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異世界温泉宿 ~使えないスキルと言われた俺、秘境の谷で温泉を作ったら人も魔物も通う場所になった~  作者: 堺久遠


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新たな問題

“やわらぎの谷”成立から三日後。


谷は、さらに賑やかになっていた。


新たに湧いた温泉。


拡張された露店街。


増え続ける宿泊客。


完全に大観光地である。


だが。


平和だった谷へ、ついに新たな問題が発生した。


「――いや限界です!!」


朝からエルメリアの叫びが響く。


食堂。


全員が嫌そうな顔をした。


「今度は何だ」


ダンが死んだ目で聞く。


エルメリアは大量の資料を机へ叩きつけた。


「混浴区域比率が高すぎます!!」


空気が止まる。


「……は?」


「現在、“やわらぎの谷”全浴場の七割が混浴です!」


「そんなに!?」


カヤが驚く。


確かに。


元々“やわらぎの湯”は種族共存優先で作られていた。


結果。


広い共同浴場が中心になった。


さらに地下遺跡側が“共存領域”として拡張したせいで、新源泉まで混浴寄りになっている。


つまり。


今の谷。


だいたい混浴だった。


「問題あるか?」


ダンが首を傾げる。


その瞬間。


周囲の女性陣の視線が刺さった。


「あります」


リーフェが真顔だった。


「ありますわね」


セレディアも頷く。


ミナも静かに頷いた。


「……見る人、多い」


「お前は気づいてたのか」


ユウが少し驚く。


実際、最近は観光客が増えすぎていた。


特に問題なのが、“見学目的”の客まで来始めていることだった。


「獣人美女温泉」


「魔族美人湯」


「銀狼族が入る露天風呂」


噂が変な方向へ広がっている。


「誰だ広めたの!!」


カヤが叫ぶ。


その時。


露店街側から歓声が上がった。


「ミナさんいた!!」


「銀狼族美人だ!!」


「写真描かせてください!」


ミナが固まる。


完全に人気観光対象になっていた。


「うわぁ……」


ダンが引く。


しかも。


問題はそれだけじゃない。


グーちゃんである。


「白銀魔狼風呂どこですか!?」


「グーちゃん見たい!」


「もふもふしたい!」


「テーマパーク化してる!!」


カヤが頭を抱えた。


グーちゃん本人は、ふんす、と鼻を鳴らして温泉へ入っている。


完全にマイペースだった。


その時。


エルメリアが真顔で資料をめくる。


「さらに問題があります」


「まだあるのか」


「男性客の長風呂率が異常です」


空気が止まる。


ダンが目を逸らした。


リーフェが冷たい目になる。


「……へぇ?」


「いや違っ、俺じゃねぇ!」


完全に怪しかった。


エルメリアは続ける。


「混浴人気区域の滞在時間が、通常浴場の三倍以上あります」


「データ化すんな!」


カヤが叫ぶ。


その時だった。


露天風呂側から、怒号が響いた。


「おい押すな!!」


「湯船入れねぇ!」


「人多すぎるー!」


どうやら混浴露天が限界らしい。


エルメリアが頭を抱える。


「施設容量不足です……」


「またそれかぁ……」


ダンも遠い目になる。


その時。


エルグランが静かに茶を飲みながら呟いた。


「……分離区画を作ればいいのではないか」


空気が止まる。


ゼルヴァディスも頷いた。


「時間帯分離も可能だな」


「王と魔王が温泉運営会議すんな」


もう誰も止められなかった。


その時。


ブゥゥゥン……。


地下方向から、微かな振動が響く。


全員が止まる。


エルメリアが青ざめた。


「……まさか」


次の瞬間。


谷全域の温泉水が、一斉に淡く発光した。


そして。


新しく湧いた源泉群の一部が、自動的に区画分離を始める。


「え?」


「壁できた!?」


温泉の間へ、水の膜みたいな半透明結界が現れていく。


男性側。


女性側。


家族風呂。


混浴区画。


自然に分かれていく。


エルメリアが震える声を漏らす。


「地下施設が……需要へ適応してる……」


空気が止まる。


つまり。


古代施設側が、“混浴問題”を認識した。


ダンが乾いた笑いを漏らす。


「温泉AIかよ……」


その時。


ユウの脳裏へ、また声が響く。


『――快適性改善。休息効率向上』


完全に温泉運営だった。


そして。


地下遺跡最深部では、さらに新たな区画形成が静かに始まっていた。

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