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第18話:鉄の街の夜明け 〜それぞれの戦後〜

上層世界「カイゼル・シェル」の要塞を撃退し、世界の天井に大穴を開けたあの日から、地下ジャンク街の空気は少しだけ変わっていた。

絶え間なく降り注いでいた灰は収まり、崩壊した白銀のタワーから漏れ出すエネルギーが、人工の陽光のように薄暗い街を淡く照らしている。上層世界による略奪の恐怖から解放された住人たちは、自分たちの足で歩みを進めようとしていた。

ガガガ、ギギィ……。

居住区の片隅にあるガレージ。全高2メートルの蒼きモビルスーツとなった俺――「ゼロ」は、自身のフレームを点検していた。急造の蒼鉛アルケミー・ブルー装甲は、凄まじい出力を発揮する代償として、未だに関節部へ高い負荷をかけ続けている。

「ゼロ、あまり無理しないでね。ほら、これ」

コクピットのハッチを見上げると、JUSCOが小さなハシゴを登り、オイル塗れの布を手にして笑っていた。

世界の最高管理者としてのコードをその身に宿しながらも、彼女は何も変わらない。あの日、瓦礫の底から俺を拾い上げてくれた、ただ一人の優しい少女のままだ。

「心配いらん、JUSCO。これしきの駆動負荷、自己修復の範疇だ」

俺は冷徹な電子音を響かせながらも、彼女が差し出すメンテナンス用のオイル缶を、器用にマニピュレーターで受け取った。胸の装甲の奥、回路の最も深い場所に、あの色褪せたラベルの破片が今も大切に格納されている。

その時、ガレージの外から騒がしい声が響いてきた。

「おいおい! 本当にあのたまごがこんなバケモノになっちまったのかよ!」

「シーッ、滅多なことを言うな! 上層の近衛機を瞬殺したっていう、この街の守護神だぞ!」

覗き込んできたのは、近隣のブロックでジャンクの目利きを営む若者たちや、武器を隠し持って怯える自警団の面々だった。彼らは俺の蒼い機体を畏怖の目で見つめ、同時に、これからの地下街の行く末に不安を募らせていた。

上層世界という共通の敵を失った今、この法なき地下世界は、力を持つ者たちによる群雄割拠の時代を迎えようとしている。俺たちが守り抜いたこの静かな日常は、まだガラス細工のように脆い。

「JUSCO、ゼロ。……ちょっといいかしら」

人混みを割って進み出てきたのは、自警団の若きリーダーであり、JUSCOとも昔なじみの女性、レイラだった。彼女の引き締まった表情が、新たな問題の発生を告げていた。

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