◆ 第二王女ローレルラ
国王をはじめ、皆々様と会食を終えると、司祭の部屋で明日のためのミーティングをする事になった。
負傷兵たちを回復していた、聖女と賢者、風使いも戻ってきて勢揃いだ。
司祭はまず、ジェネルに噛み砕いて説明した。
「 良いかい? 聞いていなかったジェネルのために、まずはフェニックスの事を話すよ」
私は大きく頷いた。
「 ジェネル、フェニックスはね、〈聖なる焔〉の発現時に、時空の狭間から生まれてくるそうなんだ。 だから今のフェニックスは、まだ生まれたての赤ちゃんと、一緒なんだって。 だから親鳥みたいな、ジェネルの側を離れないらしい。 それと…… ある程度、育って満足したら、普段はそばにいなくても、呼べば来てくれるらしいよ……
ここまで分かる?ジェネル 」
「 うん!分かるよ。フェニちゃんは
直接産んでない私の子供なんだね。
道理ですぐに情が湧いたんだわ。
じゃあ、フェニちゃんの満足感が
上がるまで、私の頭は鳥の巣で
構わないわ 」
「 うっ、うーん。微妙な解釈だけど
概ね合っているから、次に進むよ。
それで明日の討伐で、フェニックスを
連れて行ってしまって…… ジェネルにどれくらい火使いの支障が出るのか……。
全くの未知数なもんだから、一緒に連れて行こうか…… 迷っているんだよ 」
「 えっ? フェニちゃんがいたら、まずいの?」
「 そのフェニックスは、ジェネルのチートの炎をエサにしているんだって。 だから絶えず、チート能力を吸われ続けているから……どうなるのか、分からないらしい。
そこまでの文献は、残ってなくてね 」
ーー司祭の言う事、分かるけど…… 私は、みんなの役に立ちたい
「そっ…… そうなんだ。今のところ、私、何も変わらないよ…… 大丈夫じゃないかな? みんなのこと心配だし……」
本当に不思議だ。 戦いが怖くない訳がないはずなのに! なのに、みんなの力になりたいって、本気で思うんだもん。
なんだかやけに……穏やかに、静かに司祭が話す。
「みんなはどう思う?」
みんなは考え込んでいる。
しばらく誰も口を開かない。
沈黙が重い……
なのに、突然に緑使いハキムが両手で握った拳を胸の前にして
「ジェネルさん! 僕は、正直言って……
あまりにも早く、チート能力を上げて……
オマケにフェニックスまで召喚して……
自分が情けなくて、悔しかったんだ!
でも、この旅で、誰よりも人の話を聞いて、歳を言い訳にしないで… 誰よりも努力していたのを見て来たんだ。 だからジェネルさん! 一緒に行こうよ! ジェネルさんに何かあったら、絶対守るから!」
このチートメンバーで、一番影が薄くて、喋らなかった、緑使いハキムが一番熱い奴だったなんて!!おばちゃんビックリだよ!まだまだ人間観察足りないね。
「うん!ありがとう!緑使いハキム」
思わず、私はウルッと込み上げるものがあった。
だが、そんな良い雰囲気を壊すように、勇者フォールが目を細めて、私に話しかけてきた。
(何よ!行かさない気!?)
「ところであのさ、今更だけど、この旅からずーーーーーと、気になっていた事があるんだよ。ジェネルさん」
「うん…、な、なに?勇者フォール」
「そう!それ!何で、いちいち勇者とか、聖女とか、賢者とか名前の前に称号つけんの?」
ビクーーーー!
ビクビクビクッ!!
バレてたの? みんな、華麗にスルーしてくれているのかと思ったのに!
私は覚悟を決めて、年寄りあるあるを披露する羽目になった。
「ア…ハハ……だって…… 旅の前夜から、みんなの名前を覚えようと、頑張ったんだよ? 称号と名前が違ったら悪いから、まずは一緒に覚えたのよ。 そしたら、一緒じゃないと呼べなくなっちゃってね…… 旅が始まっても、なんとか称号と切り離して、名前だけで呼ぶ練習もブツブツしてたんだけど」
みんなは気の毒そうに、ジェネルを見ていた。
ウルウルウル……
「そうよ! おばちゃんは…… おばちゃんはね…… 一度覚えた事を…… 覚え直すのが出来ない、生き物なのよ!くっ!」
ババン!と最後は居直るしかなかった。
一緒に旅をした、チートメンバーは初期のジェネルさんの怖いブツブツのつぶやきの意味を、やっと知ったのだった!
そして私は、次の日のスタンピード討伐について行く事が出来る事になった。
もちろん、これからも称号と名前のセット呼びは許してもらって。
ーー明日は討伐かぁ〜
ジェネルは前回の戦いを思い出して少し緊張していた。
ーーやっぱり、強い魔物だって言っていたから、覚悟しなくちゃ駄目だよね?
私は、少し喉が乾いたから、深夜の廊下を厨房探してウロウロしていた。
(確か、こっちの方に厨房があったような? えっ、なんの音? )
シクシクシク・・・
ん?
シクシクシク・・・
んん?
