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異世界温泉宿 ~使えないスキルと言われた俺、秘境の谷で温泉を作ったら人も魔物も通う場所になった~  作者: 堺久遠


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新たな施設

混浴問題発生から二日後。


“やわらぎの谷”は、新たな進化を遂げていた。


「……なんでこんな増えてんの?」


カヤが呆然と呟く。


谷のあちこち。


新しく作られた小型露天風呂群。


木造の半個室。


岩風呂。


檜風呂。


洞窟風呂。


さらには川沿い露天まである。


しかも全部、地下施設が勝手に最適配置した。


「意味分からん……」


ダンが遠い目をする。


例の“混浴問題”以降。


地下遺跡が自動調整を始めた結果......。


大量の個室風呂エリアが形成された。


そして。


これが大当たりだった。




「予約埋まりましたー!!」


朝から受付が悲鳴を上げる。


個室風呂。


家族風呂。


貸切露天。


全部満室。


「人気ありすぎるだろ!?」


ダンが叫ぶ。


特に人気なのが、“景観型露天”だった。


山側。


滝側。


星空側。


それぞれ景色が違う。


しかも温泉効果は本館以上。


完全に高級旅館である。


その時。


「川沿い二区画、空きあります!」


「予約します!!」


獣人客たちが即反応する。


理由は簡単だった。


「静か……」


「落ち着く……」


個室風呂、獣人たちに異常人気である。


耳が良い種族ほど、人混み疲れしやすい。


だから静かな貸切空間が刺さった。


その時。


ミナが静かに個室露天へ浸かっていた。


湯気。


川の音。


木漏れ日。


完全にリラックスしている。


「……落ち着く」


珍しく尻尾までゆるゆるだった。


その隣。


グーちゃんまで露天へ浸かっている。


「サイズ感おかしくない?」


カヤがツッコむ。


しかも。


グーちゃん専用大型露天まで作られていた。


誰が望んだのか……。


そして


「白銀魔狼露天見学ツアーこちらです!」


「ツアー化してる!?」


ダンが頭を抱える。




その頃。


高級個室露天エリア。


「…………」


エルグランとゼルヴァディスが、無言で湯へ浸かっていた。


完全に常連だった。


「王と魔王が個室風呂使うな」


ダンのツッコミも、最近はもう弱い。


エルグランは静かに湯気を眺める。


「……静かだな」


ゼルヴァディスも目を閉じる。


「悪くない」


完全に癒されていた。


その時。


エルメリアが大量の資料を抱えて走ってくる。


「問題発生です!」


もう恒例だった。


「今度は何だ」


「個室風呂人気が想定を超えています!」


「知ってる!」


実際。


予約倍率が異常だった。


特に問題なのが、“長時間滞在”。


皆、出てこない。


「個室利用者の平均滞在時間、通常の四倍です」


「住む気か!?」


カヤが叫ぶ。


だが。


気持ちは分かる。


静か。


温泉気持ちいい。


空気穏やか。


出たくなくなる。


その時。


エルメリアが真顔で追加報告する。


「さらに問題があります」


嫌な予感しかしない。


「恋人利用率が急増しています」


空気が止まる。


ダンが吹き出した。


「は?」


「カップル予約が激増しています」


「データ出すな!!」


リーフェが顔を赤くする。


ミナは首を傾げていた。


「……かっぷる?」


「お前は知らなくていい」


ユウが即答する。


その時だった。


ブゥゥゥン……。


地下方向から、暖かな振動が響く。


谷全域の個室風呂が、淡く発光した。


エルメリアが固まる。


「……まさか」


次の瞬間。


新たな個室風呂群が、谷奥側へ形成され始める。


「増えたぁ!?」


地下施設が、自動増築していた。


完全に需要対応である。


しかも。


景観がやたら良い。


星空露天。


森林露天。


滝裏露天。


全部高級感が凄い。


ダンが乾いた笑いを漏らす。


「温泉施設が進化してる……」


その時。


ユウの脳裏へ、また声が響いた。


『――快適性最適化。滞在満足度向上』


完全に旅館運営AIだった。


そして。


地下遺跡最深部では、さらに大規模な区画形成が静かに進み始めていた。

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