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異世界温泉宿 ~使えないスキルと言われた俺、秘境の谷で温泉を作ったら人も魔物も通う場所になった~  作者: 堺久遠


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61 ミナがユウを支える

地下遺跡最奥。


巨大扉は、半ばまで開いていた。


その奥から溢れ出す青白い光が、空間全体を激しく脈動させている。


ゴゴゴゴゴ……!!


地下遺跡そのものが揺れていた。


中央水盤は不安定に波打ち、水路を流れる温泉水まで発光している。


「急げ!」


ダンが叫ぶ。


このままでは、“やわらぎの湯”そのものが崩壊する。


全員が巨大扉の奥へ走った。



扉の先。


そこは、さらに巨大な空間だった。


全員が思わず息を呑む。


「……なんだ、これ」


地下空間の中央。


巨大な球体が浮かんでいた。


青白い光を放つ、巨大魔力核。


無数の水路と術式がそこへ繋がっている。


まるで。


谷全体の心臓だった。


エルメリアが青ざめる。


「主制御核……!」


「つまり?」


「谷全域制御装置です!」


全然安心できない。


しかも。


その魔力核は激しく明滅していた。


不安定だ。


今にも暴走しそうだった。


ゴォォォォ……!!


空間へ膨大な魔力が吹き荒れる。


カヤが悲鳴を上げた。


「うわぁぁ!? 立ってられない!」


リーフェも結界を展開する。


「圧力が強すぎる!」


普通の人間なら近づくだけで吹き飛ばされそうな魔力。


だが。


ユウだけは、その核から目を離せなかった。


「……苦しんでる」


小さな声だった。


エルメリアが振り向く。


「え?」


ユウは、巨大な魔力核を見つめたまま呟く。


「流れが噛み合ってない」


地下遺跡全体が無理をしている。


循環が乱れている。


だから暴走している。


ユウには、それが感覚で分かった。


「整えれば……」


その時。


ドォォォォン!!


巨大な魔力波が炸裂した。


「っ!!」


ユウの身体が吹き飛びかける。


だが。


その瞬間。


ぎゅっ。


誰かが腕を掴んだ。


「……ミナ?」


ミナだった。


銀髪を揺らしながら、しっかりユウを支えている。


細い腕なのに、不思議なくらい力強い。


ミナは真っ直ぐユウを見た。


「無理しすぎ」


「でも――」


「一人でやらない」


静かな声だった。


だが強かった。


ユウは、一瞬言葉に詰まる。


追放されてからずっと、一人だった。


役に立たないと言われ。


居場所を失い。


自分だけで何とかするしかなかった。


でも。


今は違う。


ミナが居る。


仲間が居る。


その時。


グーちゃんがユウの隣へ来て、ふんす、と鼻を鳴らした。


さらに。


『支えるぞ』


フェルザードの低い声が響く。


ゼルヴァディスも静かに前へ出た。


「位相安定を行う」


エルグランが剣を抜く。


「周囲は抑える!」


ダンが笑う。


「結局総力戦じゃねぇか!」


「嫌ですの?」


セレディアが涼しい顔をした。


「いや嫌じゃねぇけど!」


空気が少しだけ軽くなる。


その時。


ミナが、そっとユウの手を握った。


温かい。


銀色の瞳が真っ直ぐ向けられる。


「……ユウなら出来る」


その一言が、不思議なくらい胸へ入ってきた。


ユウは、小さく息を吐く。


そして。


ゆっくり前へ出た。


巨大魔力核の前。


吹き荒れる魔力。


暴走寸前の循環。


だが。


怖くなかった。


一人じゃないから。


ユウは静かに核へ手を伸ばす。


「水質変化――」


次の瞬間。


柔らかな波紋が、巨大魔力核全体へ広がった。


ブゥゥゥゥン!!


地下遺跡が激しく発光する。


「来るぞ!」


ダンが叫ぶ。


膨大な魔力が一気に逆流した。


だが。


今度のユウは倒れなかった。


ミナが支えている。


皆が支えている。


ユウは歯を食いしばりながら、流れを整えていく。


暴れる魔力。


乱れた水脈。


噛み合わない循環。


それを少しずつ、“落ち着かせる”。


戦う力じゃない。


壊す力じゃない。


ただ。


乱れたものを整える力。


それがユウのスキルだった。


そして。


巨大魔力核の光が、少しずつ安定し始める。


エルメリアが息を呑んだ。


「循環が……戻ってる……!」


暴走していた光が、ゆっくり穏やかになっていく。


水路の震えも止まった。


地下遺跡全体へ、静かな温かさが戻り始める。


その瞬間だった。


ブゥゥゥン……。


巨大魔力核の中心へ、文字が浮かび上がる。


古代文字。


青白い光。


そして。


そこへ刻まれていた一文を見た瞬間。


エルメリアの目が見開かれた。


「……継承者?」


空気が止まる。


ユウだけが、静かに光を見つめていた。


まるで。


過去勇者が、自分を見ているみたいだった。

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