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◆ サラッとカインのざまぁ回


 古い紙とインクの匂いが、図書部屋である事を物語っていた。いにしえの文献を探り、それに付随する資料をまた探し、途方もない迷路に落ちた心持ちになる。


「聖者様、こちらの文献だと先ほどの話と適合性がとれるかと思いますが、いかがでしょう」


 背高のっぽの全身白づくめの白い人…… 然り、聖者様は賢者サージュから渡された資料と古い文献を見比べている。


 また聖者が見つけた資料や文献を、賢者サージュに手渡して、意見の擦り合わせをしていた。その時、聖者はいきなり質問をしてきた。


「突然の…… 失礼をお許しください。賢者サージュ様は、いつチートを授かったのでしょうか?」


 サージュはそんな事かと、快く答える。

 手元の本を見つめながら、あの時の事を思い出して静かに話し始めた。


「私は3年前です…… 私たちの村で〈アルゲオ病〉と言う、流行り病が起きた時です。

…… ジェネルさんのご主人も、それが原因で亡くなりました。 私の家族も皆亡くなりましたし…… 本当に多くの村人が、亡くなったのです。 まさか…… あの時に、一度に三人のチート使いが亡くなるとは。 私は、その時にチートに選ばれ、前賢者の後を継ぐ事となりました。…… チートは、気ままなものです。授かってしまったら……

あとは使命を、全うするしかないので……」


 淡々と答える賢者サージュを聖者プルーヴは苦しそうに見た。

「そうでしたか…… あの、伝染病はこの王国にまで知れ渡ったほどの疫災でした。 辛い過去を聞いてしまって、申し訳ありませんでした」


「あっ、いいえ。もう悲しむ時間を沢山いただいたので、心の整理は出来ています……

あの時に、私と勇者フォールに緑使いハキムが、ほぼ同時にチートを授かりました。

ジェネルさんは最近ですが、司祭様はもう40年近くも前ですし…… 聖女ソレイエと風使いフレは、同じ孤児院にいたのですが……。 ソレイエは確か6歳の時に……

フレは10歳の時に授かったようです……。

カインだけは…… カインは元々、村の者では無かったのですが、6年前に親御さんと… 旅の途中でこの村に寄った時に、たまたま前水使いが亡くなったタイミングで、何故かカインにチートが発現しました。 これはとても珍しいことです」


「…… 純粋に…… 村の人で無くても、チートを授かったのですね?」


「そうなんです。ネスレ村始まって以来のことだそうです。 私より…… 3年早くチートを授かったカインとは、同じ歳だったので、チートメンバーの中では、特に仲良くさせてもらっています。 最初は戸惑っていたカインでしたが…… やはり3年前の〈アルゲオ病〉で、村に留まっていたご両親を亡くされ…… そこから積極的に魔物討伐や村に尽力してくれるようになりました」


 ここまで淡々と話していた賢者サージュは、手元の本をバタンと閉じ、聖者の目を覗き込むように続きを話す。


「…… でもカインは…… ネスレ村だけに留まらずに、こちらのオサーム王国にも度々訪れます。私の勝手な推測ですが、カインはこのオサーム王国に、所縁でもあるのかと…」


 何か含みを持たせた問いかけに聖者は


「賢者サージュ様は、鋭いお方のようです。

こんなに…… このオサーム王国に尽力してくださるお方に、隠しておくことは出来ませんね……」


 聖者は暫し逡巡し、胸の前で両手を握り合わせ、一息吐いて話し始めた。


「カイン様は…… 13歳までは、この国の者でした。 ドクトゥス侯爵家嫡男……。

カイン・ドクトゥス侯爵。 7年前に… 馬鹿げた貴族同士の争いで、()()の公爵家より、無実の罪を着せられ追放されたのです」


 予想外の答えをもらった賢者サージュは、驚愕していた。聖者プルーヴは続けて話す。


「本来なら…… あれほど忠義の厚い、ドクトゥス侯爵家を追放など、あり得ない事でした。 敵対する()()の王弟公爵は、国王夫妻の外遊の時に、国王代理として政務を預かることになりました。 しかしその時…… 国王代理の権限を利用して、ドクトゥス侯爵家に牙を向けました。

 今思っても、誰も歯向かう事など到底出来ない程の、数々の偽証を作り上げて……。

たった数日のうちに国外追放とし…… ……

ドクトゥス侯爵家は没落したのです」


「没落……? 没落って! そんな簡単に、侯爵家ほどの大貴族を潰すことが、出来るのですか!?」


「…… ()()の公爵家は幾年にも渡り…… ただただ執拗に偽証を創り上げていきました。ドクトゥス侯爵家を潰す機会を探りながら…… 。 国王の一番の忠臣、ドクトゥス侯爵家を潰せさえすれば、王家乗っ取りの近道と考えていたようなのです。

 機会を得たら、長年の怨みとばかりに、一気に粛清したのです…… 」


「何故…… そんなに執拗に…… そこまでの恨みって、貴族たちには当たり前のことなんですか!?」


「いいえ、そんな馬鹿げた事など、あり得ません! 私も当時はまだ幼く、教会預かりとなっておりました。 今でこそ王家のお側で支えておりますが…… 嵐のように消えた、ドクトゥス侯爵家の悔恨は、忘れようがありません」



  賢者サージュは今!!カインの事より、聖者プルーヴの言った、他のワードに一気に食いついた!



