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異世界温泉宿 ~使えないスキルと言われた俺、秘境の谷で温泉を作ったら人も魔物も通う場所になった~  作者: 堺久遠


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63 フェルザード、本気魔力使用

地下遺跡最奥。


巨大魔力核は、静かな青白い光を取り戻し始めていた。


ヘルウルフ群れから供給される銀色の魔力。


ユウによる循環調整。


それによって暴走は抑え込まれつつある。


……だが。


エルメリアの表情は険しいままだった。


「まだ不安定です」


「えぇ……」


ダンが顔を引きつらせる。


エルメリアは浮かぶ水路図を睨む。


「供給量は増えました。ですが、主制御核の出力が高すぎる」


ゴゴゴゴ……。


地下空間が再び揺れる。


巨大魔力核が不規則に明滅した。


青白い光が、一瞬だけ赤く染まる。


空気が凍った。


「今の絶対ダメな色だろ!?」


カヤが叫ぶ。


「危険域へ入っています!」


エルメリアも声を荒げた。


次の瞬間。


ドォォォォン!!


巨大な魔力波が炸裂する。


「っ!!」


全員が吹き飛ばされそうになる。


リーフェが即座に結界を展開。


ゼルヴァディスも魔法陣を広げた。


だが。


押さえきれない。


地下遺跡そのものが、悲鳴を上げ始めていた。


天井へ亀裂が走る。


水路が震える。


中央水盤の湯まで荒れ狂い始めた。


ユウが歯を食いしばる。


「流れが崩れる……!」


整えても。


供給しても。


施設そのものの出力が強すぎる。


まるで。


長年抑え込まれていた力が、一気に目覚め始めているみたいだった。


その時。


フェルザードが、静かに前へ出る。


『……仕方あるまい』


低い声だった。


空気が変わる。


黒竜の金色の瞳が、巨大魔力核を真っ直ぐ見据える。


ゼルヴァディスが静かに目を細めた。


「本気を出すのか」


『このままでは谷が崩れる』


フェルザードは小さく鼻を鳴らす。


そして。


一歩、前へ出た。


次の瞬間。


――ドォォォォォォン!!


凄まじい魔力が地下空間を埋め尽くした。


「っ!?」


ダンが息を呑む。


空気が重い。


圧倒的だった。


今まで感じていたフェルザードの魔力など、ほんの一部だったのだと理解させられる。


黒い魔力が、地下遺跡全体を覆っていく。


ヘルウルフたちが一斉に伏せた。


本能的な服従だった。


カヤが震え声を漏らす。


「な、なにこれ……」


リーフェも顔を強張らせる。


「古竜級……!」


いや。


それ以上だった。


フェルザードの身体が、ゆっくり光に包まれていく。


黒い鱗。


巨大な角。


黄金の瞳。


その姿が、少しずつ“竜”へ近づいていく。


完全顕現ではない。


だが。


それでも圧倒的だった。


『押さえ込む』


低い声と共に。


フェルザードが片手を巨大魔力核へ向ける。


瞬間。


暴走していた魔力流動が、強引に固定された。


ブゥゥゥゥン!!


巨大魔力核が激しく震える。


まるで抵抗しているみたいだった。


だが。


フェルザードは動かない。


『静まれ』


その一言だけで。


空間そのものが、止まった。


ゴゴゴゴ……。


暴走していた振動が、徐々に収まっていく。


エルメリアが息を呑む。


「力で……押さえ込んでる……?」


あり得ない。


本来なら精密制御が必要な古代施設。


それを。


純粋な魔力量だけで制圧している。


ダンが遠い目をした。


「もう意味分かんねぇ……」


その時。


フェルザードの視線がユウへ向く。


『今だ』


ユウはすぐ理解した。


フェルザードが無理矢理流れを止めている間しか、調整できない。


時間が無い。


ユウは中央水盤へ手を伸ばす。


「水質変化――!」


柔らかな波紋が広がる。


暴走していた流れへ、静かな調律が重なっていく。


熱。


魔力。


水脈。


全部を“落ち着かせる”。


その時だった。


巨大魔力核の中心から、強い光が溢れ出す。


ブゥゥゥン!!


地下遺跡全体へ、巨大な紋様が浮かび上がった。


エルメリアが目を見開く。


「認証術式……!」


光が、一直線にユウへ伸びる。


まるで。


施設そのものが、ユウを見ているみたいだった。


そして。


静かな声が、地下空間へ響いた。


『――継承者、確認』


全員の動きが止まる。


ダンが乾いた声を漏らした。


「……喋ったぁ!?」

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