表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界温泉宿 ~使えないスキルと言われた俺、秘境の谷で温泉を作ったら人も魔物も通う場所になった~  作者: 堺久遠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/75

発展する谷

新館建設が始まってから一週間。


還らずの谷の景色は、目に見えて変わり始めていた。


「……いや増えすぎだろ」


ダンが呆然と呟く。


“やわらぎの湯”周辺。


以前は宿しか無かった場所へ、次々と建物が増えている。


食堂。


露店。


雑貨屋。


薬草店。


湯上がり飲料屋。


さらには温泉まんじゅう専門店まで出来ていた。


「誰だよ温泉まんじゅう作ったの」


「私です」


カヤだった。


「行動早ぇな!?」


しかも売れている。


湯上がり客が列を作っていた。


「うまっ!」


「これ止まらん!」


完全に人気商品だった。


その時。


露店通りの奥から、大声が響く。


「焼き串だよー!!」


「魔獣肉串、安いよー!!」


さらに。


「薬湯用薬草セットあります!」


「旅用防水マントありますよー!」


人が増えれば、店も増える。


当然の流れだった。


だが。


問題は増え方である。


「もう完全に温泉街じゃねぇか……」


ダンが遠い目をする。


以前は危険地帯だった還らずの谷。


今では、普通に買い物客まで来ている。


しかも。


人族と魔族が同じ店で値切り交渉していた。


意味が分からない光景だった。


その時。


「場所貸してくださいまし!」


セレディアが妙にやる気だった。


「今度は何だよ」


ダンが嫌そうに聞く。


セレディアは胸を張る。


「高級湯上がり甘味店ですわ!」


「始めやがった!?」


しかも。


数時間後には本当に開店していた。


行動力がおかしい。


さらに。


ヴァルトまで木工店を始めていた。


無口なまま椅子を作っている。


妙に上手い。


「なんで職人適性あるんだよ四天王」


カヤが引いていた。


その時だった。


ズシン。


ズシン。


重い足音が響く。


「……まさか」


ダンが振り向く。


そこには。


巨大な荷車を引くグーちゃんがいた。


「運送業始めたぁ!?」


しかも後ろにはヘルウルフ群れ。


全員、荷物運搬中だった。


木材。


食料。


温泉用品。


物流まで支配し始めている。


ミナが小さく頷く。


「……便利」


「便利だけど!!」


その時。


エルメリアが大量の紙を抱えながら走ってくる。


「問題発生です!」


嫌な予感しかしない。


「今度は何だ」


「店舗増加速度が想定を超えています!」


「知らんわ!」


エルメリアは図面を広げる。


そこには、びっしり店の配置が書き込まれていた。


「現状、無秩序増築状態です」


確かにそうだった。


勢いで建て始めたせいで、道がかなり怪しい。


店同士が近すぎる。


露店まで溢れている。


完全にカオスだった。


エルグランが周囲を見回す。


「……整備が必要だな」


ゼルヴァディスも頷く。


「治安維持区画も必要だ」


「国家運営みたいな話になってきたな!?」


ダンが叫ぶ。


その時。


ユウは静かに温泉街を見つめていた。


笑い声。


湯気。


店の呼び込み。


食べ歩く客たち。


以前の“還らずの谷”とは、まるで別世界だった。


争いも少ない。


皆、どこか穏やかだ。


温泉へ入ると、自然と力が抜けるから。


その時だった。


ふわり、と地下方向から暖かな風が吹く。


ユウが顔を上げる。


ブゥゥゥン……。


地下遺跡方向で、微かな青白い光が脈打った。


エルメリアも気づく。


「……主制御核が活性化しています」


「またかよ」


ダンが頭を抱える。


だが。


今回は暴走ではない。


むしろ。


喜んでいるみたいだった。


エルメリアは地下方向を見つめながら、小さく呟く。


「温泉街形成に反応している……?」


空気が少し静まる。


その時。


ユウの脳裏へ、微かな声が響いた。


『――休息領域、拡大確認』


ユウが目を見開く。


まただ。


施設が喋っている。


そして。


地下遺跡最深部で、まだ見ぬ何かが静かに動き始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