第6章 光の閃光、魔軍曹アーリー
ダニエルさんが現れてから一ヶ月が経った。
僕とアルコは屋敷から少し離れた大きな公園を散歩していた。
「アラン〜! 疲れたよ〜! おんぶしてぇ〜」
「さっきおんぶしたばっかりだよ」
「だって疲れたんだもん」
アルコはイタズラな顔をして僕の背中に飛び乗ってきた。すると、前から一人の男の人が歩いてきた。黒いスーツを着ているが体格が良く筋肉質なのが良くわかる。指に黄色の宝石の入った銀の指輪が光る。
「アルコ様ですね。私の名前はアーリーと申します」
◇
時を二週間ほど戻して……
魔族の領地となった場所のとある屋敷で、二人の男がウイスキーを飲みながら深刻な様子で向かい合っている。
「アルコ様は未だに我々の元には現れない……やはり人間に取り込まれたか」
「魔軍曹アーリー殿、まだ結論は早い。あと二週間したら私がもう一度話してみよう」
「ダニエル魔少佐、君の左腕はもう元に戻らないではないか。アルコ様の能力を我々は知らない、もし戦いになったら片腕で倒せるとは思えんな。唯一のわかっている能力は恐らく握られると石化されてしまう、それだけだ。幸い私には六本の剣があるので、アルコ様に触れずに戦うことができる。私が君の代わりに行こう。我々に協力しないときは私がアルコ様を倒して能力を奪おう」
「それではお願いしよう。だがアルコ様は記憶を失っておられる。くれぐれも先走らぬように」
◇
ダニエルと別れ私の目の前に無邪気な少年二人がいる。
あんな可愛いらしい少年が我々の命運を握っているとは。
「アルコ様ですね。私の名前はアーリーと申します」
「誰ですか、私はアルコ様のお付きのものです」
「一ヶ月前にダニエル魔少佐が現れたのを覚えていますね、ダニエル魔少佐の代わりの者です、世間では魔軍曹アーリーと呼ばれています」
「魔族の人だね。僕に何の用なの?」
「アルコ様をお迎えに来ました。今こそ人類を滅ぼすときです。そして、凶隕石オウトを破壊し世界を救って頂きたいのです」
「アランは人間だよ。僕は人間を滅ぼすなんてしないよ。王様が言ってた、魔族は僕やアランを殺しに来る悪い奴らだって」
「アルコ様、私の指輪が見えますか? この指輪をつけた者がアルコ様を倒すと能力を奪うことができるのです。出来ればアルコ様と戦いたくはないです、だが人間の味方をすると言うのなら、オマエを今すぐ殺す!」
お付きの従者が割って入った。
「待ってください。人間と魔族が仲良くすれば……」
「人間は裏切るのだ!」
私は剣を振り、風圧で従者を吹っ飛ばすと従者は地面を転がった、アルコの目の色が赤く変わる。
「アランを虐めたな!」
私は本来の姿に戻った。六本の腕を持ちそれぞれに雷を発する剣を持っている、下半身は馬のような四つ脚で頭には一本の角が生えている。
一つの腕が剣を振るとアルコに向かって竜の形の光の閃光が向かっていく。アルコはまともに食らって吹っ飛んだ。私は次々と剣を振り光の竜がアルコに襲いかかる。
気絶したと思われたアルコが起き上がると剣を抜いた。真っ直ぐに向かって来るアルコを一本の剣で横からなぎ伏せようとしたとき、私の左腕が一本空に舞った。
アルコの剣さばきは恐ろしく速かった。残った五本の剣全てから雷竜をだす、眩い光がアルコに向かって襲いかかる。全て命中しアルコは宙を飛ぶ。
「アルコ!」
従者が叫ぶとアルコが従者に伏せろと言った。アルコは宙に静止すると腕を交差した、目が燃えるように赤くなっている。
アルコの交差した腕から光り輝く不死鳥が無数に飛び出し私に襲いかかった。鳥たちは物凄い勢いで私に向かってくる。とっさにバリアを張るが簡単に割られてしまった。私は腕をさらに二本失い、残り三本になってしまった。気づくと眼の前にアルコがいる。残った三本に剣を振り下ろすが、キンと剣がぶつかる金属音がしたと思ったら私の四本の足の一本ともう一つの腕も斬られていた。とっさに後に飛び去って防御の構えを取った。
とてつもない素早さと耐久力。腕から発する謎の光る不死鳥。さすが魔王の子供だ、このままではやられてしまう。まずは私は本来の姿に戻ることにした。念を込めると私の体が光輝く。
私は両手に剣を持った鬼のような姿に戻った、これが本来の姿だ。六本の剣は使えないがスピードは段違いに上がる、これならアルコの素早さに対応できるはず。私は剣で十字を作り二刀流の構えをした。
しかし、魔力は魔王の息子と言う事で理解出来るが、なぜあんな剣さばきが出来るのだ。剣士でもなかろうに……額から焦りの汗が吹き出してしまう。一体どうやって勝てば良いのだ。
「アルコ……その圧倒的な力は魔王様から受け継いだものだ。魔族に戻るんだ、人間に騙されるな!」
「アランの服が汚れたよ……アランが言ってた、白は汚れが落ちづらいって……」
アルコが怒りを込めてこちらへ向かってくる、私は十字にした剣から光の閃光弾を放った。しかしアルコは向かってくる閃光弾を剣で弾き飛ばしながら突っ込んでくる。私は口からも閃光ビームを放つが避けられてしまった。左腕に何か衝撃を感じた、アルコが私の左腕を握っていた。すると、私の左腕が石になり感覚が無くなってしまった。残った腕で剣を振り抜くとアルコが飛び下がったので、私の体全部が石になるのは防げた。だが、もう勝ち目はないかもしれない……もはや死をかけた攻撃しかない。
その前に魔力で仲間にテレパシーを送ろう、アルコとの戦闘の記憶をみんなに伝えなければ。
「こちらはアーリーだ、残念ながらアルコには勝てそうにない。アルコは人間の手に落ちている、私は最後の攻撃をするつもりだ。さらばだ、私の戦いが諸君らの役に立つことを願う」
残った最後の剣に全ての魔力を込めると、光の数百もの剣がコピーされ一斉にアルコ目掛けて飛んでゆく。するとアルコが剣を下段に構え力を込めて下から振り上げる。するとアルコに向かって飛んでいる光の剣が全て粉々に砕け散った。最後の攻撃も失敗したと思ったとき、アルコは私の右腕を掴んでいた。
鋭い衝撃が走り私は悲鳴を上げる暇もなく石化されてしまった。私の右手にはめられている指輪に金色の宝石だけが光っていた。
◇
「アルコ! 大丈夫!?」
震えて動けなかった僕はアルコに駆け寄った。
「アラン~! 疲れたよ~! おんぶしてぇ~!」
石にされたアーリーを置いて僕はアルコをおんぶすると、アルコは僕の背中でスヤスヤと眠ってしまった。
「一人で眠るの怖いよ~……あ~んするから食べさせて……」
アルコが寝言を言っている、僕たちは屋敷に帰った。
いつの間にか僕の首から下げている護符の一部が金色に小さく光っていたのに、その時の僕は気づいていなかった。




