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異世界温泉宿 ~使えないスキルと言われた俺、秘境の谷で温泉を作ったら人も魔物も通う場所になった~  作者: 堺久遠


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64 源泉安定成功

『――継承者、確認』


静かな声が、地下遺跡全体へ響いた。


次の瞬間。


巨大魔力核が、まばゆい青白い光を放つ。


ブゥゥゥゥン!!


空間全体へ、巨大な波紋が広がった。


「っ!?」


ダンが目を覆う。


水路。


壁面。


中央水盤。


地下遺跡全体の古代文字が、一斉に発光した。


まるで。


施設そのものが目覚めたみたいだった。


エルメリアが震える声を漏らす。


「認証完了……!?」


その瞬間。


暴走していた魔力流動が、一気に変化した。


今までの荒れ狂う流れではない。


滑らかだった。


巨大な水脈が、谷全体へ自然に循環し始める。


ゴゴゴ……。


地下の揺れが、少しずつ止まっていく。


「お、おい……」


カヤが周囲を見回す。


「静かになってない?」


確かに。


暴走していた振動が消えていた。


中央水盤も穏やかだ。


青白い光は、優しく脈打つように揺れている。


ユウは静かに魔力核へ触れていた。


温かい。


まるで。


生き物みたいだった。


その時。


地下遺跡全域へ、淡い光が流れていく。


水路を通り。


谷全体へ広がる。


そして――。


地上。


“やわらぎの湯”。


露天風呂の温泉が、ふわりと光った。



「……戻った?」


宿に残っていた冒険者たちが目を見開く。


荒れていた温泉水が、ゆっくり落ち着きを取り戻していく。


熱すぎず。


冷たすぎず。


いつもの柔らかな湯へ戻っていた。


しかも。


空気そのものが違う。


より深く。


より穏やかだった。


「なんだこれ……」


一人の冒険者が呆然と呟く。


肩の力が抜ける。


疲労が溶ける。


安心感が、全身へ広がっていく。


まるで。


温泉そのものが、“落ち着け”と言っているみたいだった。



地下遺跡。


エルメリアが、水路図を見ながら息を呑む。


「循環率……完全安定……」


「成功したのか?」


ダンが聞く。


エルメリアは信じられない顔で頷いた。


「はい……」


静かな声だった。


「源泉制御、完全正常化です」


数秒。


沈黙。


そして。


「……助かったぁぁ!!」


カヤがその場へへたり込んだ。


ダンも大きく息を吐く。


「マジで終わったかと思った……」


リーフェも苦笑する。


「私もよ」


その時。


グーちゃんが、ふんす、と満足そうに鼻を鳴らした。


ヘルウルフ群れも落ち着いている。


銀色の魔力は既に収まり、皆静かだった。


まるで。


役目を終えたみたいに。


フェルザードは小さく鼻を鳴らす。


『どうやら成功したようだな』


だが。


珍しく少し疲れていた。


本気級の魔力放出だったのだろう。


ゼルヴァディスが静かに笑う。


「珍しく本気を見た」


『貴様も似たようなものだ』


「否定はせん」


魔王まで少し消耗していた。


どれだけ異常な施設だったのか、改めて分かる。


その時。


ユウが、ゆっくり魔力核から手を離す。


同時に。


巨大魔力核の中心へ、新たな文字が浮かび上がった。


『第二管理権限、移行完了』


エルメリアが固まる。


「……第二?」


「第一じゃないのか?」


ダンが聞く。


エルメリアは青ざめた顔で呟いた。


「つまり……」


地下空間へ、水音が静かに響く。


「この施設には、“本来の管理者”が別に存在していたということです」


空気が止まる。


その瞬間。


ブゥゥゥン……。


巨大魔力核の奥。


さらに深部方向へ、新たな通路が開き始めた。


青白い光が、暗闇を照らしていく。


まるで。


“先へ来い”と導くみたいに。


ダンが乾いた声を漏らす。


「……まだ続くのかよ」


誰も否定できなかった。


そしてユウは、静かにその奥を見つめていた。


不思議だった。


怖さよりも。


どこか懐かしい感覚の方が強い。


まるで。


ずっと前から、自分を待っていた場所みたいだった。

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