第12話:蒼き覚醒
上層世界へ殴り込みをかけるには、この丸っこい二頭身のボディはあまりに質量と推力が足りない。
俺はJUSCOの裏手にあった、半壊した「お客様用自転車置き場」へと足を向けた。そこは、先の戦闘で撃破された量産型MSの残骸や、放棄された重機のパーツが雑然と転がる、最高のジャンクヤードと化していた。
「ふむ。このフレームの炭素結合度なら、俺のコアの出力にも辛うじて耐えられるか」
俺は剥き出しの回路からナノマシン電磁波を放ち、周囲の鉄屑を強制スクラップ(分解)していく。
量産機の脚部スラスター、大型二輪のチェーン、頑強な高炭素鋼のフロントフォーク――。
それらの「ゴミ」どもが、俺の演算通りに再構成され、ブリキのたまごボディへと次々にドッキング(結合)していった。
だが、その瞬間だ。
瓦礫の山から引きずり出した、上層MSの特殊コーティング装甲が、俺のコアから溢れる魔力と共鳴した。
バチバチと、周囲の空気が青白い放電現象を起こす。
システムログが、想定外の書き換えを告げる。
『外部装甲:複合ジャンクプレートに換装。……エラー。再構成、開始。蒼鉛コーティング層との完全融合を確認――。』
「……これは、旧文明の蒼い(アルケミー)鋼か」
激しい閃光が収まった後、俺の姿は一変していた。
全高2メートルクラス。丸いたまご型のセンターコアはそのままに、そこから伸びる無骨な四肢は、深海を思わせる深みのある蒼い装甲に覆われている。
背部には大型のバーニアユニットが、そして頭部アンテナはより鋭利で攻撃的な形状へと進化していた。
初期型の愛嬌は消え失せ、戦場を駆けるに相応しい「第2形態(蒼き装甲強化型)」への覚醒だ。
「フン、肉体が蒼く燃えようが関係ない。JUSCOを泣かせたカイゼル・シェルの鉄屑どもに、最上級の破壊を届けてやるための足としては、これで十分だ」
俺は背中に増設した巨大なバーニアを爆鳴させ、蒼い機体を世界の天井(上層世界への大穴)へと向けた。




