◆ 青臭いも交われば癖になる
なんだかんだと、私を鍛えることで、みんなは、より一層結束していった。
私も最初は、この青春の青臭さに小っ恥ずかしく感じることがあったけど、最近はなんか癖になりつつあった。嫌じゃないかも…… 私、みたいな。
そして私は気がついた。 なんか、火使いだけとか水使いだけとか単品で使うより、合同複合技を繰り出す方が威力は凄い! 早速提案すると
「そんなの当たり前じゃん! でも、まずは実戦をもう少し積んでよ、ジェネルさん。 実戦して呼吸を合わせられないと、逆に危ないから」
「うっ! そういえばそうか、ごめん。 明日は森の中を抜けるんだよね。 やっぱり魔物が出る? ここのところ大分私の炎も調子良いから。 もう少しステップアップできると思うんだけど 」
「 うん、確かに。実力は、確実に上がっているよね 」
だが、そこで調子に乗りやすい私は釘を刺される。
「ジェネルさん、いくら強くなったと思っても油断してはダメですよ」
聖女ソレイエは、秘書気質が強いので、気の緩みには特に厳しい。
「はーい、気をつけます」
〈老いては子に従え〉だもんね。 私は聖女ソレイエに苦笑いを浮かべた。
明日のために夕飯を済ませると、早めに休む事にするチートメンバーだった。
ーー旅立ちの日から今日でほぼ二週間になろうとしていた。
この森を抜けると、オサーム王国になる。
王国に着くと、こことは反対の森にスタンピードがおきている。
そして、この森を抜ける先に、先発隊の闇使いフォンセと風使いフレ2人が合流する予定だ。
「 みんな気を引き締めて。 注意を払って、この森を抜けよう」
最近、存在を忘れかけていた司祭の言葉に今では私も元気な声で「はい!」と気合を入れて返事をした。
(この森に入ってから、間もないのに…… 何故こんなに異様な静かさなの?)
森は私が思っていたより、深く暗かった。しばらく歩いていると、今まで嗅いだこともないような、すえた臭いがする。
ーー臭い!なんでこんな臭い…… 今までの森とは何かが違う。うん、明らかに違う!
私は思わずチートメンバーたちの顔を見渡すと、みんなの顔にも緊張が走っていた。
森の温度もグッと下がり、静か過ぎるせいか耳がキーンとして…… ただ私たちメンバーの草をかき分け、踏みしだく足音だけがあるだけでも安心する。
一瞬、私達を覆う影が出来た。
サーーーーっと上空を目にも止まらぬ速さで何かが横切った。
賢者サージュが
「 なんだ? まるで偵察隊だ。 魔物なのに。 知恵があるのか?」
自分の言ったことが信じられないように驚愕していた。
司祭も
「今までと同じとは行かないようだ。いいか、みんな。様子が分かるまで、あまり離れずにいるんだ」
勇者フォールが
「俺とサージュが先頭に立つよ。左右はカインとハキムが守って。聖女はみんなの怪我を治してもらうために、最後まで残ってもらわなきゃ。司祭が後方を守って、ソレイエを襲うやつを、ジェネルさんが攻撃して」
的確な判断に素直に勇者フォールの言うことに従う。
「おう」
普段とのギャップが凄い勇者フォールに思わず私は唖然とした。
(この子!出来る!)
前線のすぐ後ろに、私と聖女ソレイエがいて最後尾を司祭デュールが守ってくれた。
なかなかこの匂いに慣れないなぁと思いつつ、私達は一歩一歩と前に進んでいった。
「来た!」
勇者フォールの一声に、みんなは前に目を向けた。
魔物の群れが、前方の雑木林からゾロゾロと現れる。魔物を覆う黒いオーラがユラユラと揺れている。
「なんて数だ…… 」
( 私でも分かる! 数だけじゃない! 今までの…… どの森より、魔物のランクが高い)
数の多さも相まって私の心臓がドキドキと強く打つ。変な武者震いまでする。
でも…… こんな時だからこそ、落ち着け! この旅の途中で、何度もみんなから言われた言葉。
こんなシチュエーションを想定して、言った言葉ではないかもしれないけど、繰り返し言われた言葉は、50歳のおばさんでもしっかり心に刻まれているのだ。 多分……。
前後左右と守ってもらっていた私は、辺りをよーく観察していた。
なにかが、おかしい?
おばさんの勘が訴えている!
あっ…………!!
囲まれている!
「みんな、魔物に囲まれているわ!」
「やっぱ、そうか。魔物?いや、上級魔族たちの距離が一気に近づいている!!
キタッ!!みんないくぞ! 詠唱キール!」
勇者フォールは詠唱キールを呟き、素早い剣技はあっという間に前方一列を吹き飛ばした。
(速い! )
賢者サージュは詠唱リストと呟き突っ込んできた魔物を力強く押し倒していく。 どこにそんな力があるのかと思うほどに上級魔物を掴んでは振り回して魔物を蹴散らしていく。
(あんなに、普段は静かなのに!)
