◆ 良かった。司祭
インサニアとメルムが滅殺されてから暗闇の塔を囲んで戦っていた魔物や魔族たちが戦いを一斉にやめた。
高度な知識を持つ魔族が話を切り出した。
「何故、我らが貴様らと戦っていた?」
司祭は
「逆に聞こう。どうして今までこの地を這い上がり人の場所まで来てスタンピードを起こしていたのだ?」
「我らが・・・?どういうことだ・・・この地は大魔王フォンセが王として君臨している。我らがこの地を這い上がり人の世界に行くことなどあり得ない」
大賢者になり大幅に頭の回転が増したサージュが説明した。
「永い刻・・・何百年とこの地には大魔王はいなかったんです。大魔王フォンセはサーノーさんの永遠の眠りのせいで狂王化するところでした。
それを食い止めるためにディオン神様がその手の中に心を閉じ込めていたのです。
ディオン神様は大魔王フォンセを転生させることを・・・幾度と繰り返しながら敵を討ち平穏になる機会を待っていたようなのです・・・だからあなた達にはしばらく崇める大魔王はいなかったのです」
「なんと!・・・!・・・ああ・・・そうだ・・・サーノー様が・・・インサニア!!やつが!」
大賢者サージュは続ける。
「操られていたのでしょう・・・
インサニアとメルムというやつに・・・
ディオン神様から瀕死の重症を負わせられたのに奴らはサーノーさんの身体に厄災を植え付けました。
いずれ復活するために。
ディオン神様はそれに気づかずサーノー様を癒すために・・・
癒しの眠りにつかせました。
しかしその時にインサニアとメルムの厄災も共にガラスの棺に入れられたのです・・・
300年近い時をかけ少しずつ力を戻していった時に・・・
サーノーさんの増幅の力で魔物のみなさんを操ったのだと思います。
そして・・・アルゲオ病を再び・・・
ディオン神様のお膝元のサクレ村に撒き散らしたのでしょう。
チート持ちが生まれないようにする為に」
高度な知識を持ち言葉の分かる魔物は話の分かる魔物でもあった。
「我らは魔物でも戦いを好むわけではない。実の無い戦いはしない。周りには余りにも多くの仲間が死んでいる・・・もうこんなことは起こっては駄目だ。こんな馬鹿な過ちは・・・二度と起きては駄目なんだ」
その時、塔の上が暖かい光に囲まれた。
それと同時に激烈の焔が頭上の地を突き破った!
大聖女ソレイエがサーノーを〈光の安らぎ〉で治療した。
そしてジェネルが破滅の大槍を完全に炭にした!
暗闇の塔を覆っていた青龍の聖なる光は解かれフォンセにカイン、ジェネルにソレイエ・・・そして大魔王フォンセとサーノーは地底に降り立った。
みんなも魔物たちも安堵していた。もう二度と過ちを犯さないと気付けたのだから。
歴代最強のチートメンバーに鳳凰フェニックスと青龍・・・違えてしまった道を正す必要があったから集まったのだ。ディオン神様の永きに亘るお導きだったのだろう。
「グオッフ・・・!」
司祭が突然、大量の血を吐いた!
