第9章 大魔姫バボンとローゼ
一千年前の王の間での会話。
「王様、なぜ魔法使いを派遣しないのですか!?」
女勇者リベットが怒りを露わに王様に訴えていた。
「魔族王国に大事な全ての魔法使いを送り込むなど出来る訳ないではないか。もし彼らに何かあったら我々はどうなる?」
「この星が無くなるかもしれないのですよ! みんな死んでしまいます。それでも良いのですか!」
王様の隣に立つ大臣がリベットの話を遮る。
「すまないが、リベット殿。そなたは魔族に取り込まれてしまったとの噂がある。隕石が落ちてくるなどとても信じられん。天文学者とかぬかす連中も騒いでいるが、やつらはこの星が丸いとか嘘ばかり言っている輩だ」
リベットが拳を握る……大臣が話を続ける、
「確かにこの五年間は魔族との戦いも無く平和だった。だが、魔族が我らを滅ぼすために力を溜めていただけとも取れる。リベット殿は魔王と結婚して子供まで作ったそうではないか、魔族と結婚など信じがたい。王様は魔王討伐をお願いしたのに嘆かわしいことだ」
「私のことが信じられないと……わかりました、もう結構です」
リベットは無言で王の間を去った。慌てて隣にいた親友で、同じパーティーの女大魔法使いフィディックと女大僧侶マカラが後を追った。
「リベットちゃん、どうするの?」フィディックが心配そうに問いかける。
「私一人でもやるわ。人間が協力しないなんてバカルくんに申し訳ないもの……人間の中にも魔族と仲良く出来る人がいるって証明しなきゃ」
「だったら、私たちも行くよ。死ぬ時は一緒だよね、仲良しだから」
マカラが微笑んだ。
「魔法使いがいなきゃどうやって隕石まで行けるの。リベットちゃんが人間代表なら、私は魔法使い代表よ」
フィディックが笑う。
「ふ、二人とも……」リベットは涙を流した。
◇
ここは、魔族が一千年もの間隠れていた地下洞窟の最深部。
大魔姫バボンの前に魔族軍を指揮する五大魔族の一人が呼ばれた、それは美しく若い女の子の姿をした魔族だった。
バボンの寿命はあと少しで尽きようとしていた。
「五魔星ローゼよ、私の命は長くない、もはやアルコを殺して能力を奪うことも叶わぬ。私の指輪を渡そう、これからは大魔姫ローゼと名乗るが良い。人間共への我々の復讐を忘れるな」
「お母様、アーリー軍曹とハーパー魔団長がやられました。人間共は我ら魔族に攻勢をかけて来ております、これも全てはアルコの仕業。私が必ずアルコを倒して人間共を抹殺してごらんにいれます」
ローゼが青く光る指輪を受け取り指にはめると力がみなぎって来た。
「私は寿命が尽きる前に根性で一人でお前を産んだ。娘よ、私の能力はあなたに受け継がれている」
「この指輪は魔王様から頂いたそうですね。力がみなぎって来ます」
「魔王様は素敵だった……しかし、あの人間の女にたぶらかされてしまった。あの女さえいなければ……」
「人間に騙されたせいで、凶隕石ゲロウが魔王国に落ちてしまったんですよね。人間とはなんて卑劣な生き物なんでしょう。その女勇者などと名乗った詐欺師のせいで魔族はこんな酷い目に……その詐欺師の血がアルコに入っているのですね、だから人間などに協力を。アルコはきっと醜い姿をしてるに違いないでしょう」
「魔王様はイケメンだったよ。気をつけろ、アルコは強い、まともに行っては倒せない」
「承知しております」
ローゼはバボンに一礼をすると部屋から出て行った。
◇
「アラ〜ン、ついに勝ったよ〜! 明日は僕が王様だよ!」
まさか、ついにアルコにトランプで負ける日が来るとは……油断して、つい王様の権利を賭けてしまった。王様になると何でも言う事をきかなければならない、僕は気が重くなった。絶対勝てると思ってついこんな賭けをしてしまった。
「約束だからね、明日の夜が楽しみ!」
そう言ってアルコが浮かれたようすでキスをしてきた。嫌な予感しかしないが、仕方なく僕はアルコの唇をなすがままに受け止めていた。




