第20話:境界線の鉄屑同盟(スクラップ・ギルド)
第七居住区の西側境界線。そこはかつて、旧文明の巨大な排水管が複雑に絡み合う暗い荒野だった。
現在は、重厚な金属音が不気味に響き渡る戦場と化している。
「ハハハ! 拾え、毟り取れ! 上層のクズ鉄はどれも極上品だぞ!」
排気煙を撒き散らしながら暴れ回るのは、西のブロックを牛耳る『鉄屑同盟』の改造重機群。彼らは採掘用の大型ショベルや破砕クロー(グラップル)を武装化し、居住区の防壁を容赦なく削り取っていた。
「くっ、そこを死守して! 突破されたら居住区の民間人が……!」
レイラ率いる自警団の旧式重機が必死に応戦するが、出力の差は歴然だった。ギルド側の容赦ない体当たりを受け、自警団の機体が火花を散らして崩れ落ちる。
「ここまでだな、第七自警団! その小綺麗なお嬢ちゃんごと、スクラップにしてやるよ!」
ギルドの隊長機――巨大な油圧パイルドライバーを装備した赤錆びた重機が、レイラの乗る指揮車両へと牙を剥いた。
ドゴォォォン!!!
「……!? な, なんだ、何が起きた!?」
隊長機のパイルドライバーがレイラに届く直前、一筋の蒼い閃光がその腕部を根元から綺麗に切断していた。あまりの超高温に、切断面は赤くドロドロに溶け落ちている。
爆煙の向こうから、重々しい金属音を響かせて姿を現したのは、全高2メートルの蒼きモビルスーツ。「ゼロ」だ。その背部バーニアからは、青白い粒子が静かに揺らめいている。
「ひ、一撃で俺の重機を……!? バカな、あいつが噂の『たまごの悪魔』か!?」
「ふむ。悪魔とは人聞きの悪いな」
俺は冷徹な電子音を全域に響かせ、蒼い右腕の指先をギルドの重機群へと向けた。レイラから譲り受けた高密度バッテリーがサブ・スロットで完璧に同調し、俺のコア出力は極めて安定している。
「俺はただの、我が主人の所有物だ。そして、これ以上我が家のご近所を騒がせる不法侵入者は、強制的にリサイクル(処分)せねばならんのでな」
「舐めるなァ! 囲め! 数の暴力で圧殺してやる!」
ギルドの改造重機十数機が一斉にエンジンを吹かし、全方位から俺へと突撃してくる。
「レイラ、下がっていろ。これより、我が居住区の境界線における『防犯活動』を開始する」
蒼きモビルスーツのメインモニターが、一瞬で敵全機の駆動骨格をロックオンした。




