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◆ ジェネルのいない戦い


 私は夢を見ていた。


ーーなんで、これが夢って分かるんだろう?

 不思議に思いながら、薄暗い中を彷徨っていると、私がよく知っている顔が…… 深刻な様子で立っていた。


 あれは?司祭…… ?


 司祭がロシュの実を食べていた。

 ああ、覚えているよ。 ロシュの実って、3年前に流行った伝染病の治療薬だ。

 私の旦那も…… その伝染病で死んじゃったもんね。


 なんで司祭が、ロシュの実を食べているんだろう?


 あれ? 司祭… ?

 なんで? なんで?



「 ん…… う、うん…… 」


「 気がつきましたか? ジェネルさん。 分かりますか?」


 泣きそうな顔で、聖女ソレイエが私の顔を覗き込んでいた。


「…… せ、聖女ソレイエ…… 無事で…良かった…… 」


 私は喉がイガイガして、掠れた声で小さく呟きながら、そっと聖女ソレイエの頬を撫でた。


「ジェネルさんに、助けていただいて…… 本当に…… 本当に…… って、なんであんな無茶したんですか!!」


 頬に添えられた手の上から、自分手を重ね合わせ、目に涙をいっぱい溜めて、聖女ソレイエは嗚咽を漏らしていた。


「うっ…うう…… 私なんかのために、ジェネルさんが!…もし何かあったら……私……私……ううう…」


 とうとう本格的に泣き始めてしまった。

 隣では風使いフレが、聖女ソレイエの肩をしっかり抱きしめ慰めている。


 寝起きから…… もしかして、見せつけられているのか?


「ゴホン、聖女ソレイエ、心配かけてごめんね…… でもね、私なんか…なんて、悲しい事を言わないで…… 聖女ソレイエは、かけがえのない大切な仲間なんだから……ね? あ、ごめんね、それで司祭はどこかな?」


 泣いていた、聖女ソレイエは司祭な名前を出した途端に秘書モードに入ってくれた。


「あっ、司祭様は、他のメンバー達と一緒に、南東の森の事後報告に行ってますよ。 今回の討伐で、城に近い森半分の浄化と魔物討伐に成功したんです。 また明日には、残りの森全てを片付けるって事らしいです」


「そっか、明日ね。じゃあ、私も早く治して明日こそ頑張らなくちゃね」


 起きようとした私を、聖女ソレイエはベッドに押し戻した。


「ダメです! 本当にまだダメです! フェニちゃんに最後、ゴッソリとチート能力を吸われて、ジェネルさんは魔力枯れを起こしているんです! 明日はここで、休んで待っていてください!」


「へっ?あっ!そういえばフェニちゃんは?」


「フェニちゃんはジェネルさんを助けて、私たちに預けたら、消えちゃいました」



「えっ?」

 言われた私は自分の頭に手を置き、フェニちゃんを探したが…… やっぱりいない。


 ショボンとしていると、扉をノックする音がした。

 

 聖女ソレイエがそっと扉を開けると、白い人…… じゃなくて、聖者さんが立っていた。


「ジェネルさんが目覚めたようなので、少しお話ししても…? 大丈夫ですか?」


 聖者クラスになると、近くにいなくても、私が目覚めた事とか色々察知出来るんだね。

 私がしきりに感心していると、


「ジェネルさん、お加減はいかがですか?」


「はい。だいぶ楽になりました。

 聖者さん、お話って何ですか?」



「はい。実は…… ジェネルさんの頭の上にいた鳳凰フェニックスのことです。今はどこにもいないのですね」


「そうなんです。私、途中から意識が遠のいて、目が覚めたらフェニちゃんは、いませんでした」


「フェニちゃん……」


 私が嬉しそうにコクコクすると


「あっ、ああ、そうなのですね。 可愛い名前ですね。 それでですね、今まで司祭様たちには、既にお話しが終わってまして…… 目覚めたばかりで恐縮ですが…… 覚悟して、これからのお話を…… 聞いてくださいますか」


 部屋の空気はピーンと、張り詰めたものに変わった。


「覚悟ですか?分かりました」


「それでは聖女ソレイエさんと風使いフレさんもご一緒に聞いてください」

 

 二人は息ピッタリで揃って頷いていた。


 

 うん。あえて何も言うまい・・・



「ジェネルさんが頭に鳳凰フェニックスを乗せて、この王国に来てから…… 私は、城にある…… あらゆる文献や古文書などを調べ尽くしました」


 今度は三人同時に頷いた。


「そこに…… 何故だか……、今まで記載されていた、全てを…… ジェネルさんが… (くつがえ)しているのです…… 鳳凰フェニックスが…… たった一日で、あれ程までに…… 一気に成長が進む事など、あり得ないのです。それはジェネルさんの、せいとしか思えません」


「私のせいなんですか!?」


「いや、あの、いえ、責めている訳ではありません…… ただ…… ここからは、二つ仮説があるのですが……」


 そこで聖者さんは、下を向いてモゾモゾと言いにくそうにした。

 私は、聖者さんに言いやすくなる様にニッコリ笑って、その先を促した。


「あの…… その…… ジェネルさん。

怒らないで聞いてくださいね……

ジェネルさんは、その……年齢を召してから、チートを授かったので、他の方より…… とっても濃厚で、チートの密度が高いのだと思います。 そして二つ目が大事な仮説なんですが…… もしかしたら… 大魔王の復活が…… あるのかも知れません」


