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19/22

◆ 聖女覚醒。さ、一気にいきますか


 藤色の扉を開けた私は絶句した。

 昨日視た同じ部屋の中とは到底思えないほど・・・部屋の中は焼け落ちていた。無数の魔物たちの残骸が転がっている。




 開け放たれた硝子の棺の隣で大魔王フォンセが倒れていた。



「フォンセ!」


 風使いフレと聖女ソレイエがいち早くフォンセを見つけて抱きしめた。


「フォンセ!フォンセしっかりしろ!フォンセ!」


 

 ザクッ!!



「キャーー!いやぁ!!フレ!」


 いきなり高い天井の闇から大きな鎌がフレとソレイエへ向かって振り下ろされた。 


 フレは咄嗟にソレイエを庇った。


 フレの背中はざっくりと大きな傷口が開いてドクドクと温かい血がソレイエの手を染めている。


「いや・・・いやだ!フレ!」


「ソ・・・レイ・・・エ・・・ケガは・・・ない?クッ・・・」




「絶対許さない!

詠唱〈キール!〉

くそ!闇にまた隠れてしまった!どこだ!」


「勇者フォール!聖女ソレイエが2人の癒しをしている間、周りを見張っておいて!みんなもお願い!」


 みんなは一斉に三人を取り囲んで守りの体制に入った。



 聖女ソレイエは大魔王フォンセとフレを見つめながら胸前で真っ赤に染まった両手を握りしめ瞳を閉じた。


 聖女の周りに癒しの力を持つ光の礫が浮き上がる。

 眩しい・・・

 

 もうみんなは誰もしっかり目を開ける事が出来ないでいる。


 浮き上がった光の礫は形を変え黄金色から真っ白なヴェールになり大魔王フォンセとフレを包んでいく。


詠唱〈ベア〉〈光の癒し〉


 聖女ソレイエは涙を流しながら祈り続ける。


 ヴェールに包まれた大魔王フォンセが小さく声を上げる。

「ぅ・・・うっ・・・」


 風使いフレが聖女ソレイエを励ましながら声をかける。


「ソレイエ・・・もう・・・少し・・・だけ・・・頑張って・・・くれ。フォンセは俺たちの家族・・・だから・・・」


「フォンセも・・・頑張れ・・・大切な人が・・・待っているん・・・だろ。ハァハァ・・・呼ばれたんだろ!こんな所で・・・寝ている場合じゃ・・・ないだろ」


 聖女ソレイエはフレの声を聞きフォンセの声も聞こえていた。


(私も・・・フレとフォンセの家族だよ!フレ!フォンセ!・・・死なせない!)


ドックンッ!!!

 聖女ソレイエは激痛に包まれた!

 くっ・・・あっ!

 くっ・・・苦しい・・・

 この激しい痛み・・・

 身体中が・・・血が・・・

 燃えるように熱い・・・

 これは・・・

 みんなも耐えた痛み・・・

 私も・・・私も

 私も大切な人たちを・・・

 守りたい!!

 絶対に守るの!!

 お願いだから私に力を!!

 

 聖女ソレイエは心の中で絶叫した!



 聖女ソレイエの癒しの光がより一層烈しく神々しく満ち満ちていった!


 


 聖女ソレイエの前に・・・

 ディオン神様が現れた・・・


 突然現れたディオン神様に私たちも聖女ソレイエも呆然とする。


 ディオン神様は聖女ソレイエの額にある緑の宝石にそっと手を添えた。


 暖かな力がソレイエを満たして・・・

 素直に聖女ソレイエは納得した。


「私・・・私は・・・

 大聖女・・・ソレイエ・・・」


 ディオン神様はニッコリ微笑んで姿を消した。



 大聖女ソレイエはフレと大魔王フォンセに向かって


詠唱〈ベア〉〈光の安らぎ〉



(フレとフォンセを治して!!)


 フレとフォンセを包んでいた真っ白に煌めくヴェールは二人の身体の中にスルスルと取り込まれていった。


 最初に怪我が治りいち早く大聖女ソレイエを喜ばしたのはフレだった。


 大魔王フォンセも低くうめく声だけが精一杯だったが指先がピクリと動き目元もピクピクと動き始める。


 ゆっくりと瞼を開け大魔王フォンセは辺りを見渡して顔をくしゃりと歪ませた。


「み・・・みん・・・な・・・

 来てくれたんだ。

 もう・・・ソレイエも最後の

 覚醒は終わったんだね・・・でも・・・ダメだった

 俺も・・・が、頑張ったけど

 サーノーが・・・

 奴らに連れて行かれてしまったんだ・・・

 みんな・・・頼む・・・

 俺に・・・

 俺に力を貸してくれ・・・」


 

 勇者フォールは激しくフォンセに向かって怒鳴った!