シクシクシク・・・
ひゃーーー!オバケ!!?
私は声も出せないで、尻もちをついた! 魔物と戦っているくせに、正体が分からないものは怖いのだ!!
辺りをキョロキョロして助けを探すが。
あれは、子供じゃない!
「しくしく……
だれ?…… ばあや?
しくしくしく……ママ……」
小さな女の子が、とても大きなフワフワしたぬいぐるみを抱いて泣いていた。
おばちゃんは正体が分かったなら、もう怖くない。 むしろ泣いている子供に、母性愛が炸裂する生き物だ。
ジェネルは、小さな女の子をそっと抱き上げた。
「 おばちゃんはね、メイドじゃないのよ。 どうして泣いているの?」
私を近くで見た女の子は、頭にフェニックスを乗せた、髪が燃えているおばさんに、泣くことも忘れて、強烈なショックを受けていた。
持っていたぬいぐるみを落とし、呆然としている。
私は頬をポリポリ掻いて
「あ、ああ。そうだよね。 ビックリしちゃうよね。 でも大丈夫なんだよ。 おばちゃんの頭は燃えているように見えるけど……
あ、燃えているけど…… えーと…… 熱くな〜い。 なんてね。 頭に乗っているのは、フェニちゃんだよ。 この子も触っても、熱くないよ」
自分史上、一番優しい声で語りかけた。
「熱くないの? 燃えてないの?」
「 うーん? 正確には燃えているんだけど、熱くないんだよ。 この炎でね、悪い魔物をやっつけるんだよ 」
「悪い魔物!?…… ママを殺した、悪いやつをやっつけてくれるの?……ママは… ママは…… うわーーん」
「えっ!ママが魔物に…… そっかぁ…… そうなんだね…… おばちゃんね、仲間がいるの。 強くてカッコいい仲間なんだよ。 それでね…… その仲間達と一緒に、この国を狙っている悪い魔物を、絶対にやっつけて…… ママの仇をとってあげるね!
約束!!」
「約束?…… 本当? 約束してくれるの?
ママの仇?とってくれる?」
「うん!仇を取るよ!アナタの名前は?」
「私は…… ローレルラ」
「可愛い名前だね。ローレルラ…… 略して、ローラちゃんだね。 ローラちゃん、おばちゃんも頑張るから、もう泣かないで。
ゆっくりおやすみ」
私はローラちゃんを、抱き直し、いつも孫のレイを寝かしつけるように、背中を優しくゆっくりとトントンした。 暫くすると、目をトロンとさせた、ローラちゃんの寝息がスースーと聞こえて、私はホッとした。
ローラちゃんを探し回って、血相を変えたメイドや、ばあやさんを見つけたので、声をかけたら、ギョッとされたが、グッスリ眠る子を起こさないように、ゆっくりと手渡した。
そして、ついでと頼んだお水を飲んで、一息つく。
ジェネルはローラちゃんの悲しみに心が引っ張られていた。
( レイと歳も変わらないのに… ママを亡くすなんて…… 私に出来ることって…… この旅で、少しは強くなったよね? いつになったら自分に自信が持てるんだろ?…… ローラちゃんの仇… 絶対にうってあげたいな!)
長い夜が明けるのだった。
王城の広場では、戦いに備えたチートメンバー達の他に、城の兵士や魔法士達が準備に余念がなかった。
そこへサマール国王様が激励の挨拶をしにきた。
「昨日の聖女様のおかげで、少しの兵と
魔法士を連れ立てて行けよう。
そしてどうか、南東の森の魔物達を
殲滅してほしい。 ノブレス国のチートたちの…… ご武運を祈る!」
私たちはオサーム国王の前で頭を下げ、了承の意思を示した。そして顔を上げると、直ぐに南東の森へ向かったのだった。
◆◇◆◇ 南東の森、入り口
水使いカインが、ドス黒く澱んだ空気に顔を顰めた。
「うっ!森に入る前から凄い瘴気だ…… 私たちは、チートのおかげで、少々の瘴気には耐えられるけど、普通の兵士や魔法士達は、残念ながら無理だろう。仕方がない、ここで待機してくれ」
確かに既に兵士たちや魔法士達の顔色は悪い。 兵士や魔法士達も、入り口で待機する事すら、本当は困難な筈だ。しかし
「申し訳ありません。 では、私たちに出来ることがありましたら、なんなりと申し付けください。 こちらで待機しております」
私達は、兵士や魔法士達の気持ちに、心が暖かくなった。
しかし…… 水使いカインは、オサーム王国に頻繁に来ているのか、兵士さん達とも顔馴染みのようだ。友達のように、スムーズに話が進む。
ーー水使いカインは、城の兵士さん達を統率するのが上手いね。
おばちゃんは気づいちゃったのよ。
壮絶美少女の王女を落とすには
『周りから固めていこう作戦』なんだね。
フフフ、カイン、青春だね〜
第二王女ローレルラ
最後まで読んでいただきありがとうございました。
とても嬉しいです。
主人公はおばちゃんですが良い奴なんです。
どうか最後までどうかお付き合いください。
楽しく読んでいただければと思います。
これからもよろしくお願いします。
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