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第61話:流星の群層

――ヒュロロロロロロ……ッ!!!

『ナイトメア・ゼニス』を解体し、偽りの青空(ホログラム・スカイ)が剥がれ落ちた黒い夜空から、無数の赤い光の尾が、まるで大雨のように降り注いできた。

それはロマンチックな流星群などではない。大気圏を突破し、摩擦熱で真っ赤に燃え上がりながら降下してくる、宇宙からの機械細胞生命体――『外宇宙レギオン』の先遣兵器(さきがけへいき)の群れだった。

カサカサと不気味な金属音を大気に響かせながら、尖った槍のような異形の形状をしたレギオンたちが、上層世界『カイゼル・シェル』の白磁の街へと次々に突き刺さっていく。

「うわああああっ! 逃げろ、建物の中に入れッ!!」

地上では、生き残ったカイゼル軍の兵士や地下世界の自警団が、種族の垣根を越えてパニックに陥り、右往左往していた。

レギオンが突き刺さった舗道からは、黒い泥のような「ナノ細胞」が染み出し、周囲の美しいビルをまたたく間に赤黒い錆色へと侵食していく。触れた機械をすべてハッキングし、自らの肉体へと変生させる恐怖の増殖。それこそが、100年前に旧文明を滅ぼした大崩壊の元凶だった。

『――防衛ログ、フェーズ5へ移行。敵性変異細胞「レギオン」の地球降下を確認』

『プロトタイプ・ZERO』のコックピットの中で、ゼロの電子音声が低く鳴り響いた。

「敵の……数が、多すぎるよ……」

JUSCOの意識は、すでにゼロの全天周モニターと直接脳内でリンクしていた。目の前の視界には、無数の赤いドット――数千、数万に及ぶレギオンの個体データが、暴力的なまでの情報量で流れ込んでくる。

彼女の肉体の結晶化はさらに進み、今や右胸から肩にかけて、美しいけれど冷たい蒼鉛の結晶が、皮膚の制服を突き破って静かに輝いていた。

「JUSCO、無理をするな! 演算を俺の機体にも回せ!」

FELIXが、ゼロの胸部に直結させた自機のコンソールを必死に叩く。

「これ以上マスター・コードと同調すれば、お前の脳が焼き切れる!」

「平気、だよ……お兄ちゃん。私には、みんなの『形』が見えるから……!」

JUSCOの網膜の暗闇に、レギオンに侵食されていく上層世界の構造線が、青いグリッドとなって映し出されていた。どれほど強大で、どれほど異質に見える宇宙の化け物であっても、その本質は「壊れた機械」と同じだ。

「ゼロ、魔力炉完全同調(エーテル・リンク)! 街のインフラごと、全部私に預けて!」

御意(アクセプト)、マスター。――我が絶対領域を全面展開する』

キィィィィィン――ッ!!!

ゼロの背中から放たれた蒼きエーテルの光波が、ドーム状の巨大な波紋となって『カイゼル・シェル』の全域へと広がっていった。

――【絶対領域・蒼天世界マスター・ドメイン・マキシマム】。

エレノアを打ち破ったあの絶対領域が、今度は地球を護る盾として広大な空を覆う。

ドバババババババッ!!!

上空から降り注ぐレギオンの槍が、街を包み込んだ蒼い光の盾に激突し、そのシステム権限によって次々と虚空で無力化され、爆散していく。レギオンの強力な分子ハッキングですら、世界最高位の管理者領域を突き破ることはできない。

「守るだけじゃ、終わらせない……!」

JUSCOは感覚のない両手を、見えないレバーへと伸ばした。

「全部直して、本当の空を取り戻すんだから!!」

蒼き巨神の足元から、地響きのような駆動音が鳴り響く。しかしその時、地上に突き刺さっていた先遣隊の残骸が、不気味に蠢き始めていた――。

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