「フォンセ!お前ふざけているのか!俺たちは仲間だよな!お前昨日から急に俺より大人になったのかと思ったけど、全然ダメじゃん!」


 私も気がつくと一緒になって怒鳴っている。


「そうだよ!大魔王フォンセ!大魔王って言いづらいわ・・・でも仕方ない・・・大魔王フォンセ!私たちは仲間なの!頼むじゃなくて一緒に頑張ろうだよ!」



 大魔王フォンセは目元をウルウルとして


「ジェネルさん・・・」

と呟いた。


「なっ!な、なに・・・急に可愛かった時の闇使いフォンセになると調子狂うから・・・」


「ハハハ、なあこれでチートメンバーが勢揃いだ!最強チートメンバーの力を今奴らにぶつけてやろう!」



 大魔王フォンセは私たちが入ってきた藤色の扉と反対にある扉を指差した。


「あの扉を抜けて外に出ると、暗闇の塔があるんだ。奴らはサーノーを連れてあの塔の上から・・・この地の底から地上の全てに〈狂気と災い〉をもたらす世界にするつもりなんだ」


 賢者サージュは納得がいかないようで


「何でわざわざサーノーさんを連れて行くんだろう?足手纏いだと思うけど・・・ごめん、フォンセ」


「うん、普通はそう思うよね・・・ サーノーは、身体の中に莫大な力を増幅する装置のようなものがあるんだ。 奴らはその力を使って魔物を操っていたんだ。 そして・・・サーノーの身体を媒体にして、厄災をこの世の全てに撒くつもりなんだよ・・・」


 ジェネルは怒りで戦慄いていた。

「なんて事を・・・」


 青龍使いカインは

「じゃあ!急がないと!みんな準備は良い?フォンセは戦える?」


「うん! この地底の国を守らなきゃ。俺が心から大切にしていたサーノーも取り戻してみせる!

だから誰より俺が戦わなくちゃダメなんだ! 今ならまだ、目覚めたばかりのあいつらは力が本格的に戻っていないはずなんだ!!」


「「 行くぞ!!」」


 もうジェネルも青臭いなんてこれっぽっちも思わない!率先して仲間に加わっていた。



 扉を開けるとシュッと高速で魔物が襲ってきた。


 早速のお出ましだ。


 辺り一面魔物だらけ。

 大小様々色とりどり!なんて派手な魔物ばかりだろう。


 この時ジェネルは強い魔物って色が派手だと気がついた!

 なんでこんな時におばさんは余計な事を考えるのか・・・。



「ジェネルさん! ボーっとしてんなよ!」

詠唱〈キール!〉

 伝説の勇者フォールは伝説の剣を振り回し、そこら中の魔物を倒して行く。

 ここにいる魔物たちは今までの比ではない強盤な魔人や知恵のある魔族たちもいるはずなのに、目に追えないフォールの剣の太刀筋の音と共に魔物の屍骸が積みあがっていた。


(勇者フォール! なんて凄いの!)

 私たちもフェニちゃんや青龍たちと〈契約の証〉をしたドワーフ王と風精霊王、森の精霊王と共に戦っていた。


 司祭とドワーフ王は巌と鉄の楔で魔物たちを縛りあげ暗黒の池に沈めていく。


 風精霊王と風使いフレは大聖女ソレイエを守りながら天の雷を落とし台風の様な強烈な風潮を渦まかして魔物を近づかせない。


 緑使いハキムは森の精霊王と協力しながら共に力を合わせ草木のない地底からニョキニョキと棘の蔓を生やしていた。


 鋭く尖った棘の蔓の先端には大きな口が裂けて付いている。

(ちょっと気持ち悪いかも・・・)

一瞬ハキムは思ったがそんな事をかまっていられない。


 口の付いた棘蔓は魔物たちを絡めとり縛殺していった。


 賢者サージュは前回の討伐でこっそり大賢者サージュになっていた。

 自分でも半信半疑だったがここで深く考えている余裕などない。


詠唱〈リスト〉


 氷瀑は周りを簡単に凍らせ狙った場所を的確に鋭く撃ち抜いて行く。

 あやふやな感覚ではない!大賢者サージュは身体の中から己の知識と実践が合致して敵の状況が分かってしまう。


 戦いながら冷静に暗闇の塔を見ていた。


 この時間稼ぎは・・・まずい!



 さっきより塔の上は赤黒い靄が漂っている。

(アレはなんだ?)



 その時、

 青龍の声が聞こえた


【カインよ

 我に乗れ 

 塔の上に行き

 災いを止めるのだ】


「はい!フォンセも一緒に行こう!」


「うん!分かった!」


 二人は大きな青龍にまたがり塔の上を目指した。


「ジェネルさん!俺たちも行こう!」


「もちろん!フェニちゃん!私と勇者フォールを塔の上に連れて行って!」


 フェニちゃんは一声嘶いた!


 私は下に残って戦うみんなを見た! みんなは頷いて見送ってくれる。 

(みんな凄いよ! 下は頼んだよ!)


