第5話:お客様呼び出し、エッグ・ゼロ様。迷子の主人がお待ちです!
量産型MSの巨大な鋼鉄の腕が、俺の頭上を虚しく通過した。
二頭身の機動力を舐めてもらっては困る。俺は寸前で身をかわし、相手の足首の駆動系へと視線を走らせた。
魔眼――いや、俺の高性能スキャナーを通せば、現行の軍用MSの構造など、骨組みの透けた玩具も同然だ。関節部のオイルライン、装甲の隙間、すべてが脆弱な「隙」として網膜に浮き上がってくる。
「ピ、ピポ……(そこだ)」
俺は初期型の小さなバーニアを瞬間点火し、敵の足首へたまご頭を叩き込んだ。
ズドォン!と重金属の破壊音が響き、量産型MSの巨体がバランスを崩して膝をつく。質量にして数十倍の差があるというのに、俺のたまご殻には傷一つついていない。分子密度の格が違うのだ。
「う、嘘……! ゼロが、お城のロボットを倒しちゃった……!?」
背後でJUSCOが呆然と声を漏らす。
だが、カイゼル・シェルはこれほど甘くはなかった。
ガガガ、と崩壊した天井の通信スピーカーから、奇妙なノイズが鳴り響く。それは地下街の全ての電波をジャックした、上層世界からの高圧的な放送だった。
『地下街のネズミどもに告ぐ。我が軍の機体と交戦した不審な「卵型の遺物」を差し出せ。さもなくば、このエリア一帯を更地にする』
ふむ。どうやら俺の存在が、上層世界の偉い奴らの神経を逆撫でしたらしい。
スピーカーを見上げるJUSCOの顔が、みるみるうちに青ざめていく。
「ゼロ……どうしよう……私のせいで、みんなが……」
「気にするな、JUSCO。迷子のお呼び出しは、昔からJUSCOの得意出し物だろう」
俺はブリキの胸のハッチを叩き、不敵に電子音を鳴らした。
呼ばれたのなら、堂々と正面玄関から出向いてやればいい。彼らの自慢の鉄塊が、いかにハリボテであるかを教えてやるために。




