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第49話:奈落の決戦

世界のタイマーが【00:00:00】を刻んだ瞬間、天上の大穴バベル・ホールが爆発したかのような光に包まれた。

ドォォォォォン!!!

重力制御スラスターの轟音とともに、十数機もの純白のMS、そして中央にそびえ立つ巨大な『白亜の粛清艦』が、濁流のように第七居住区へと降下してきた。その圧倒的な武力は、地下世界の薄暗い空を文字通り「純白」に塗り替えていく。

「全砲門、開けぇぇぇッ!! 上のお人形さんたちに、ジャンク屋の意地を見せてやりな!!」

防壁の頂点からカイルの絶叫が響く。

街中のスクラップから急造された対空タレット、マダム・チェイシーの改造重機、そしてシンの汚染水ランチャーが一斉に火を噴いた。黒煙と火花が、降りてくる白い軍勢の光子障壁に激しく激突する。

『ターゲット、捕捉。……全機、システムゼニスの命令通り、ミリタリー・クリーンを開始する』

先頭を駆けるFELIXの純白のMSが、光子のブレードを引き抜き、防壁を一瞬で真っ二つに切り裂いた。あまりの出力の差。自警団の防衛線が、またたく間に蹂躙されていく。

『――そこまでだ、天上の人形』

ズバァァァン!!!

壊れた防壁の破片を突き破り、蒼鉛の巨体、ゼロが跳躍した。

JUSCOが徹夜で組み替えた代替品の左腕が、激しい高周波を立てて鳴動する。その拳が、FELIXの機体の光子ブレードを横から強引に殴り飛ばした!

『ほう……あの状態から、そこまでの駆動トルクを絞り出すか』

FELIXの機体が後方に滑りながら、即座にビーム・ライフルをゼロの胸部へと向ける。

「ルカ、今だよ!!」

ガレージの瓦礫の影から、JUSCOが叫ぶ。

「……捕らえた」

極限まで集中したルカが、引き金を引いた。

父の形見のエーテル・コンデンサを直結した長銃レール・ライフルから、青白い電磁の光条が放たれる。その一撃は、FELIXの最新鋭機の光子防壁に命中した瞬間、JUSCOの計算通り、エネルギーを反転させて防壁を『強制飽和パンク』――完全に霧散させた。

『何……!? 防壁が消失しただと……!?』

コックピットの中で、ついにFELIXの表情に驚愕が走る。

『マスターが遺してくれた、最高の隙だ。――破砕駆動クラッシュ・ドライブ!!』

シールドを失ったFELIXの胸部へ、ゼロの右拳が文字通り「クズ鉄の塊」となって炸裂した。

ドガァァァン!!!

激しい金属音が響き、FELIXの純白のMSの装甲が大きく歪んで吹き飛ぶ。だが、その衝撃の瞬間、両機の距離がゼロになったことで、二つの機体の近距離無線ログが、一瞬だけ強制的に同期リンクしてしまった。

「うっ……あ、頭が……っ!?」

FELIXの脳内ナノマシンが、突如として狂ったような警告音アラートを鳴らし始める。モニターにノイズが走り、なぜか、目の前の凄惨な戦場とは全く違う、幼い頃の「錆びついた小さなガレージ」の記憶の断片が頭の中に流れ込んでくる。

(私は……なぜ上層にいる? 私は……誰を排除しようとしている……?)

「フェリックス准将!! 何をしているのですか!」

通信回線から、エレノアの凍りつくような怒号が響く。

「ナノマシンの出力を最大に引き上げなさい! そのバグごと、街を焼き払うのです!」

『……く、ガ……あぁぁぁッ!!』

FELIXの瞳が再び冷徹な光に染まり、機体が狂暴な駆動音を立てて再起動する。

だが、戦闘の衝撃は、それだけでは終わらなかった。

激突の余波で、粛清艦から放たれた極太の熱線ビームが、第七居住区のさらに奥の床――旧文明の封印された最下層の隔壁を直撃し、大爆発を起こしたのだ。

ゴゴゴゴゴゴゴ……!!!

街全体が、これまでにない規模で激しく傾き始める。

崩落していくジャンク街の地盤の向こうから姿を現したのは、上層世界のシステムすら把握していなかった、巨大な『古代の建造物』、神聖ゼニス・コアへの道だった。

天と地が崩壊し、すべてがその巨大な奈落の底へと飲み込まれていく。

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