第18章 凶隕石オウト
時を遡って、魔将軍エヴァン率いるゴーレムを倒しに行く道中の会話。
僕とアルコはショウゴさんと並んで馬に乗って第二の都市に向かっている。
「ねえ、ショウゴさん、本当に凶隕石オウトって来るのかなぁ? 二百年後なんでしょ」
「わからないけど、僕の家の近くに天文学者さんがいるから聞いてみるよ、王様はあの人たちが嫌いみたいだけど。ちょうど僕の部下の兵士が街に帰ることになったから手紙を書いて渡してもらう」
◇
時間を元に戻して、僕とアルコは第二の都市攻防戦で負傷したショウゴさんのお見舞いに来ていた。
「アランが頑張ってくれたからパジャマが完成したよ。ローゼはまだ来ないんだ」
「す、すいません……お役に立てなくて」
せっかくお見舞いに来てるのに、気を使わせてるアルコを僕は慌てて僕の後へ押しやった。
「ショウゴさんが無事で良かったです」
「そうだ、以前話していた天文学者さんの住所を渡していくよ。君たちのことは話してあるから訪ねてみたら」
僕たちはショウゴさんから貰った紙に書かれた住所を頼りに街の外れのアパートを訪れた。ノックをすると「どうぞ、勝手に入って」と声がしたので中に入った。廊下を歩くと部屋があり扉は開いていた、床に紙が散らばっている。
「初めまして、アランとアルコと申します」
「おお、君たちの話は聞いている」
天文学者は机に座って後ろを向いたまま返事をした。何か紙にペンで忙しそうに書き込んでいる。アルコは部屋を見渡している、僕は天文学者さんに近づき手元の紙を覗き込むと、何やら数式のようなものが沢山書かれていた。突然、天文学者さんが書く手を止めると、神妙な顔で振り向いた。
「君たちの話が全て正しいとして、千二百年で一周する巨大隕石の軌道を計算してみたのじゃ、すると今の季節で北斗七星の方向のある場所に隕石らしきものが確かにあった。そしてその隕石は二百年後にこの星に衝突する。ワシは計算が間違っていないか、かれこれ十回以上もやり直したのだが間違っていなかった。隕石の大きさは直径三十キロメートル、この星の生き物全てが滅びるのに十分な大きさじゃ、恐ろしいことだ……」
◇
帰り道。
天文学者さんの家を出て、僕たちは家に向かって歩いていると、ゴン!と僕の背中に痛みが走った。石が僕の背中に当たって地面に落ちた、振り返ると子供が立っていた。
「あ、隣のお兄ちゃんに当たっちゃった。お前アルコだろ! パパが戦っていたとき、何にもしないで見てただけ。パパが言ってたよ、人間の味方じゃないって! パパはあの戦いで左手を怪我して動かなくなっちゃったんだ。お前は強いのに戦わなかった、お前のせいだ!」
子供がまた石を拾ってアルコに向かって投げつけた。石はアルコの遥か上を飛んで行った、子供は泣いていた。
僕はアルコの前に立って、
「そんなことないよ、アルコは人間の味方だよ」と言ったが、
「嘘だ! アルコは魔族と結婚したって街の人が言ってたもん。人間の敵だよ!」
アルコの目が赤く輝きだしたので、僕はアルコを抱きしめた。子供は泣きながら走り去って行った。よく見ると、道行く人たちの目線が冷たい気がした。急いで僕はアルコの手を引いてその場を離れ家へ向かった。
その一部始終を物陰から杉風が見ていた。
◇
やっと家に着いた僕の気は晴れなかった、アルコが街の人たちから嫌われ始めているのに気が付いたからだ。幸い、アルコは気にしていないようだが、少し気になったのは、家に着くなりアルコが「ここは人間がいなくて良いね」と呟いたことだ。
僕もここの静かな暮らしが気にいっている。いつまでも楽しく遊んで暮らせれば良いのだが。アルコはローゼが来るのを楽しみに待っている、でも王様ゲームをまたやりたいと言うので「それはなし」と言ったら酷く落ち込んでしまった。
もしローゼと一緒に住むようになったら一体どんな生活が待っているのだろうか?