水使いのカインは詠唱レケンスと呟き、大きなカッターのように強力な水の勢いで魔物を刻んでいく。
(あれで大根を切ったら凄いわ!)
緑使いのハキムは詠唱ソレルスと呟き、植物の蔓を操り魔物たちを締め上げていた。
(薪を一気に運ぶのが便利ね!)
司祭は土使いの詠唱ワレーンスと呟き、後ろから来る魔物をえぐった土に大きな岩を落とし絶命させていく。
(冬の漬物石に最高だわ!)
私は聖女ソレイエを守る事に集中しながら仲間達の戦いに賛辞を贈っていた。
まだ仲間たちに余裕があるので…… 私は聖女ソレイエを守りながら状況を観察していた。
突然、聖女ソレイエが引き攣った声を上げた。
「ひあっ!」
「どうしたの?聖女ソレイエ?」
「あ、あれ!」
いつも冷静な聖女ソレイエが、口元に手を当てガクガクと震えているではないか。
見上げた空に大きな黒い羽を広げて旋回している、明らかに魔力と知力が高そうな、高等魔物の大群が! 今まさに!コッチに急降下で突進して来ていた!
あまりの速さに、精一杯の大声を張り上げた私!
「みんな上!」
声を張り上げたけど、ただの魔物では無く大量の上級魔族を相手しているチートメンバー達は、一気に間合いを詰められ攻め込まれてしまった!
激しい炎の旋風!
同族の上級魔族達も構わず犠牲にした。
「くっ!」 「うわっ!」「……」
一息間に合わず、空からの高等魔族の攻撃を躱すことが出来なかった。
(そんな!ほんの一瞬で!!)
私の目の前で、あっという間に沢山の魔族死骸と負傷したチートメンバー達がいた。
(なんてやつら!自分の仲間まで!)
私と聖女ソレイエには、攻撃してこない。
私とソレイエを避けて、まるで…… もて遊んでいるように、再び頭の上をグルグル回って、いつでも襲うぞと脅しているようだ。
(舐めたマネを!!)
私は沸々と激る怒りでワナワナと震えていた。
聖女ソレイエは、攻撃されて負傷した仲間を見て、すぐに冷静さを取り戻していた。
倒れた仲間や私を守るため、詠唱ベオと唱え、守りの魔法陣をかけるとドームの様なものでみんなを囲った。
「ジェネルさん、ドームの中では攻撃は出来ません。暫くは、このドームの中で様子を見ましょう」
聖女ソレイエはドームの中で癒しの力を唱えてようとしていた。
だが、守りのドームを維持しながら癒しのチートを一緒に使う事が難しいようだった。
「くっ…… 」
「はぁ…… うっ……」
私は何も出来なかった事が歯痒かった。そしてみんなに申し訳なかった。
(みんなは命懸けで戦っていたのに……)
だが、おいそれと敵も休ませてくれないようである。
ドーーーン!
バシッ!!
ドーーーン! ドーーーン!
私達が入っている、ソレイエのドームに体当たりをしたり、持っている武器で攻撃して壊そうとしている。
「うっ!…… 」
勇者フォールが目を覚ました。
「ソレイエ…… 、このままじゃ……」
「待って、今すぐみんなを治すから!」
だが、
「きゃー」
ソレイエはドームの方に聖力を使っていて、外の激しい攻撃に耐えるのが精一杯のようだった。
みんなは負傷しながらも覚悟を決めて戦おうとしている。
ふらふらしながら立ち上がろうと。
「みんな、ダメよ!今、出て行ったら死にに行くようなものよ!」
私も必死に止める。
「みんな、駄目だよ!!」
「だか、このままでは…… どっちにしても」
「ああ、そうだよ…… 」
「み…… みんな、行こう…… 」
聖女ソレイエが必死に泣きながら止める!
「お願い!!みんな!やめて!!」
ソレイエが不安定な気持ちになったせいか、守りのドームが揺らぎ弱くなった。
(今なら出られる!)
ブチッブチ!!
私の堪忍袋の尾はとうに切れていた…… 負傷した仲間たちをみて、冷静さはぶっ飛んでいた!
「ソレイエ、ごめん!」
あれほど言われた〈落ち着け!〉はどこかにぶっ飛び、興奮した私は一人、魔法陣から飛び出していた!
(許せない!!よくも大切な仲間を!)
私は・・・!
私は・・・!!
私は・・・!!!
心の奥底から怒りが込み上げていた!
身体中の血が沸騰するような…… !
溢れそうな…………! この力は!?
凄まじい唸りを上げて、ゴゴゴゴゴと私たちの周りに地鳴りが起きる。
ジェネルは身体の中を巡る熱い流れに身を任せた。 足元にはあの日、〈チート〉を授かった日に見た、赤い魔法陣が現れた。
「あんた達! そこの魔物たちよ!
おばちゃんを……!
おばちゃんを……!
