◆ 緑使いハキムさんお呼びですよ
私はまだ、涙が乾き切らない瞳をパチパチしてチートメンバーを迎え入れた。
「伝説の勇者フォールになったの? それって、おめでとう?だよね?」
「おう!めでたいぞ!だって俺、すっごく強くなったからなっ!」
「はは、そっか。 でも〈伝説の勇者フォール〉って長いよね? 今まで通り…… 勇者フォールで良いかな?」
「アハハハハ。 ジェネルさんは、覚え直しするのが大変なんだろ? 期待なんてしてなから、今まで通りで良いよ」
(期待してないって!?)
「でも、助かる…… 本当に、みんなが帰ってきてくれて嬉しいよ。えーと?三人は、どうしたのかな?」
緑使いハキムが説明する。
「ジェネルさん、あのね。 実は…… カインが青龍を召喚したら、倒れちゃったんだ。
風使いフレと聖女ソレイエも二人で合体技決めたら倒れちゃうし…… 」
話を聞く聖者の目が、どんどんと見開いていった。
「そ、そんな…… 青龍…… 鳳凰フェニックス…… そして伝説の勇者…… もしかして…… 本当に大魔王復活が!?…… なんて事!」
聖者は私と握っていた手を力無く解いて、床に膝をついた。
「司祭…… 何? そんなに大変な事なの?」
私は自然と、幼馴染の司祭を見ていた。
司祭は顎に手を置いて溜息混じりでジェネルの質問に答えた。
「はぁ…… 実は昨日、聖者さんから伝承を聞いたばかりなんだが、なんで…… こんなに伝承通り事が進むのか、薄寒くて仕方がないよ。 ジェネルが鳳凰フェニックスを呼び、カインが青龍を呼んだ。 フォールは伝説の勇者になるし…… 多分…… 」
「多分?って、なに?」
「考えたくないけど、これからは…… もしかしたら、俺たちに何か、あるんじゃなんだろうか……。今回の討伐で、異常な程にスキルアップしているけど…… もしかしたら、大魔王を倒すためには俺たちには…… まだ、何か足りないのかも知れない…… それを補う何かが…… 」
「司祭さん、聖者さん! 例の文献には、まだ何か書いてあるの?」
緑使いハキムは、不安な顔で性急に質問する。
ハキムがした質問に、聖者プルーヴはどん底まで落ちかけていた思考を、再び浮き上がらせた。
そして疲れた様に額に手を当てながら話し始めた。
「そういえば、歴代最高のチートメンバーには…… チート使いのみに現れる…… 鳳凰と青龍…… それこら確か…… 契約の…… !!
〈契約の証の者〉が現れる!
そんな事が、書いてある文献を思い出しました! ああ、私とした事が…… 今頃、思い出すなんて…… 」
司祭はより深く考える為にグッと目を閉じた。
実は私と勇者フォールは、聖者の言う意味が飲み込めていなかった。 こんな時の頼みの綱である、秘書聖女ソレイエがいないので司祭だけが頼みだった。
暫く考え込んでいた司祭が分かりやすく説明を始めた。
「 いいかい? ジェネルとフォール、聞いてくれ。今のチートメンバーで…… 〈使いのチート〉は、【 土使いの俺 】と【 火使いのジェネル 】、【 緑使いハキム 】、【 闇使いフォンセ 】、【 風使いフレ 】そして【 水使いカイン 】の六人だろ? ジェネルが鳳凰フェニックスを召喚して【 鳳凰使いジェネル 】になって、カインが水龍を召喚して【 水龍使いカイン 】になった。後の〈使いの者〉には何があるのですか?聖者さん」
ジェネルは寝耳に水で、自分が知らぬ間にレベルアップしていた事に驚いて、つい声を発してしまった。
「えっ!!ちょっと待って!私!いつの間に〈鳳凰使い〉になってたの? フェニちゃんは、使いっ走りじゃないわよ!」
だが、そんなジェネルの慌てぶりとは対照的にその場にいた、チートメンバーは小さく首を振っていた。
「いや、ジェネルさん。 実はさっきの戦いで…… カインが青龍を召喚する時にね、急にフェニちゃんが現れたんだ…… 」
ジェネルはびっくりしていた。
(さっきの夢は…… )
「それからね、まるで僕たちを守ってくれているように、火の粉で魔物を溶かしてくれたんだよ。 僕、一瞬ジェネルさんがそばに、いるのかと思ったんだ。でもいなかった。 もしかしたら…… まるでフェニちゃんは、ジェネルさんが僕たちのために、遣わせてくれたのかなって思ったんだ」
「えっ? 私…… 私…… 夢で……
みんなが危ないって思ったら、思わず……
フェニちゃん!みんなを守ってって」
聖者さんがそっと言葉を足して、状況を説明してくれた。
「〈現の夢〉を見たことで、ジェネルさんはフェニックスを遣われたのですね。
