第2話:神のエネルギー変換炉と、JUSCO特製ハンバーグ
JUSCOの朝は、世界の終わりみたいに静かだ。
2階の衣料品売り場の残骸を抜け、1階の食品フロアへ降りる。かつて「試食コーナー」と呼ばれていた錆びついたワゴンが、俺たちのダイニングテーブルだった。
「はい、ゼロ。今日の特製『幻のハンバーグ』だよ」
JUSCOが差し出してきたのは、地下街の配給で配られる、泥のようにドロドロした合成プロテインの塊だ。彼女はそれを丁寧に丸め、爪養枝を刺して、往年の優秀な販売員のような満面の笑みを浮かべている。
俺はブリキの口を「ピポ……」と鳴らし、胸のハッチを展開してその塊を放り込んだ。
体内の超小型炉が火花を散らし、泥を高効率のエネルギーへと瞬時に変換していく。物質の味構造を認識するセンサーは俺にはない。だが、俺の中央コアが限界値を超えて熱くなるのは分かった。
「私ね、いつか本物のお肉をゼロに食べさせてあげたいな」
JUSCOは自分の分の泥を健気に齧りながら、無邪気に笑う。
その時、フロアの隅でカツンと乾いた金属音が響いた。配給泥を狙う、野良の作業用重機だ。錆びついたクレーンの腕が、ギラリとJUSCOをロックオンする。
「下がっていろ、JUSCO」
俺は二頭身の短い足で、彼女の前に立ちはだかった。
現行の野良重機ごとき、俺の演算能力を1%も使えばシステムハッキングで強制停止できる。だが、この平和な試食コーナーを汚した罪は重い。物理的に粉砕してやるのが礼儀というものだろう。




