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第51話:蒼き巨神、大地に立つ

――ズ、ズズズン……ッ!!!

『神聖ゼニス・コア』の最深部に、旧文明の冷たい金属が軋む重低音が鳴り響いた。

その中心に立っていたのは、数瞬前までの2メートルサイズの「等身大の相棒」ではない。

周囲のジャンクとナノマシンを強制吸収し、全高18メートルの巨大な鋼の身体へと変態を遂げた、蒼きオリジナルMS――『プロトタイプ・ZERO』。

背中から噴き出す蒼きエーテル光波の翼が、暗黒の地底世界を昼間のように白々と照らし出している。

「これが……ゼロの、本当の姿……?」

全天周モニターとなった球形コクピットのシートで、JUSCOは呆然と自らの両手を見つめた。彼女が息を呑むと、まるで機体そのものが呼吸を同期させるように、コンソールが淡く脈動する。

『そうだ、マスター。これが私本来の骨格(フレーム)だ。――さあ、涙を拭って前を見てくれ。まだ、終わってはいない』

脳内に直接響くゼロの音声は、以前よりも深く、圧倒的な力強さに満ちていた。

モニターの向こう。地盤沈下の爆炎の中から、凄惨(せいさん)な駆動音を立てて立ち上がる影があった。

片腕を失い、頭部装甲が砕けたFELIXの純白のMSだ。コックピット内のFELIXは、脳内ナノマシンの限界過負荷によって、激しい拒絶反応に苛まれ(さいなまれ)ながらも、ただ盲目的にJUSCOへとその残された右腕のビーム・サーベルを突き出してくる。

『バグ……排除……。システムの命令……障害を……消去する……ッ!!』

狂気じみた速度で突進してくる純白の機体。

かつてあれほど絶望的だった天上の最新鋭MSが、18メートルとなったゼロの視点からは、まるで小さく、哀れな人形のように見えた。

「お兄ちゃん、もうやめて!!」

JUSCOがコンソールを押し込む。

ドォォォォォン!!!

ゼロが右腕を軽く一閃しただけで、暴風のようなエーテル衝撃波が発生し、突っ込んできたFELIXの機体を正面から完全に叩き伏せた。光子の刃は虚空で霧散(むさん)し、純白のMSは地底の金属床を激しく転がり、壁面へと叩きつけられる。

『准将、何を無様な醜態を晒しているのですか!?』

大破した『白亜の粛清艦』の通信回線から、エレノアの激昂した声が響く。

『あり得ません、地下のクズ鉄どもが18メートル級の古代兵器を起動させるなど……! 全艦、残存砲門を開け! あの蒼い化け物を、今すぐ塵に還しなさい!』

生き残っていた数隻の粛清艦が、一斉にその巨大な主砲をゼロへと向け、最大出力の熱線ビームを撃ち放った。空間が歪むほどの破壊の光が、ゼロへと殺到する。

「ゼロっ!」

『フッ……案ずるな、マスター。我が「マスター・コード」の絶対防護障壁の前に、そのような焼き直しの光線など、ただのノイズに過ぎん』

キィィィィィン――。

ゼロが左手を掲げた瞬間、機体の前面に、幾何学模様を描く巨大な蒼い光の盾が展開された。

ドバババババッ!!! と激しい爆炎があがるが、粛清艦の集中砲火は、ゼロの障壁を1ミリメートルたりとも削ることすらできず、すべて外側へと虚しく弾け飛んでいく。

「嘘……そんな、ゼニスの最高火力が、全く通用しないなんて……!?」

モニター越しに見えるエレノアの顔が、恐怖で真っ白に染まっていく。

「私たちの家を、街をめちゃくちゃにして……今度は全部消そうとした。――あんたたちの勝手なルールなんて、私たちが全部ぶっ壊す!」

JUSCOの怒りに呼応するように、ゼロのメインモニターが、爛々とした激しい蒼の輝きを放った。

『これより駆動、フェーズ4へ移行。――偽りの箱庭カイゼル・シェルを撃砕する』

蒼き巨神が地底の大地を蹴り、天上のユートピアへと向かってその翼を広げた。地下世界の反撃が、今、ここから始まる。

お待たせしました。いよいよ第四章の始まりです。

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