司祭様、もし……大魔王が蘇るなら、明日の戦いのために…… もう一度文献を調べ、夜中までに…… 何かお役に立てるものを… 必ず見つけてまいります! どうか、
暫くお時間をいただけますか!?」
司祭は聖者の決心を快く受けた。
「ありがとうございます。聖者さんには、ご無理をさせて申し訳ないのですが、よろしくお願いします」
聖者も恐縮しながら
「我が王国の為に、ご尽力くださいます、皆様の手助けをするのは当たり前のことです。それでは、また後ほど…… 」
今まで黙っていた賢者サージュは
「聖者様、私もお手伝いさせてください」
聖者さんの手助けを申し出たのだった。
これで一旦、話は終わると思いきや
「あ、待って! あのう…… 聖者さん。
さっき、ジェネルさんの〈現の夢〉の話を聞いて…… 実は…… 僕にも不思議なことが起こっていたんです。聞いてもらえますか?」
聖者は優しく笑い
「ええ、勿論です。緑使いハキムさんは、どのような事が起こったのですか?」
「 じ、実は…… ここに向かう時に寄った、西の森からなんですけど…… なんか、木々の囁きが聞こえていたんです。そして、その声は段々と大きくなっていて…… ここ何日は、植物全般の声が…… 聞こえるようになったみたいで…… 」
困惑しながら、聖者は続きを促した。
「あのう?どのような声なのでしょうか?」
ハキムは段々と、言いづらそうモゴモゴと話す。
「 えーと、それが…… 最初はただの、囁き声で… 意味が分かる感じでは、無かったんです。 でも…… ここん所…… 今では、ハッキリと聞き取れて、分かるんです」
私は早く本題が知りたくて、緑使いハキムを急かす。
「緑使いハキム、なんと言っていたの?植物や木々たちは…… 」
ぐっすり眠っている、ローラちゃんを除いて…… 今、部屋中の視線は緑使いハキムに注がれている。
緑使いハキムは、急にかしこまった顔をした。
何を思ったか…… スポットライトを浴びた主役気取りで、みんなの注目を浴びながら、右手を天に向け、左手を胸にあてながら、しゃべり始めた。
「えーと、今も私の耳にハッキリと聞こえます。 それはこう、仰っているのです!
* * * * *
緑使いハキムよ
汝と我ら森の精霊は
今、力を合わす時
《 我は汝と契約を結ばる 》
* * * * *
って、言っていたんだけど…… 」
聖女ソレイエらしからぬ絶叫!
「えええええ!なんでそんな大事なこと!
すぐに言わないの!? 」
「へっ?」
ソレイエにまで、怒られると思わなかった、ハキムは事の大きさに驚いていた。
「だって! だって…… 『むすばる』って意味、分かんなかったんだもん」涙声。
ジェネルも嗜める。
「ええい!私も分からないよ!でも…… 何か、大事かもって思ったら、みんなで情報共有しようよ!」
ハキムはハッとした顔をした。
「 情報共有…… ご、ごめん。みんな…… やっぱりこれは、大きな事だったんだよね。正直…… 最近の展開の速さに、自分の中で処理出来なくなってて…… 都合よく…… 無かったことにしたかった……本当にごめん」
ハキムの態度に今度は私に罪悪感が。
「うっ!私もごめんね。緑使いハキム…… 言い過ぎちゃったね。 それで、その声はもう聞こえない?」
緑使いハキムは、気まずそうに下を向いた。
「ううん、今もガンガンに聞こえている」
「 …………………… 」
部屋は暫しの静寂に包まれると、
勇者フォールは、緑使いハキムの肩をがっつり掴んで、グラングランと大きく揺らしながら
「お前、よく平気でいられるなぁー!俺だったら、気になってしょうがないよ!聖者さん!森の精霊とは、どうやって契約するの?ほら!さっさと契約するぞ!」
顔面蒼白になる緑使いハキム。
「えっ! 痛いの? すっこぐ痛いの? 今は、ソレイエがいないから、後にしない? 僕、痛いのは、本当にダメなんだけど…… 」
もう涙を流している。
本当によく、今まで魔物討伐をしていたなぁ…… 緑使いハキムよ……
みんなは遠い目になった……
ジェネルはベッドから立ち上がった。
「うん、もう大丈夫みたい!」
そして司祭に向かって声をかける。
「分かった!じゃあ、私が聖女ソレイエのとこに行ってくるから。司祭、聖女ソレイエは、どこにいるの?」
「ああ。この部屋の扉を出て、左側に向かった一番奥の部屋だよ。その隣にカインとフレがいる」
「分かったわ。じゃあ…… みんな後でね」
私は聖女ソレイエが眠っている、部屋の扉をそっと開けると中の様子を見て、ハッとした。