舐めんなよーーーーー!!」
空気の読める聖女ソレイエは、咄嗟に守りのドームを強靭に張り直した。
私の身体から発せられた炎が、巨大津波のように辺りを焼き尽くし、地上の上級魔族も空にいた高等魔族たちも一瞬で焼き尽くしていた。
「えっ? すご!!」
おばちゃん、ジェネルが一番驚いている。
そして…… 空の彼方から、炎鳳のフェニックスが突如現れた。
私の炎でポッカリと空いた森は見晴らしが良いのか…… 。
兎に角、私の元に一直線に向かってくる、炎を纏った美しい鳥。
ジェネルは目を瞬かせ固まっていた。
(あれば鳳凰?…… フェニックス?)
ーーえええ!!
どうすれば良いの?
避けるの?
逃げるの?
火傷しない?
まさかの攻撃しなきゃなの?
一瞬でクルクル考えが巡って、身体は全くもって動かないのに…… もうそこまで来ちゃってる!
(あああああ!キターー!!)
覚悟を決めて…… ビクビクとフェニックスを迎え入れる。
私のそばに来ると、目の前で大きな翼を広げて空中浮揚していたフェニックス。
だけど徐に、ちょこんと身体を畳んで、頭の上に止まった。
びっくりした私は
「ぎゃっ!!熱い!…… あ?熱くない?」
フェニックスの炎が私に移っても、全然熱くない。
寧ろフェニックスは私の髪の炎を吸って、より大きく炎を纏った翼を広げている。
フェニックスは頬を、私の頭にスリスリして寛いでいた。
私がフェニックスで、もたもたしている間に、聖女ソレイエの〈癒しの光〉でチートメンバー達は軒並み全回復したようだった。
「ねぇ、ジェネルさん…… さっきの、あの炎なに?」
回復した賢者サージュが厳しい顔で質問してきた。
相変わらず頭のフェニックスが気になって気もそぞろな私だが
「えっ? いや、その…… なんだろうね? 私はただ、みんながやられたのがすごく悔しくて悲しくて、気がついたら…… 気持ちが爆発?……したみたいな?」
またもや戦闘用語は分からないし、実際に自分も本当に何が何やら分からないので…… 私はしどろもどろに説明する。
黙って聞いていた司祭が重く口を開いた。
「さっきの戦いで、ジェネルが放った炎は通常のものではないよ。あれほどの威力と、あの見たこともない光を纏った赤い炎…… 伝説の〈聖なる焔〉じゃないか思うんだ」
「〈聖なる焔〉?なんだよ!それ!」
回復したら、途端にうるさくなる勇者フォール。
「…… 亡きアリエルさんの炎を、みんな覚えているだろう? それと今の炎は明らかに違うって分かるはずだ。 私も古文書で読んだことがあるくらいだが…… 何より、伝説の火の鳥フェニックスが現れた…… フェニックスは確か…… 同じ聖なる焔の属性が発現すると…… 現れると言われていたはず」
私は素直に司祭に質問する。
「あのう…… 火使いにはみんな…… もれなくフェニックスが付いてくるんじゃないの?」
「んな訳あるか!初めて見るわ!!オマケに羨ましいわ!!」
勇者フォールは羨ましさと悔しさを滲ませて少し拗ねてしまった。
「こりゃ凄い事になったな。文献でも確か…… 前回フェニックスが現れたのは、もう数百年も前だから」
司祭は私とフェニックスがじゃれている様子を感慨深げにみている。
そうか、司祭に教えてもらった〈聖なる焔〉。
フェニックスと同じ属性の聖なる炎かぁ。フフフお揃いだ。
孫のレオ不足の私は、フェニックスに対して既に情が湧きつつあった。
「さぁ、今のうちに…… 早くこの森を抜けないか」
突然の水使いカインの声掛けにみんな素直に従ったが……。
私はいつも落ちついているカインが、少しソワソワして見えた。
(カインたら、トイレかしら?)
当面の心配として私はみんなに聞いた。
「あの…… ところで? フェニックスはこのまま?」
私は人差し指を自分の頭に向ける。
このまま頭にフェニックスなんて、悪目立ち過ぎるだろう。
賢者サージュは困った顔をして
「ジェネルさん、みんなもね初めての事だから解決方法が分からない…… 。うん、このままで行こうか」
「…… そうか、そうだよね。ちょっと期待して質問してみただけ……えへへ」
おばちゃんは納得したら諦めも早い。
それから歩く道すがら、ちょこちょこ現れる魔物たちを討伐しながら進んで行った。
暗い森の前方で明るく丸い光が見える。
もうすぐ森を抜けるようだ。
私の頭に…… フェニックスを乗せて。
「みんな!大丈夫だった?!さっき凄い炎の爆発的な光が…… み…… え…て……!?
えっ?ええええええ!!ジェネルさん!」
(ああ、そうだよね。そりゃあ驚くよね。本当は私が一番驚いてるけどね…… )
私たちを迎えに来てくれた、闇使いフォンセと風使いフレ。
頭にフェニックスを乗せた私を見ると、口をあんぐりとして、言葉を失っていた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
とても嬉しいです。
主人公はおばちゃんですが良い奴なんです。
どうか最後までどうかお付き合いください。
これからよろしくお願いします。
楽しく読んでいただければと思います。
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