSCO拉致。上層世界「カイゼル・シェル」の黒い陰謀
漆黒の強襲MSは、JUSCOをその鉄の剛腕に拘束したまま、垂直噴射の轟音とともに崩落した天井の向こうへ急上昇していく。
「放せっ、放してゼロ……!!」
遠ざかるJUSCOの叫び。それを追おうとした俺の前に、さらなる爆撃の炎が壁となって立ちはだかる。炎が揺らめき、かつて彼女と泥のハンバーグを食べた試食コーナーのワゴンが、無残に崩壊していくのが見えた。
「――おのれ、鉄屑どもが」
俺のコア(動力炉)が、かつてない怒りで臨界点を超えて鳴動する。たまご型のボディから放たれた衝撃波が、周囲の火災を一瞬で吹き飛ばした。だが、網膜のレーダーが捉えたJUSCOの生体反応は、すでに地下街の遥か上空――雲の上の上層世界「カイゼル・シェル」の領地へと到達していた。
ガガガ……と、半壊した敵の通信残骸から、傍受した音声データが流れ出す。
『目標「JUSCO」の確保完了。これより上層研究室へ運ぶ。遺物のたまごを完全起動させるための「鍵」として、あの娘の生体コードを解析する――』
ふむ。鍵、だと?
カイゼル・シェルの浅薄な技術者どもは、俺のシステムを無理やり覚醒させるために、JUSCOの命を利用する算段らしい。実にお笑い草だ。俺のマスターキー(最高権限)を握る者が誰であるか、その身を以て知ることになるだろう。
見上げる空は暗く、遠い。
二頭身の、全高わずか1メートルの初期型である今の俺には、上層へ直登するほどの推力はない。
「待っていろ、JUSCO」
俺は拳を固く握りしめ、冷徹に電子音を響かせた。
たとえこのブリキの四肢が千切れ飛ぼうとも、世界の天井をブチ抜き、貴様を必ず奪還してみせる。