まだ眠っていると思っていた聖女ソレイエは、ベッドの中、夕陽が射し込む薄暗い部屋の天井を見ながら、静かに泣いていた。
ただただ声も出さずに、涙が頬を伝っている。
「…… 聖女ソレイエ…… どこも痛くない?お腹空かない?」
涙が止まらない聖女ソレイエの目元を、そっとハンカチで拭ってあげる。
ハンカチから伝わる私の温かい手の温もりが頬に触れると聖女ソレイエは
「うっ……ううう…… 」と声を出して、泣き始めた。
「暖かい…… 暖かいよ…… ジェネルさん… うっ…… うっ…… 」
「 聖女ソレイエは、よく頑張っているよ。 今回は今までの…… どの討伐よりも辛かったんだね…… 本当に…… 本当に…… よく頑張ったね」
私も気がついたら、聖女ソレイエと一緒に涙を流していた。
聖女ソレイエは、私の手をグッと握りしめて、まるで今までの想いを吐き出すかのようにポツリポツリと話し始めた。
「ジェネルさん…… 私…… 本当はとても、とても怖いの…… 仕方がないのは、分かっているけど…… でも… 魔物でも、生きているものを討伐するのは苦しいよ…… 私も…… 普通の子みたいに、生きたいのに…… なんで…… なんで…… うっううう」
「 うん、そうだよね。 普通で、いたかったよね…… 聖女ソレイエは、孤児院で6歳の時にチートを授かったんだよね…… そうか…… もう、12年もみんなの為に。 私なんか、たったの3、4ヶ月で、こんなにへこたれているのに…… 聖女ソレイエは、ずーと頑張ってきたんだね。ありがとう…… 聖女ソレイエ…… ありがとう…… 」
それから、聖女ソレイエは、大きな声で…… まるで、子供のように泣きじゃくった。
今までも、こうして人の見ていないところで…… こっそりと、聖女ソレイエは泣いていたのだろう…… ほんの少しの時間で、いつもの聖女ソレイエに戻っていた。
「もう…… 大丈夫? お水でも持ってこようか? それとも食事でもする?」
「いいえ、ありがとうございます。 ジェネルさん…… 少し…… ふふ… 今日は久々に、大泣きしたからか、心が軽くなりました。 食事は後で、みんなといただきますね。 ところで、ジェネルさん。 私はもう、約10年ジェネルさんと親しく接しているんですよ…… 何かありましたか? いえ、何かあったんですよね?」
私は息を呑んだ。
さすがです!秘書聖女ソレイエ様!あなたの目は誤魔化せません。
私は緑使いハキムのことを話した。
そして私の〈現の夢〉のことを……
そこまで話して、私は一つの懸案をソレイエに話す事にした。
「ねぇ、聖女ソレイエ。私…… 、一人で抱えることが出来ないみたい…… 一緒に考えて欲しいんだけど…… 」
「?? 一緒に…… ですか?何を?」
「…… 実は…… 司祭が、ロシュの実を食べている夢を視たの…… 〈現の夢〉は、今現在のことや、現実に起こったことを…… 視るんだって」
「ロシュの…… 実! なんで司祭が! あの伝染病は、3年前に淘汰されたはずですよね」
「うん。そのはずなんだけど…… うちの旦那さんも、その時の被害者だからね…… 少ないロシュの実を、まずは幼い子供やこれからの若い人たちに配って…… 手遅れになっちゃうんだもん…… 司祭が食べていた、ロシュの実を見間違えるはず、絶対に無いよ」
「何故、司祭は今頃…… ロシュの実を食べていたんでしょうか?」
「うーん。分からない!? はぁー、もうさっぱりだわ! 考えても無理!! やっぱり正攻法で行こうかな…… 。回りくどい事が出来ない、単純な頭の私には、それしかないね。うん、話を聞いてくれてありがとう。今晩、司祭に直接、聞きに行くよ」
「 ジェネルさん、私もお供します!」
間髪入れない、秘書聖女ソレイエ。
(もう本当に頼りになる…… )
「ありがとう。心強いよ。よろしくお願いします」
改まって私がお辞儀をすると、一拍遅れて聖女ソレイエもペコっと頭を下げた。
私は心の中にある、モヤモヤ解消をさせるために幼馴染の部屋に直撃するつもりだ。
さあ、覚悟せよ!司祭殿!
緑使いハキム
最後まで読んでいただきありがとうございました。
とても嬉しいです。
物語も気が付くと半分を過ぎました。
主人公はおばちゃんですが良い奴なんです。
どうか最後までどうかお付き合いください。
楽しく読んでいただければと思います。
これからもよろしくお願いします。
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