第34話:ジャンクヤード・プライド
――ビ、ジジジジッ!
蒼い光の粒子と、白い光子防壁が激突し、境界線の空間が不気味に歪む。
「くっ、あぁぁぁ……!」
ゼロの駆動クランクに直結されたJUSCOの感覚へ、凄まじいフィードバック電圧が走る。
上層世界のエリートが駆る純白のMS。その出力は、地下のジャンクで急造した現在のゼロを確実に圧迫していた。装甲の隙間から「プシュー!」と高圧の冷却蒸気が噴き出す。
『主人、警告。魔力炉の出力は上回っているが、それを伝える地下製のパイプが持たない。このままではエネルギーが逆流し、ガレージごと自爆するぞ!』
『……チッ、しぶといクズ鉄め』
白いMSのコックピットで、FELIXは感情の動かない冷徹な手つきでビーム・ライフルのエネルギー出力をさらにワンクリック引き上げた。
本来なら、地下の旧式重機など一瞬で塵にできるはずの兵器。それを正面から受け止めている目の前の「蒼いバグ」に対して、彼の脳内システムは「排除効率:低下」の赤文字を点滅させ続けている。
その時だった。
――ズドォォォン!!!
激しい衝撃波と共に、白いMSの右側の地面が爆発した。
爆風に煽られ、FELIXのビームの光軸がわずかに逸れる。
『何だ!? 反撃か……!?』
白いMSの熱源センサーが、第七居住区の南側、すなわち「浄水管理区」の方向から迫る、新たな複数の熱源を捉えた。
「JUSCOーッ!! スパナを離すんじゃないよ!!」
ジャンクの煙を割って現れたのは、巨大な改造重機を駆るマダム・チェイシー、そして即席の装甲車に乗り込んだレイラ率いる自警団の面々だった。重機の助手席には、浄水区のシンが、マードックから借り受けてきた旧文明製の高圧洗浄機(汚染水仕様)を抱えて乗っている。
「リンから聞いたよ! 上層の白いのがJUSCOを狙ってるってね! 第七区の水を舐めるんじゃないよ、この天上の人形どもが!」
チェイシーが重機の大型スロットルを限界まで踏み込む。
さらに、はるか後方の瓦礫の影から、ルカが精密に調整された長銃の照準を白いMSの駆動クランクの「関節部」へと固定していた。JUSCOが以前、ルカの義足を直した時に教えた「機械の構造的弱点」、そのログが今、ルカの網膜にオーバーレイしている。
「……撃て」
パンッ! と乾いた電磁音が響き、ルカの放った超高速の実弾が、白いMSの膝関節の隙間へ正確に命中。光子防壁の隙間を突いた一撃が、白い装甲を激しく火花とともに弾いた。
『機体バランス、0.4%低下。……地下の害虫どもが、これほどの連携を……?』
FELIXの眉が、初めて僅かに不快そうに潜められた。
上層世界の戦術理論にはない、泥臭く、しかし寸分の狂いもない「絆」による同時波状攻撃。
「みんな……!」
JUSCOの目に、じわりと熱いものがこみ上げる。
自分は一人じゃない。父を亡くしたあの日から、この街の頑固で温かい大人たちと仲間たちが、いつも自分を、そしてこのガレージを支えてくれていた。
『データ更新。敵パイロットの精神波形に「戸惑い(バグ)」を感知。主人、仲間たちが作ってくれたこの隙、一秒たりとも無駄にはせんぞ!』
ゼロのメインモニターが、闘志の蒼に燃え上がる。
例え相手がどれほど洗練されたユートピアの兵器であろうと、ここはスパナ一本で生き抜いてきた人間の街だ。地下の誇りを賭けた、クズ鉄たちの反撃が始まった。