「幼く? えっ?……当時、幼いって? 聖者様は、私より年下なのですか? あっ、失礼を」


「ふっ。 大丈夫ですよ。 私は今17歳です。 老けてみえるのは、知っておりますので、お気になさらずに」


「17歳!! 私より三つも年下なのですね。 余りに高い職に就き、大人びた振る舞いと見識の深さに…… 失礼いたしました」


「高い職と仰いますが、賢者様も…… もう既に…… 〈大賢者様〉となられたように、お見受けしますが…… 」


「!…… 知っていたのですか…… ですが、まだ確信が持てません。 全ては明日の討伐で試されるのだと思っています…… あ、あのう…… 話が逸れて、申し訳ありませんでした。 カインを追放した公爵家は、今どうしているのですか?」



「そうですね…… オサーム王国の恥部となりましょう。 全て洗いざらいお話しする事は出来ませんが…… 王家は欲の強い王弟を…… ()()の公爵家を警戒していたはずなのです。 しかし、ほんの少しの気の緩みが、ドクトゥス侯爵家を破滅に導いてしまったことを、酷く後悔されていました……。 悔悟する日々を、王家や我が貴族たちが過ごしていたのです。

 それが3年前・・・

 あの日、突然カイン様お一人でこの王国に帰って来られました。

 ドクトゥス侯爵家を没落させ、王国の実権を我がものにしようと企んでいた、()()の公爵家の数多の大罪を…… 偽証ではない、本物の罪を詳かにして盛大に復讐を遂げました!

 私が先ほどから〈()()の公爵家〉と申しておりますのも…………

 今は、存在しないからです……

………… 本当にスッキリしました」


 聖者プルーヴは最後の方はポソリと呟いていた。


「そっ、そうだったのですね。 カインがたまに見せる顔…… 心、ここに在らずの……

 そんな、遠い目をしている姿の理由が…… やっと、分かった気がします」


「いいえ、とんでもございません。

 カイン様は素敵なチートメンバーに囲まれて、心慰められ…… あの〈当時の公爵家〉の復讐という大業を成し遂げたのです。

 この王国の者として感謝申し上げます。

 賢者サージュ様、質問ついでに、最後にもう一つ… 聞いてもよろしいでしょうか?」


「もう一つの質問ですか? 私に分かることでしたら、何でもお答えします」



「先程…… チートメンバーの発現時期の説明に、闇使いフォンセ様の説明がありませんでした。 何か訳でも?」



 賢者サージュは言いにくそうに

「特別に説明を省いた訳では無いのですが。

カインも特殊だと言いましたが…… フォンセもかなり特殊なんです。 フォンセは母親の母体の中にいる時に、発現したようなのです。 13年前に…… 当時、お腹の大きな妊婦が夜中に苦しみ出し、突然陣痛が始まりました。 ほんの少し前に…… 前闇使いが天に召され…… 。そのチートをフォンセが引き継いだのです。 母親はフォンセを産み落とし、息絶えました」


「なんてこと…… 」


「私たちチート持ちは、ある日突然、身体の中にチートが定着したことを分かります。

 しかし〈チートの目覚め〉という儀式をしないと、完全なチート発現はしません。

 聖なる教会のディアン神像の前で……

 己の口から〈チートの目覚め〉と発言しなくてはならないのです。

 儀式をして初めて、自分が何のチート持ちか正式に分かります。 …… しかしフォンセは生まれた時から、額に闇使いの印が現れました。 まだ喋ることも出来ない、産まれたての赤子が途中覚醒までしたのです。

 その後、一歳過ぎに話せるようになって〈チートの目覚め〉の儀式を正式にして、晴れて闇使いフォンセとなりました」



 そこまで聞いて突然聖者が口開いた。

「もしかしたら…… 賢者サージュ様……

 今回のチートメンバーは、過去最高の力を授かっていますね。 それが鍵なのではないでしょうか? 大魔王復活の…… 恐怖ばかりに私は目が入っておりましたが……

 何か?…… 何か…… 引っ掛かるのです」


「…… 鍵?…… 引っ掛かる?」


 聖者プルーヴは、何故かは分からないが、賢者サージュには全てを話してしまいそうになっていた。

 オサーム王国にも、一切他言無用の鉄壁の禁秘がある。

 しかしその禁秘の中に、今回の大魔王復活を阻止する手掛かりが、あるような気がするのだ。


 一人で今晩までにパズルを組み立てる事が得策では無いことも、賢者サージュと情報共有してしまいたい理由だった。


「賢者サージュ様…… 私はオサーム国王に許可を得て参ります! どうかお力をお貸しくださいませんか?」


 いつも落ち着いている、聖者プルーヴの力強い声に…… 尊敬する聖者プルーヴに協力することに…… 一体、何の迷いがあるものか! 右手を胸に当て、深く礼をすると顔を上げた途端に不敵な笑みを浮かべて了の言葉を送る。


「どうか、この賢者サージュをお使いください。ここで私は待っております」


「ありがとうございます!では暫くお待ちください」



   賢者サージュ(大賢者サージュ)



   挿絵(By みてみん)





最後まで読んでいただきありがとうございました。

とても嬉しいです。


主人公はおばちゃんですが良い奴なんです。

どうか最後までどうかお付き合いください。


楽しく読んでいただければと思います。

これからもよろしくお願いします。


よろしければブックマークの登録と高評価をお願いしますm(__)m。



そしてこれからの励みになりますので


面白ければ★★★★★をつまらなければ★☆☆☆☆を押して


いただければ幸いです。

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