第62話:星塵の咆哮
――キチキチキチキチキチッ!!!
蒼き【絶対領域・蒼天世界】に阻まれ、空中で爆散した『外宇宙レギオン』の死骸――その赤黒い金属細胞の破片が、燃え盛る雨となってゼロの周囲に降り注ぐ。
だが、敵の本体は上空の流星群だけではなかった。
地上に激突し、白磁のビルを侵食したレギオンの先遣隊が、周囲の鉄骨や瓦礫を急速に巻き込みながら巨大化を始めていたのだ。それらは寄り集まり、やがて全高20メートルを超える、数多の牙と這行脚を持つ「蜘蛛型の機械獣」へと姿を変えていく。
『ギ、ギギギギギギガガガガッ!!!』
三体の巨大レギオン獣が、鋭い金属の咆哮をあげ、満身創痍のゼロへと同時に躍りかかった。その狙いはただ一つ、マスター・コードの心臓部だ。
「させない……っ!」
JUSCOの脳内で、ゼロの四肢の駆動ログが爆発的に跳ね上がる。五感を失った彼女にとって、今の18メートルの鋼鉄の身体こそが、唯一無二の「自分の肉体」だった。
「お父さんが、言うてたもん……。どんなクズ鉄だって、手のひらでちゃんと話を聞けば、極上のパーツに化けてくれるって……!」
JUSCOの意識が、さらに深く、深くゼロの魔力炉の奥底へと沈んでいく。
彼女の右肩から胸にかけて広がっていた蒼鉛の結晶は、いまや首元にまで達し、その細い喉を美しく、残酷に侵食しつつあった。すでに彼女の声は生身のものではなく、ゼロの電子音声と完全に重なり合った「機械の声」と化している。
『駆動、フェーズ6――【創世のスパナ】ッ!!!』
ガガガガガガガッ!!!
ゼロが右手を天へと掲げると、蒼天世界の領域内にあったすべての瓦礫、そして先ほど撃破したナイトメア・ゼニスの装甲破片すらもが猛烈な勢いで集束。全長30メートルに及ぶ「蒼き光の超巨型スパナ」がそのマニピュレーターに形成された。
ドガシィィィンッ!!!
一閃。ゼロが放った横一文字のフルスイングが、襲いかかるレギオン獣の群れを正面からまとめて薙ぎ払った。凄まじい質量とエネルギーの激突。だが、ジャンク屋の真骨頂はここからだった。
「お前たちの歪んだバグを……ネジの一本まで、残さず直す!!」
『――【星天解体】、同時駆動ッ!!!』
バリバリバリバリバリバリッ!!!!!
蒼き巨大スパナが叩きつけられた瞬間、三体のレギオン獣の赤黒い肉体に蒼いグリッド線が走り、その分子結合が内側から強制解除されていく。宇宙の化け物たちは爆発する暇すら与えられず、ただの無害なバラバラの歯車や金属片へと「全解体」され、虚空へと崩れ落ちていった。
凄まじい突風が、夜空の黒煙を吹き飛ばす。
しかし、勝利の余韻に浸る間もなく、ゼロのメインモニターが捉えた宇宙の深淵――そこでは、さらに巨大な、星をも覆い尽くさんとする「レギオン・マザー」が、その巨大な眼を開こうとしていた。
次の更新は6/22(月)の7:00となります。