 私と勇者フォールの乗せたフェニちゃんはあっという間に青龍に追いつき


 そして塔の上に上がった。



 大魔王フォンセの絶叫がした!


「サーノー!! サーノ! サーノ!!!! 」



 暗闇の塔のてっぺんでサーノーの左腕に大槍が貫通していた。

 よく見るとサーノーの血を吸いながら大槍は塔の石畳に突き刺さっている。

 助けようにもサーノの後ろからインサニアとメルムが剣を向けていて手が出せない。


 もう誰の目から見てもサーノの命は風前の灯火だということが一目瞭然だった。


 

「ククク・・・おやおや、もう目覚めたのか?フォンセよ、相変わらずしぶといやつだ」



「それはこっちのセリフだわ!」

「そうだ!そうだ!こっちのセリフだぞ!」


 こんな時にこそ私と勇者フォールは意見が合うのよ!


 私もみんなも怒りと無常さで焦燥感にかられていた。


「本当になんて酷い事を・・・!」



 インサニアは愉快で堪らないとヘラヘラと笑った。


「ほぉ。随分と伊勢のいいやつを連れてきたものだ。 面倒なチート持ちが生まれないように真っ先にサクレ村に病気をばら撒いてやったのに。折角のプレゼントを台無しにするもんじゃないよ? ククク・・・だがもう遅い。 サーノーの血もだいぶ破滅の大槍に吸わせたのだ。あとは背中を割いて増幅の種を裂けばいいだけだ!」



 インサニアは手にしていた大剣を振り下ろした。


「遅い!!」

 キーーーン!

 しかし伝説の勇者フォールの剣が一瞬速く弾き飛ばす!



 子分のメルムは慌てて短剣を握りしめサーノーに飛びかかろうとした。


「お前も遅い!」

 それを冷静にカインが激流のカッターで投げ飛ばす!


「グァッ!!」

 メルムの腕が短剣ごと切り落とされる!


 おかしい・・・何でこんなに弱いんだ?



「グフッ・・・フッフッ・・・俺たちは目覚めたばかり・・・厄災の数が足りないだけ・・・お前たちはもう遅かったんだよ・・・クックックッ・・・」


 インサニアは白眼のない銀色ばかりの眼で破滅の大槍の突き刺さったサーノーに向かって命令した。


「サーノの洗脳は済んでいるのだ! やれ!!」



 破滅の大槍に腕を貫通させ意識の混濁していたサーノーがもう片方の手で自分の懐から短剣を出してきた。



 大魔王フォンセは力の限り叫んだ!


「サーノー!やめろ!やめてくれ!」



 短剣を持つサーノーの動きが止まる。



「何をしている!サーノー!早く自分の心臓を刺すんだ!命令だ!」



「サーノー!俺の声を!

 俺だけの声を聞くんだ!

 惑わされてはダメだ!

 ・・・サーノーが

 ・・・サーノーが俺を呼んだんだろ!」



「フ・・・フォンセ・・・?

 フォンセな・・・の?

 あ・・・会いたかった・・・

 フォン・・・セ・・・」



 サーノーは力無く破滅の大槍に身体を添わせて崩れ落ちた。


 破滅の大槍は赤黒い旋光を放った!

 ゴゴゴゴゴと激しく暗闇の塔は揺れる。


「ハハハハハ! 勝手に死んでくれたとはなっ! これで厄災がこの世を覆い全ての人間が死に絶えるのだ! 我が全ての王となる!ガハハハハハハ」



「そんなことさせない!!フェニちゃん大聖女ソレイエを呼んできて!」


 フェニちゃんは直滑降でソレイエを迎えに行く。


 青龍は聖なる光で暗闇の塔を覆った。  

 カインは何とかサーノーの腕を貫く破滅の大槍を抜こうとしている!


 大魔王フォンセはサーノーを抱きしめ己のチートを分け与えている。


「死ぬな!サーノー!もう俺を一人にしないでくれ!サーノー!」



「くっ!もう許さないから!! 」

 私は勇者フォールに言った!


「勇者フォール!今こそ伝説の勇者フォールとして一番の親玉をやっつける時よ!やっておしまい!!」


「いやいや、俺でなくてもジェネルさんでもいけるんじゃ・・・」


 私はめげずに続ける。


「やっておしまい!」


 ハァとため息を吐き伝説の勇者フォールのたったの一振りでインサニアとメルムを滅殺した。


「なんか、呆気ないぞ」

 フォールの呟きだった。






  魔王女サーノ

  挿絵(By みてみん)


  



   暗闇の塔



    挿絵(By みてみん)






最後まで読んでいただきありがとうございました。

とても嬉しいです。


主人公はおばちゃんですが良い奴なんです。

どうか最後までどうかお付き合いください。


楽しく読んでいただければと思います。

これからもよろしくお願いします。


よろしければブックマークの登録と高評価をお願いしますm(__)m。



そしてこれからの励みになりますので


面白ければ★★★★★をつまらなければ★☆☆☆☆を押して


いただければ幸いです。

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