「司祭!何で急に!」
「司祭様!」
司祭の息が浅くなっていた。
「ゼーゼー・・・」
と呼吸も弱々しくなっている。
ジェネルは自分の夫がこの世を去る場面と司祭が重なり激しくショックを受けていた。
「いやだ!司祭!いやだ!しっかりして!」
大聖女ソレイエだったら・・・
ジェネルは泣きながら大聖女ソレイエを見た。
大聖女ソレイエは意を決して〈光の安らぎ〉をかけようとしていた。
ところが
そこで
「待て・・・大聖女ソレイエ。私の友は己の身体を犠牲に・・・箱にしているのか?」
大聖女ソレイエは泣きながら答えた。
「そうなんです・・・司祭様は・・・一度は巌の箱にアルゲオ病を閉じ込め自分の身体に内包したんです。でも少しずつ漏れて・・・最後は・・・最後は自分の身体全てを箱にして・・・」
大聖女ソレイエは口元を震えさえなんとか堪え答えた。
「このまま大聖女ソレイエの癒しだけでは駄目だろう。我は無から有を生むドワーフ王だ。アルゲオ病の根源を入れる箱を作り友の身体から引き摺り出そう。その後に大聖女ソレイエが友に癒しをかければ良いだろう・・・」
「!!・・・ドワーフ王様!ありがとうございます!」
チートメンバー全員がドワーフ王に頭を下げていた。
ひとつ頷いたドワーフ王はおもむろに右手で『おいで、おいで』のポーズをして右手をクイックイッと上下に振った。
ついつい私と勇者フォールは呼ばれてしまった。
「そうじゃない!無の空間から有を呼んでいるのだ!お前たちを呼んでない!」
「はい!ごめんなさい!」
私と勇者フォールはシュンとして成り行きを見ていた。
ドワーフ王は鋼のような重光を纏った箱を作った。
「この箱は一度ものを入れると二度と開けることは出来ない。しかし監視の目が必要だろう。地上にあってはならないものだ。大魔王フォンセよ。其方がこの重責を担ってくれるか」
「はい。ドワーフ王様。私は司祭にも・・・そしてこの血の繋がらない家族がいた地に世話になりました。仲間がいたからこそサーノーやこの地底の国を取り戻すことが出来ました。私が・・・私たちがこの箱を守ることこそ神命なのでしょう」
「うむ。では大聖女ソレイエ癒しを・・・」
ドワーフ王が司祭の身体からアルゲオ病の根源を取り出し箱に収めた。この箱が開くことは二度とないだろう・・・
すかさず大聖女ソレイエが胸の前で震える両手を組み力強く唱えた。
詠唱〈ベア〉〈光の安らぎ!〉
黄金の礫が真っ白なヴェールに変わり、もう目を閉じる力も残っていなかった司祭を隙間なく包み込んだ。
ビッチリと包んでいた真っ白な光のヴェールが司祭の身体の中に吸い込まれ静かに消えていった。
土気色だった司祭の顔色は甦り息も安定していた。
「我が友はもう大丈夫であろう」
私たちも大きな安堵の息を吐いた。
司祭の落ち着いた安息と顔色を見ながら一番大きな懸念が確かに無くなったのに・・・心の中に虚しさが広がってゆく。
果たしてこれでいいのか?
私たちの周りに沢山の魔物の屍が転がっている。
操られた魔物たちに目を遣りやるせなさが込み上げてくる。
「みんな・・・今更、こんなこと言ってごめんね。私・・・やっぱり・・・インサニアとメルムが許せない!愚かな馬鹿な支配者は余りにもたくさんの犠牲を出した!人を襲う魔物じゃなくて操られた魔物たち・・・なんだかやるせないよ!悔しいよ!」
みんなも分かっている。気持ちはジェネルと一緒だ。
ジェネルのこの一言を他の誰よりも重く受け止めていたのは大魔王フォンセだ。
「ジェネルさん、完全な形にはしてあげらないけど私は大魔王・・・この地の復権のために僕を・・・いや、違うな。この地の復興を助けてもらうために僕ではなく友を・・・」
大魔王フォンセは両手両足を広げ唱える。
詠唱〈ペルフェクト〉
魂を持たぬ我が友よ・・・我に・・・この地のために・・・力を貸してくれ
大魔王フォンセはネクロマンサーの力を使うが支配するためではない。友の心を弔い友に力を貸してもらうために・・・屍となった骸から影の魔物たちを呼んだ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
とても嬉しいです。
主人公はおばちゃんですが良い奴なんです。
どうか最後までどうかお付き合いください。
楽しく読んでいただければと思います。
これからもよろしくお願いします。
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