第39話:クズ鉄たちの防衛線
――ヒュゴォォォォォッ!!
上空に滞空する3機の白いガンシップ『エア・レイダー』の機首が、一斉に赤黒い熱線をチャージし、夜のジャンク街を不気味に照らし出す。
『ターゲット(ゼロ)、完全固定。……塵に還れ、地下の害虫ども』
レオンの冷酷な嘲笑とともに、大気を引き裂くような高熱のビームが、無防備なJUSCOのガレージへと向かって一斉に放たれた。
「撃たせるかよぉぉぉッ!!」
ドガァァァン!!!
激しい閃光が爆発した。だが、その光を遮ったのはゼロの盾ではない。
マダム・チェイシーが駆る巨大重機のコンバインが、フロントにジャンクの超分厚い鉄板を掲げ、ビームの光軸を強引に横から撥ね退けたのだ。高熱で鉄板がドロドロに溶け落ち、凄まじい衝撃波がチェイシーの重機を激しく揺らす。
「あいたた……っ! 相変わらず天上の光線は熱いねぇ! だがね、あたいたちのクズ鉄は、その程度の熱じゃ溶けきらないよ!」
チェイシーは操縦レバーを強引に引き絞り、溶けた装甲を自ら切り離して不敵に笑う。
「ルカ! 敵の機首、センサーの真下だ! 狙えるかい!?」
「……すでに、ロックしている」
パンッ! と乾いた電磁音が闇を切り裂く。
ルカの放ったレール・ライフルの超音速弾が、レオンの乗るガンシップの光子防壁に命中。シールドは弾丸を弾いたものの、ルカが狙ったのは破壊ではなく「衝撃による機体のブレ」だった。
『チッ……! 地下の旧式銃が、私の照準ログを狂わせたか!?』
レオンの機体が僅かに浮き上がる。その隙を、自警団のカイルたちが放つ対空実弾が激しく叩いた。
街の大人たちが、文字通り肉の壁となって時間を稼ぐ。
その間に、真っ暗なガレージの奥で、JUSCOのスパナが火花を散らしていた。
「ここをこうして、リンのところのコンデンサと同期させて……お願い、繋がって……!」
手のひらがハンダの熱で焼け、煤で顔が真っ黒になりながらも、JUSCOは必死に手を動かし続ける。
ゼロの魔力炉から流れる膨大なエネルギーを、街の各エリアの予備バッテリーへと「分散・バイパス」させる回路。父のノートにあった古い理論が、JUSCOの天才的なひらめきによって今、ジャンクの山から形を成していく。
――カチリ。
最後の太い銅線が配電盤に直結された、その瞬間。
『――負荷の分散を確認。街のライフライン、自立駆動モードへ移行。我がメインフレームへの逆流波形、完全に停止』
ゼロのメインモニターに、眩いばかりの蒼き光がドッと戻った。
配電盤に拘束されていた右腕が自由になり、蒼鉛の装甲が再びエーテル粒子の輝きを放ち始める。
「ゼロ……!」
『お待たせした、マスター(JUSCO)。我が機能の98%が完全復旧。……これより、仲間たちを傷つける上空の『羽虫』どもの駆除を開始する』
ゼロの巨体が、ガレージの床を蹴って飛び出した。
天上の最新鋭メカに対し、地下の誇りを取り戻した蒼き遺物が、その強烈な一撃を叩き込むために跳躍する!




