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第44話:白亜の火花

――キィィィィィン!!!

純白のMSの右腕から引き抜かれた光子ブレードが、隔離ドックの白い壁面を眩しく照らし出す。その白熱化された刃は、かすっただけでも地下製のクズ鉄装甲など容易く消滅させるエネルギーを孕んでいた。

『フェリックス准将、即座にイレギュラーを完全解体しなさい! 少女の身柄は、我が情報部が直接拘束します!』

エレノアが後方の安全カプセルへと退避しながら、冷酷なオペレーション音声をドック内に響かせる。

「了解。――ターゲット、即時ミリタリー・クリーン(完全排除)」

FELIXの冷徹な声とともに、純白のMSが床のセラミックを爆砕しながら突進してきた。音のない重力制御スラスターの加速。その一閃が、JUSCOを庇って立ち塞がるゼロの胸へと真っ直ぐに突き出される。

『おおおおおッ!!』

電磁ネットを力づくで引き裂いたゼロは、過負荷で全身のオイルラインからプシューと黒い煙を吹き上げながら、その蒼鉛の左腕を盾にして光子の刃を受け止めた。

――バリバリバリバリッ!!!

蒼いエーテル粒子と純白の光子が激突し、ドック全体に凄まじい衝撃波と閃光が吹き荒れる。ゼロの左腕の装甲が、高熱でドロドロと赤黒く融解し、火花がJUSCOのすぐ目の前まで飛び散った。

「ゼロ!! 駄目、もう出力が限界を超えてる! 左腕のシンクロ率を下げて、これ以上は耐えられない!!」

JUSCOが床に伏せながら、悲痛な声をあげる。

『退け、マスター! 我がブレインが焼き切れようとも、ここで引けば君の未来ログが消える!』

ゼロは融解していく左腕を強引に前へと押し出し、純白のMSの体勢をわずかに崩した。そして、残された右拳に魔力炉の残存エネルギーをすべて凝縮し、FELIXのコックピットのハッチ(胸部)へと叩き込もうとする。

だが、FELIXの演算能力はそれを完全に先読みしていた。

『……遅い。モーションが直線的すぎる』

フワリ、と純白のMSが重力を無視して真上へと跳躍。ゼロの鉄拳は虚空を裂き、ドックの分厚い隔壁をドガァァンと打ち砕いた。

そして空中から、FELIXの機体は容赦なくビーム・ライフルの銃口を、今度こそ無防備になったゼロの背中――そして、その下にいるJUSCOへと向けた。

『終わりだ、地下のバグ』

銃口に集束する、絶望的な純白の光。

逃げ場のない白い四角い部屋。JUSCOは、上空から自分を見下ろす冷徹な仮面のMSを見上げ、歯を食いしばった。

(ここまでなの……? お父さん、みんな……。私は、ゼロを、自分の相棒すら守れないで……!)

引き金にかけられたFELIXの指が、システムAIの命令通り、寸分の狂いもなく引き絞られようとした――その、まさに一瞬前だった。

――ドォォォォォン!!!

突如として、隔離ドックの底面、すなわち地下世界ジャンクヤードへと繋がっていたハッチのロックが、外側から「物理的な大爆発」によって吹き飛ばされた。

猛烈なジャンクの煙と廃油の臭いが、無菌室だった上層のドックへと一気に逆流してくる。

「天上の綺麗なお人形さんたち! あいたたちの『街の宝』を、そんな狭い檻に閉じ込めておくじゃないよッ!!」

煙を割って現れたのは、なんとバベル・ホールの壁面配管を強引に爆破し、ワイヤーを伝って強行突入してきた、マダム・チェイシーの超大型コンバイン、そしてレイラたち自警団の突撃輸送車だった!

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