「えっ? 大魔王の復活? それがなんで、フェニちゃんと関係するの?」


「はい。大魔王の復活は…… 鳳凰フェニックスの事だけ、ではないのです。今回、ノブレス国からお越しの…… チートメンバーの方々が、ことごとく歴代史上の力を持っている事が驚きなのです。古来より


 〈その女神

  大弓を引き

  かのものを鎮める

  大魔王蘇りし時

  伝説の勇者と固い絆の同志たち

  鳳凰フェニックスは羽ばたき

  青き水龍が国を治めるだろう〉


 という、伝説がこの王国には伝わっているのです」


「フェニちゃんは羽ばたくだけ?」


 私は一度で、全てを理解出来なかったので、重要なフェニちゃん情報一本しか耳に入って来なかった。


 なんだかんだと流石は我が国の秘書聖女ソレイエ様!噛み砕いで私に説明してくれた。

 やっと話が通じた私は


「それじゃフェニちゃんは、満足して成長したから私から離れて…… 穴に落ちた、あの時も、私が呼んだから… 助けに来てくれたんだね…… フェニちゃん、出来る子だわ」


「それでは、問題は大魔王復活ですね… 」


 深刻な声で聖女ソレイエは呟く。


「実は、南東の森には秘密があります……

南東の森と西の森の接点に〈最果ての淀み〉があるのです。 遥か昔から、その淀みは存在していて魔物は…… その淀みから生まれると言われています。 しかし…… ここ数百年とスタンピードを起こすほどでは、無かったのですが…… 」


 聖者は後出しになってしまった説明を、申し訳なさそうに話してくれた。


 私は説明を聞いて、余計にベッドに寝ている事なんて出来ないと思った。

「ねぇ、やっぱり私も、明日討伐に行っても良いかな?」


「「「ダメです!」」」


 うわー声が揃った。


「ジェネルさん、明日無理することは、死にに行くようなものです。 体調を治して、次の戦いに備えるのも…… ある意味、戦いなのですよ」


「聖者さん…… でも…… 」


 私は、みんなの力になれない事が悔しくて、下を向いて思わず拳を握りしめていた。




 次の日の朝、私のベッドを囲んで、みんなが出立の挨拶をしてくれた。


「ジェネルさん、行ってくるよ!ベッドの中で応援してくれよ!」


「ジェネルさん、夢の中で応援してください!僕はジェネルさんを守れないと知ったので、今回は大人しくしていてください」


「ジェネル、そう言うこった。ジェネルの戦力は、大魔王の復活の戦いの時に役に立ててもらうから。だから昼寝でもしてな」


 私の目には、みるみる涙の膜が張り、紡ぐ言葉が震える


「み、みんな…… うん! ベッドの中で…… もう!必死に応援して…… それで…… それで…… みんなの無事を祈ってる!頑張ってね!ここで、待ってるから!」


「おい!何しんみりしてんだよ!勇者フォールここにあり!俺がいれば大丈夫なの!じゃあ、みんな行くよ!」


 元気よく、俺が一番とばかり最初に部屋を出た勇者フォールに続いて、みんなが南東の森に向かって行った。



ーーやっぱり、フェニちゃんに沢山、力を吸われちゃったんだわ…… クラクラする


 みんなを送り出して、ベッドで横になっていると、私の部屋をそっと覗く小さな影。


「火の頭のおばちゃん…… 」


 ローラちゃんが顔を覗かせた。


「あっ、ローラちゃん。えへへへ…… ごめんね。 今回はお休みすることになっちゃった。 でも治ったらまた、魔物を倒しに行くからね」


「火の頭のおばちゃん、お怪我したの? 痛くない?…… 私…… おばちゃんが早く元気になってくれた方が良い…… 」


「うわー優しいね。 ありがとう……ん? それにしても、おばちゃんがこの部屋で寝ているの、誰に聞いたの?」


「お姉さまから……ジョリアンお姉さまに聞いたの」


「えっ!ジョリアン王女様? あの壮絶美少女のジョリアン王女?…… えっ?て、ことは…… ローラちゃんも王女様!? ただの貴族の子じゃないの?」


「えっ?ハイ。じゃない…… うん。 

オサーム王国、第二王女ローレルラでございます。 えーと、お姉さまが、あまり堅い言葉よりも、くだけた言葉が良いって…… だからおばちゃんと言います」


「ハハハ。 うん、そうだね。 確かにおばさまって言われたら、鳥肌立っちゃうかも。

おばちゃんはね、かしこまった言葉に慣れてなくてね、大丈夫? 話しづらかったら、ごめんね。 おばちゃんもローラちゃんって、今まで通り言っても良い?」


 ローラちゃんは顔を輝かせて


「はい!…… じゃない、うん!」


 大きな返事をしてくれた。


 ローラちゃんはママを亡くしてから、人恋しいのか、モジモジしながら私の布団に入ってきた。


 私とローラちゃんは、暫く他愛もない話しをしていたが、暖かい日差しと温もりのせいかウトウトと微睡の中に落ちていった。  



     白い人 聖者プルーヴ


    挿絵(By みてみん)

 










最後まで読んでいただきありがとうございました。

とても嬉しいです。


東南の森を南東の森にと誤字報告をいただいて

ありがとうございました。

調べてみるとどちらでも大丈夫なようなので

このまま掲載することにしました。

引き続きよろしくお願いします。


主人公はおばちゃんですが良い奴なんです。

どうか最後までどうかお付き合いください。


楽しく読んでいただければと思います。

これからもよろしくお願いします。


よろしければブックマークの登録と高評価をお願いしますm(__)m。


そしてこれからの励みになりますので


面白ければ★★★★★をつまらなければ★☆☆☆☆を押して


いただければ幸いです。

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