仕事を投げ出した人たちは
翌日、倉庫の樽の位置は指示どおりに整理されていた。
「そっちじゃねぇ!」
疲れた顔の作業員たちに、ジョックが怒鳴りながら指示を飛ばしている。
そんな中、へとへとのマルコが戻ってきた。
「色紐とペンキ、集めてきました……」
「よし。箱に色タグ、荷物に色紐つけてこう。
これで字が読めなくても仕分けができるようになる」
カイルは差し入れの揚げパンを配るために全員を集め、自分もそれにかぶりつく。
「箱に色タグをつけて、指示書から、それに詰める荷物に同じ色の紐を結んでって」
これなら字が読めなくても動ける。人を募るハードルがぐっと下がる。
「知り合いに相談したら、二十人くらいなら今日集められるって。
なんも知らないやつらが来るから、詰め方も教えてあげて。
初め大変だろうけど、ごめんね」
昨日ヘイミッシュを探し出して頼んだ頭数だ。
できるだけ堅気っぽい人材を頼んだが、どんなのが来るかは未知数だ。
「……ちょっとガラ悪かったりタチ悪かったりするかもしれない。
なんかあったらすぐ連絡ちょうだい」
薄いエールで揚げパンを流し込んで、カイルは倉庫番に指針の走り書きを渡す。
「はい。とりあえず一ヵ月、これでやってみて」
「……もし、他のお偉方に何か言われたら?」
「俺が決めたって言えばいい」
倉庫番はもうひとつ、言いづらそうに質問した。
「昨日帰っちまったやつら、もうすぐ出てくると思うが……あいつらはどうするんだ。減俸か」
「あいつらは、もういいよ」
「え」
「金を貰う意味の分からないやつらは、もう来なくていい」
騒がしかった倉庫が、一瞬、水を打ったように静まり返った。
マルコとふたりで商会へ向かう道を歩く。
昨日は日中に荷運びを手伝ったうえ、夜までヘイミッシュを探してうろうろしていたので、どうしても足取りが疲れている。
早く帰って昼寝しよう、と欠伸を噛み殺すカイルに、マルコが提案してきた。
「保管もですけど、運び方も見直した方がいいかもしれませんね。
海運と陸運ではコツが違う。うちのルートで食糧を運ぶの、初めてでしょう。
気圧のこととかも考慮しないと」
「ああ、なるほど。……詳しいね?」
「子どもの頃に実家で手伝ってました。
うちで働くようになってから、随分違うもんだと驚いて……たぶん、緩衝材もあった方がいいす」
「緩衝材かぁ……また金ががかかるなぁ」
どうしてこんな仕事を海運部門でとってしまったのだ。
「うちが取引してる造船所でさあ、おが屑を捨ててるだろ?
あれでいいんじゃないか?
衝撃を吸うし、断熱にもなる。
処理場よりここの方が近いし、処分してやるって言えば、きっと欲しいだけくれるよ」
「やってみましょう」
それから少しの間黙っていたマルコが、視線を外して低く言う。
「……ブレアさん、けっこう、ちゃんと厳しいとこもあるんすね……」
「え?」
「いや、あんまり、クビを切るとかしないタイプかと」
予想もしなかったことを言われ、カイルは首を傾げる。
「え? さっきの?
だって、働かないのにお金貰えるの、おかしくない? どこが厳しい?」
マルコが残念な生き物を見るような顔をする。
どういうことだろう。
「いや、病気とか怪我なら、もちろん治ったらまた雇うよ?
余裕があれば、少しくらいお見舞金も出す」
「……や、そうなんですけど」
「え? だって、お金を貰うために働くんでしょ?
働かないなら、貰えないでしょ?」
「……そっすね」
言い募ってみたが、マルコからそれ以上の説明は得られなかった。





